幼くなるほど出生数が減少
最も大きな危機は、表1のように幼くなるほど出生数が減少してきた点にある。12~14歳が323万人、9~11歳が313万人、6~8歳が301万人、3~5歳が278万人、0~2歳が250万人というデータが示すように、日本社会の世代継続性が途切れる方向に作用している傾向を見て、政治家やマスコミそれに国民全体は何を感じるか。
しかも、連載第4回(5月15日)で紹介した世界総人口数11位の日本の年少人口率11.7%は、比較対象とされる人口4000万人以上の世界の35カ国のうち最下位なのである。調査年度が若干異なるが、韓国(11.9% 21年7月調査)、イタリア(12.9% 21年1月)、ドイツ(13.8% 20年12月)よりも低い実態にあり、日独伊の3国の人口動態は近似している注2)。
こども家庭庁への期待
その意味で、2023年4月に誕生する「こども家庭庁」には未曽有の年少人口数と比率への率先した対応を期待する。岸田首相の発言、「常に子どもの最善の利益を第一に考え、子どもに関する政策が我が国・社会の真ん中に据えられる社会を実現させる」組織作りをお願いしたい。社会学を通して30年間少子化研究を行ってきた経験から、「こども家庭庁」への要望は以下の5点になる。
(1)少子化対策ではなく、「次世代育成」を基本にする注3)。
(2)子どものいる家庭はもとより、いない家庭も「次世代育成」に関与してもらう。
(3)家庭こそが子どもを社会化して、社会的存在に育てるための知識、規範、価値を教える機能をもつから、次世代の「社会化」政策を中心にする。
(4)主政策「ワーク・ライフ・バランス」に地域社会を加えて、「ワーク・ライフ・コミュニティ・バランス」として再度体系化する。
(5)経済的支援では、該当者を絞りながら大学生と大学院生を念頭にした高等教育費支援を重点化する。
「次世代」や「次次世代」が夢を持って暮せるように、「こども家庭庁」の新規業務は(1)を可能なかぎり具体化することに尽きる。そのためには、子育て家庭だけの「次世代育成」「次次世代育成」に加えて、子育てしていない家庭もどのようにしてどこまで関与できるかの議論が不可欠になる。なぜなら、「次世代育成」は社会全員が関連する未来社会の設計そのものだからである。その手段として(4)(5)を位置づけたい。