ロシアのウクライナ侵攻は甚大な経済的損失と人的被害を同国にもたらし、世界はプーチン大統領の横暴に対し、批判を強めている。そんな中ではあるが、早くも「終戦後」を見据え、「ウクライナに未曾有の好景気がやってくる」と予想する投資家もいる。どういうことか。

戦争がウクライナ経済に甚大なダメージ

ロシアのウクライナ侵攻は2022年2月24日に始まった。それからもうすぐ3カ月が経とうとしているが、各国が続々とロシアへの経済制裁を発表し、アメリカなどがウクライナの軍事支援を強化しているものの、未だ終戦の兆しは見えない状況だ。

ロシアの攻撃によって、ウクライナの各都市では壊滅的な被害が出ている。ビルや住宅などの建物、橋や空港などのインフラ設備がミサイル攻撃によって破壊され、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、5月2日の時点でウクライナの民間人の死者数は3,000人を超えたという。

ウクライナから隣国や日本などに逃れた難民の数は、5月12日時点で600万人を超えた。ウクライナの人口は約4,400万人。すでに約13%の人が同国から去ることを余儀無くされたことになる。

このような状況は当然ながら、ウクライナ経済に深刻な状況をもたらしている。世界銀行は2022年4月、ウクライナの今年の経済成長率について、マイナス45.1%になるという見通しを明らかにした。すでに事業停止に追い込まれたウクライナの民間企業は数多くある。

「ウクライナに投資妙味あり」なのか?

経済的にも人的にも壊滅的な被害を受けているウクライナ。今後の先行きも不透明だが、冒頭にも触れたように、ウクライナへの投資に注目する投資家が徐々に増え始めている。TwitterなどのSNSでは「ウクライナに投資妙味あり」といった趣旨のツイートを目にする。

なぜいま投資家たちはウクライナへの投資に注目し始めているのか。その理由の1つとしては、戦中からの反動もあり、終戦そして復興によってウクライナがかつてない好景気を迎える、と予測される点がある。

ビルや住宅が破壊されたということは、新たなビルや住宅が終戦後に建設される、ということを意味する。アメリカやEU(欧州連合)などからの資金援助によって、橋や空港などのインフラの再設備も進めば、経済は活発さをどんどん取り戻していく。

そして難民が徐々にウクライナに戻れば、内需も回復していく。「こうした戦後に始まる好景気の初期の段階でウクライナに投資をしておけば、大きなリターンを得られるかもしれない……」。こうした観測が投資家の間でささやかれるようになってきているわけだ。

日本でもかつて終戦を迎えたあと、戦後の復興が日本に好景気をもたらすきっかけとなった。この点に言及する日本人投資家も少なくない。

ウクライナへの直接的な投資は極めて困難

では仮に、いまロシアとウクライナの戦争が終わりを迎えたとすると、ウクライナへの投資手段としてはどのような方法が考えられるのだろうか。

結論から言えば、仮にウクライナに好景気が訪れたとしても、日本人の個人投資家の多くはウクライナに投資をしようとしてもできないのが現状だろう。好景気の恩恵を受けるような対象にお金を投じる手段がほとんどないからだ。

ウクライナで事業を展開する企業の株式に投資することは、個人投資家レベルでは極めて困難だ。ウクライナの不動産に投資することも極めて難しい。そのため、多くの日本人投資家はウクライナに好景気が訪れても、指をくわえてその様子を傍観するしかない。

ただし、ロシアのウクライナの戦争終結後、リターンを狙う方法が全くないわけではない。たとえば、ロシアのウクライナ侵攻の余波を受けて経済が混乱している欧州に狙いを定め、ヨーロッパの上場企業や欧州株を対象とした投資信託に資金を投じるというアプローチもある。

欧州に投資するというアプローチも

欧州の中でも、ドイツの「DAX指数」は年初来で12.44%安、フランスの主要な株価指数「CAC 40」は年初来で11.84%安となっており、ドイツやフランスには株価を大きく下落させた企業が含まれていることを意味する。

こうした企業に対して投資している投資信託は、日本の証券会社でも購入することができる。たとえば、日興アセットマネジメントが運用する「インデックスファンドDAX」や、カレラアセットマネジメントが運用する「フランス株式ファンド」などが挙げられる。

基本的に株価は思惑や予測が出た時点で動くため、終戦を待っていては買い時を逃すかもしれないが、ウクライナの企業や不動産に直接的に投資ができない以上、こうした投資信託に狙いを定めようとする投資家は多く出てくるはずだ。

多くの人が亡くなっているウクライナに関して、いまの段階で投資話をすることを不謹慎だと考える人も多いが、実際にウクライナや欧州への投資を検討し始めている投資家もいるのが現状だ。果てして今後、世界の投資マネーはウクライナや欧州へ向かうのだろうか。

文・MONEY TIMES編集部

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