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メールの添付ファイルに潜むワナ
「サーバーが国内にあること」も大事

メールの添付ファイルに潜むワナ

少年B:
そもそもの話をしちゃうんですが、ファイルの送り方にはどんな方法があるんですか? ファイル転送サービスって本当に使わなきゃダメ? Googleドライブとかでよくないですか?

稲嶺:
ファイルを送る手段は、大きく分けると4つの方法があります。

約80%の取引先が「フリーランスとのファイル共有」に不安を感じている!? 信頼してもらう方法を専門家に聞いた
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

稲嶺:
ひとつめはメールに直接添付する方式です。これは未だに使われていて、ファイルのやりとりの約90%がこの方法によって行われています。

少年B:
そんなに多いんだ!

稲嶺:
ただ、これは誤送信のリスクがあります。近年ではとくに、メールアドレス自動入力など便利な機能が発達しているのですが、これが裏目に出てしまうこともあります。

少年B:
あー、よく似た別のアドレスに送っちゃうこともありますよね。

稲嶺:
誤送信のリスクは昔から言われていて、それを防ぐために「PPAP」という方法が使われていました。ご存知ですか?

少年B:
……ピコ太郎ですか? なつかしいですね。

約80%の取引先が「フリーランスとのファイル共有」に不安を感じている!? 信頼してもらう方法を専門家に聞いた
(画像=▲アイ ハブ ア……ッンー! 違います、『Workship MAGAZINE』より引用)

稲嶺:
暗号化されたZIPファイルを送って、その後別のメールでパスワードを送る手法です。

これは、「Password付きZIPファイルを送ります/Passwordを送ります/Angoka(暗号化)/Protocol(プロトコル)」の略なのですが、こう名付けられたのはピコ太郎さんのPPAPが話題になったからだそうなのです。なので、まったくの無関係というわけではないんですよね。

約80%の取引先が「フリーランスとのファイル共有」に不安を感じている!? 信頼してもらう方法を専門家に聞いた
(画像=▲ボケたつもりが元ネタだった……!、『Workship MAGAZINE』より引用)

少年B:
暗号化されたZIPファイルを送るの、そういえばありますね。あれ、二度手間だしめんどくさいし、何がいいんだと思ってたんですが……。しかも、大手の会社さんほどそういう方法で送ってくる気がします。

稲嶺:
ですが、さまざまな問題があったため、2020年以降は内閣府をはじめ廃止の流れになっています。

少年B:
おなじ連絡先にメールを送るんだから、1通目を誤送信したら2通目も誤送信しちゃいますよねぇ……。ぶっちゃけ、お互いに手間が増えるだけで、いいことないんじゃないかとは思ってました。

稲嶺:
それだけじゃなくて、暗号化されたZIPファイルを送られると、受け取り手がウイルススキャンをできないケースもあるんですよ。それを悪用して、ウイルスを送りつける手法もありました。

約80%の取引先が「フリーランスとのファイル共有」に不安を感じている!? 信頼してもらう方法を専門家に聞いた
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

少年B:
ヒエッ。安全どころかよっぽど危険じゃないですか。何でそんな手法が使われていたんですか?

稲嶺:
昔はPPAPを使っていると、プライバシーマーク制度の認証が通りやすかった、なんて話もあったんですよ。ただ、もともとPPAPは日本独自の文化なんですよね……。海外ではDropboxなどのファイル共有サービスが主流なので。

少年B:
なるほど……!

「サーバーが国内にあること」も大事

少年B:
他にはどんなファイル転送方法がありますか?

稲嶺:
次点で無料のファイル転送サービスですね。その次に続くのが、GoogleドライブやDropboxなどのクラウドストレージ、SlackやChatworkなどのビジネスチャットツールです。

少年B:
これらの方法だとなにがまずいんですか?

約80%の取引先が「フリーランスとのファイル共有」に不安を感じている!? 信頼してもらう方法を専門家に聞いた
(画像=▲いや、まずいということはないんです、『Workship MAGAZINE』より引用)

稲嶺:
ファイル転送サービスについては先ほど説明しましたよね。これは「原本を共有したくない」という人におすすめの方法です。特に、共同作業するためではなく、相手に提出するようなファイルの送信に最適で、フリーランスの場合、デザインやプログラムなどの納品物を送るのに合っていると思います。

少年B:
原本はそのまま取っておきたい、ってこともありますもんね。

稲嶺:
クラウドストレージはセキュリティのしっかりしているものも多いですが、そもそもクラウドストレージはファイルの原本を共有して、共同作業をするための製品なので、相手がそのファイルの内容を意図せず消してしまったら、原本が自分の知らないうちに変わっていたという可能性があるわけです。また、公開設定を間違えて一般公開してしまうとのも大変なことになりますね。

もう一つ付け加えると、オンライン環境で作業するものなので、大容量ファイルの編集には不向きです。

少年B:
なるほど、そういうリスクもあるのか……! ビジネス用チャットツールはどうですか?

稲嶺:
ビジネス用チャットツールもとても便利なものですが、前提としてお互いが導入していないと使えませんよね。ものによっては「最低◯名から」というプランがあるなど、フリーランスがひとりで気軽に使えない場合も……。あと、そもそもファイルを共有するためのツールではありません。

少年B:
確かに……。もともとそれでやり取りをしているから「送りますね」って連絡をするわけで、そうじゃない人にわざわざ「チャットツールで送ります!」とは言わないもんなぁ。

約80%の取引先が「フリーランスとのファイル共有」に不安を感じている!? 信頼してもらう方法を専門家に聞いた
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

稲嶺:
別に、セキュリティさえしっかりしていれば、どんな手法でも大丈夫ではあるんです。結局は使いやすさとか、「原本をどうしたいか」という問題ですよね。

あと、これはすべてのサービスに言えることなんですが、もうひとつ大事なことは「サーバーが日本国内にあるか」です。

少年B:
……? 別にサーバーなんてどこにあったって同じじゃないですか? 国外にあったらスペックが低下する、なんてことはありませんよね。

稲嶺:
いえ、じつはサーバーがどこの国にあるかによって、かかってくる法律が変わってくるんですよ。万一犯罪や事件に巻き込まれた時、どうやって裁くかというと、サーバーの置いてある国の法律で裁くことになっているんです。

約80%の取引先が「フリーランスとのファイル共有」に不安を感じている!? 信頼してもらう方法を専門家に聞いた
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

少年B:
アメリカにサーバーが置いてあったら、アメリカの法律で裁かれる……ってコト!?

稲嶺:
そういうことです。日本向けのサービスで、日本人しか使っていないサーバーでも、外国にサーバーがあったらその国の言うことを聞かなくてはいけない。

仮に、「国がデータを検閲します」という法律があったら、そのサーバーにあるすべてのデータはその国の政府に見られることになってしまいますね。実はそのような法律はいまも存在しますし、サーバーの押収も実際にあった話なのです。

少年B:
うっ、それは怖いかも……。

稲嶺:
なので、昨今の国際情勢などを考えると、「サーバーが国内にあるか」という点も考えたほうがいいのかな、とは思います。