上司や取引先への気遣い、パワハラ、モラハラなど日々の仕事でストレスを抱えている人は多い。時には、視点を変えて大自然や命と向き合う職業を想像してみるのもよいだろう。本稿では、私たちの食卓を支える農家と漁師の年収や働き方、ビジネスモデルに迫る。

農家の収入は?全国の平均年収との比較も

農業を営む場合の収入や支出は、どのくらいの金額なのか。統計によると扱う農業の種類や経営形態によって差がある傾向だ。

農家の年収は?形態によって差も

農林水産省の2020年の統計によると農業を営む個人・法人の経営体の平均農業所得は約123万円だった。(1万円以下切り捨て、以下同様)この統計は、農業を主業としている場合と副業としている場合の両方を平均化した値だ。農業所得を主とする「主業経営体」の平均収支は、粗利益が約1,993万円、経営費が約1,578万円で農業所得は約415万円だった。

農業を主業とするか否かで大きな差があることが分かる。国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると2020年の民間企業における年間給与額は平均約433万円だった。農業を主業とした場合の平均所得は、会社員の平均年収をやや下回る額といえる。

どんな農家が儲かっている?

一口に農家といっても育てるものは多岐にわたり、類型によって大きく収入も異なる。農林水産省の統計よると所得のトップ3は、牛や豚などを育てる以下のような畜産農家が占める。

順位 営農類型 農業所得
1位 養豚 約2,500万円
2位 採卵養鶏 約1,180万円
3位 酪農(牛乳の生産) 約774万円

野菜や果物、米などを育てる「耕種」で最も所得が高かったのは、施設野菜(ハウス野菜)で約386万円だ。ビニールハウスなどを用いる施設野菜は、天候や害虫の影響を受けにくく年間通して安定的に栽培できる。

農家のビジネスモデルは?

農家というと作物や家畜を「育てる」ことがすべてのようなイメージを抱くかもしれない。しかし実際は、それだけではなく加工品の製造や販売、マーケティングや経営戦略など幅広い分野を扱うビジネスである。実際に農業で働くことを「就農」といい次のようなパターンがある。

・新たに農家の経営を始める
・農家に雇用される
・家族や親戚の農家を継ぐ

新たに経営を始める場合や農家を継ぐ場合は、起業し経営者になるということだ。毎月一定の給与を得られるわけではなくある程度の初期投資や農業の勉強も必要になる。しかし「何をどのくらいの規模で作るか」「どのように販売していくのか」などを自身で決定し事業を行えることは魅力的だ。

「6次産業化」も

近年は、栽培した農作物を使った料理を提供する飲食店を経営したりスイーツのブランドを立ち上げたりするなど「農業の6次産業化」に取り組む事例も多い。6次産業化とは、農林漁業者(1次産業)が食品加工(2次産業)や流通・販売(3次産業)も行い収入を上げることを指す。

漁師の収入や働き方は?

漁師の年収(漁労所得)や働き方は、漁のスタイルによって大幅に異なる傾向だ。

漁業の年収は?

農林水産省の2020年のデータによると個人経営での平均漁労所得は、漁船漁業の場合で約234万円、小型定置網漁業は約411万円だった。漁船漁業では、漁をする場所によって沿岸・沖合・遠洋漁業と種類があり所得や働き方に差がある。全体で見ると2020年の民間企業の平均年収433万円よりも低い。しかし遠洋漁業では、特に高所得の傾向があり年収800万円を超える求人募集も見られる。

沿岸・沖合・遠洋漁業のそれぞれの特徴

日本の漁師の8割が沿岸漁業者だ。そのため操業期間は基本的に日帰りができる。イカやブリの釣り漁、カレイやヒラメの底ひき網漁などがこれにあたる。未経験でも即戦力になりやすいタイプの漁もあり就業のチャンスも多いという。沖合漁場は、日本の海域内での漁が中心で日帰りから1ヵ月程度の操業が主だ。近海マグロは、え縄漁や近海カツオ一本釣り漁などがある。

例えば大中型まき網漁では、50人前後の乗組員で作業を分担しチームワークで漁を行う。新人漁師は、投網や囲い込みの手伝いなどをして仕事を覚えていく。遠洋漁業は「遠洋カツオ一本釣り漁」や、遠洋マグロは「え縄漁」など国外の海に出て漁をするため操業期間は50日~1年以上に及ぶこともある。生活のほとんどを船上で過ごすイメージだ。国内では、若手のなり手不足が懸念されている。

漁師のキャリアとは?

一般的に当初は、先輩漁師の元で漁の技術を学ぶ。その後は沿岸漁業の場合、漁業会社の従業員として働いたり将来的に独立して生計を立てたりするといったキャリアパスだ。漁業の種類に応じて船舶免許や航海士などの資格を取ったり漁協や船での役割を経験したりとスキルを磨くことも求められる。近年では、漁業でも6次産業化が促進されているのが特徴だ。

漁だけではなく商品開発や販路拡大に携わっていくことも考えられる。

大いなる自然に目を向ける価値はある

コロナ禍では、都市部から地方への移住に関心を持つ人も増えている。そのためなかには「農業や漁業へ転職する」という選択肢もあるかもしれない。自然や命と向き合う仕事は、簡単なことばかりではないが人々の食卓を彩り生活を支えるかけがえのない仕事だ。さらに6次産業化など収益化のために企画や経営戦略に力を入れ新しい可能性を見出せる魅力もある。

パソコンの画面や上司の顔色を凝視するだけではなく大いなる自然に目を向けてみてはいかがだろうか。

文・MONEY TIMES編集部

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