家具製造販売のニトリホールディングス<9843>(以下、ニトリHD)の株価の下落が止まらない。コロナ禍でも業績は絶好調だが2021年秋ごろからの株価は一貫して値下がりを続けており直近1年間での下落率は3割を超えている。
直近の高値から半値近くに
2022年5月18日のニトリHDの終値は、1万2,925円だった。これは、1年前の同日の終値1万9,285円と比べると約33%の大幅下落。いわゆる「コロナショック」があった2020年3月13日の最安値1万2,725円に迫る勢いで下げている。コロナ禍では「ステイホーム」が奨励されたり在宅勤務を含む「リモートワーク」が増えたりしたことで手ごろな価格の家具を扱うニトリHDへ注目が集まった。
コロナショック後の株価は、力強い上昇を見せ半年後の2020年8月4日の場中に2万3,455円まで値上がりしている。ところが2020年秋ごろからは、少しずつ値を下げ始めた。2021年秋ごろにいったん上昇したものの基本的には下落トレンドが続いてコロナショック時の安値に戻ってきているのが現状だ。
35期連続の増収増益
ニトリHDは、株価こそ下落トレンドとなっているものの業績は「絶好調」だ。2022年3月末に発表された2022年2月期の連結決算は、売上高が前期比約13.2%増の約8,115億円、経常利益が約2.5%増の約1,418億円、純利益が約967億円。経常利益ベースでは、35期連続の増収増益となっている。2022年2月期から10期前の2012年3月期までの業績の推移を示す。
決算期 | 売上高 | 経常利益 |
---|---|---|
2022年2月期 | 約8,115億円 | 約1,418億円 |
2021年2月期 | 約7,169億円 | 約1,384億円 |
2020年2月期 | 約6,422億円 | 約1,095億円 |
2019年2月期 | 約6,081億円 | 約1,030億円 |
2018年2月期 | 約5,720億円 | 約948億円 |
2017年2月期 | 約5,129億円 | 約875億円 |
2016年2月期 | 約4,581億円 | 約750億円 |
2015年2月期 | 約4,172億円 | 約679億円 |
2014年2月期 | 約3,876億円 | 約634億円 |
2013年2月期 | 約3,487億円 | 約621億円 |
2012年2月期 | 約3,310億円 | 約591億円 |
2022年2月期の売上高、経常利益は、どちらも10期前と比べて2倍以上に伸びた。連続増収増益企業だけあってきれいな右肩上がりの業績だ。配当は、2021年2月期が年123円なのに対し、2022年2月期が140円で増配している。2023年2月期も147円と増配予定だ。グループ店舗数は、国内外に801店(2022年2月20日時点)あり、2021年3月1日からの1年間で79店増えた。
2023年3月期は、さらに出店ペースを加速させ141店増の942店まで拡大する計画だ。こうして見ると過去の実績、足元の業績、成長性のいずれをとっても遜色ないように見えるがなぜ株価はさえないのだろうか。
株式市場の地合いが悪化
株価低迷の背景の一つは、日本の株式市場の地合いが悪くなった(=下落トレンド気味になった)ことが挙げられる。国内の代表的な企業が組み入れられた日経平均株価(225種)は、2022年5月24日終値時点における直近1年間で約-5.7%、年初来で約-8.8%。TOPIX(東証株価指数)は、直近1年間での下落率が約-1.8%にとどまっている。
しかし年初来では約-7.5%でやはり日経平均と同じく下落基調だ。ニトリHDは、売上高8,000億円を超える大企業となるため、株式市場全体の状況に連動して売り買いされる可能性も大きいだろう。
「ニトリ事業」の増益率は小さかった
2022年2月期の決算説明資料を読み解いてみると円安がニトリHDの業績をマイナス方向に引っ張る現状が見えてくる。2022年2月期のニトリ事業は、物流の効率化が経常利益ベースで約90億円、人件費の抑制が約50億円のプラス効果があった。一方でマイナス効果としては、仕入れ時の為替影響が約138億円分あり、物流や人件費の効率化分を吹き飛ばした。
その結果、2022年2月期のニトリ事業の経常利益は約1,385億円で2021年2月期の約1,384億円から1億円しか増えていない。少なくとも利益を見る限りでは、本業のニトリ事業自体の伸びが鈍化したことが分かる。それでも連結決算で約2.5%の経常増益を確保できたのは、2021年1月に買収が完了したホームセンター「島忠」に関する事業が貢献したところが大きい。
なぜなら島忠事業は、2022年2月期に経常利益ベースで約32億円を稼ぎその分を丸々上乗せしたからだ。
海外調達比率が90%超、円安がデメリットに
2023年3月期以降のニトリHDの業績を占ううえで見逃せないのが円安の進行だ。ニトリHDは、インドネシアやベトナムに工場を所有しており店舗で扱う品目数のうち90%以上が海外からの調達となっている。今後円安が進行していくと調達コストが上がるため、大きな減益リスクとなりかねない。米ドルに対する円は、2022年3月ごろから一段と下落が進み始めた。
つまりニトリHDでは、2023年3月期以降さらに円安の影響が色濃くなる可能性が高まっているのだ。前述したように2022年2月期は、島忠が新たに加わって利益を押し上げた。しかし2023年3月期は、利益を押し上げる特別な事情もなくなってしまう。株価は、将来の企業状況を織り込んで推移していく。
近年の外部環境を見る限りニトリHDの業績の鈍化が見込まれ株価が低調になる流れには、理由があるといえるだろう。
文・MONEY TIMES編集部
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