「業務スーパー」を展開する神戸物産の株価が大きく下落している。2022年5月17日の終値は2,925円で、年初来で32.37%下がった。コロナ禍で「巣ごもり特需」が起きて株価が上昇してきたが、経済活動の平常化に伴い、同社に投資する魅力が急低下したのか。

2021年9月に4,605円の高値をつけた

神戸物産は「業務スーパー」を全国で964店(2022年3月末時点)展開し、外食・中食事業のほか、太陽光発電事業、木質バイオマス発電事業を手掛ける。

コロナ禍に入ってからの神戸物産株の値動きを見てみると、細かな上下を繰り返しながらも長期的な上昇基調を維持し、直近の高値としては2021年9月10日に4,605円を付けている。

ところが、秋から年末にかけては上昇ペースが鈍り、年明けからは下落トレンドに転換した。終値は年明け最初の売買日である1月4日が4,325円で、7日には4,000円を割り込んだ。そして5月6日には3,000円を下回っている。

日経平均株価は約9%下落にとどまる

2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大による「コロナショック」で暴落を経験した世界の株式市場は、その後、経済活動の正常化やワクチンの開発などを追い風に、上昇を続けてきた。しかし、2022年に入ってからは全体に一服感が出ている。原油高や物価の高騰、中国でのコロナ再拡大などを背景に、景気後退・経済成長の鈍化への懸念が広がっているからだ。

2022年の日本市場も、世界と同様の動きを示している。国内の主だった上場企業の株価を総合する指数「日経平均株価(225種)」は、2022年5月17日時点で年初来9.41%下落した。

指数が1割近く下がるのは十分目立った出来事だが、それと比べても、神戸物産の年初来の下落率は際立って大きい。

同じ小売業でも、カジュアル衣料品チェーン「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは年初来で9%台の下落にとどまり、日経平均と同じような動向だ。コロナ禍で「おうち時間」が増えたことに合わせ、部屋着のラインナップを拡充したことなどが注目された。

一方、ドラッグストア各社の株価は神戸物産と似通っている。例えば、業界最大手のウエルシアホールディングス、業界3位のコスモス薬品は年初来で30%前後の下落となっている。

最近のドラッグストアは医薬品よりも食品や日用品の売上比率が高く、実態はスーパーに近い面がある。こうして見ると、神戸物産だけが取り立てて値を下げているわけではなく、食品に関連した業界全体で「コロナ特需は終了した」との見方が広がるのに伴って下落トレンドが強まり、その流れに巻き込まれて大きく値下がりしているとみることもできそうだ。

株価下落の中、業績は?

ここで「巻き込まれて」と言うのは、ドラッグストア各社と神戸物産が必ずしも同じ境遇にいるわけではないからである。

記憶に新しいところで、コロナ禍初期のドラッグストアでは、マスクや消毒用アルコールの購入のため、店頭に長蛇の列ができていた。衛生用品の売り上げは急増し、食品のまとめ買い需要の高まりも相まって業績は伸びたが、翌年以降はその反動減が目立ち、業績は悪化している。

一方、神戸物産は足元で業績を伸ばし続けている。2021年10月期の連結売上高は前期比6.2%増の3,620億円、連結純利益は同30.2%増の195億円で、営業利益、経常利益も含め、売上、利益ともに過去最高となった。

大きく業績を伸ばした背景には、コロナ禍での「まとめ買い」「巣ごもり」に関する需要の高まりだけでなく、積極的な店舗投資が挙げられる。2021年10月期は1年間で77店を新規出店した一方、6店を退店し、差し引き71店分の売上高、利益が上積みされた。

今期(2022年10月期)は店舗数を差し引き60店増やす計画で、売上高は5.0%増の3,800億円、純利益は1.1%増の198億円になると予想する。売り上げ、利益とも伸び率は前期から鈍ってしまうものの、過去最高の業績を着実に更新していく見通しである。

PERは30倍前後で推移、まだ割安とは言えない?

とはいえ、長らく値上がりを続けてきた神戸物産だけに、株価が下落した今も、割安になっているかどうかという観点では判断が難しいところがある。

株価が割安か割高かを判断する指標の1つに「PER(株価収益率)」という指標がある。「株価」を「1株当たりの(予想)純利益」で割り、利益額に対する株価の水準を示すもので、数字が大きいほど割高と判断できる。一般的には15倍あたりが高低を見極めるための境目とされ、神戸物産は現在、30倍前後で推移している。

このPERを見る限りでは、神戸物産の株価は「まだ高い」ということになる。ただ、ひと頃から見れば、株価が下がる一方で業績は伸び、割安感が増しているのは間違いない。このまま下がり続けるのか、どこかで反転するのか。今後の値動きが注目される。

文・MONEY TIMES 編集部

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