日本を代表する格安航空会社(LCC)といえばピーチ・アビエーション(Peach・Aviation株式会社)だ。同社は、2021年3月期の決算で295億円もの赤字を計上しているものの路線拡大を積極的に進めている。経営状況が厳しい中での攻めの姿勢。「無謀」といわれそうだが……実態はどうなっているのだろうか。

赤字が膨らむピーチ・アビエーション

ピーチ・アビエーションは、ANAホールディングスの子会社だ。ピーチ・アビエーションの2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の決算を見ると売上高に相当する営業収入は約219億円で最終損益は約295億円の赤字となっている。2020年3月期(2019年4月~2020年3月)の売上高は約710億円、最終損益は約94億円の赤字だった。

つまり2020年3月期~2021年3月期にかけて売上高は約491億円減り、赤字額は約201億円膨らんだことになる。2021年3月期に売上高が減り赤字額が増加したのは、新型コロナウイルスの感染拡大が旅客減少につながったことが要因だ。これは、ピーチ・アビエーションにかぎったことではなくほかの航空会社も経営に悪影響が出ている。

なぜピーチは強気の姿勢を貫いているのか

一般的にこうした状況において企業は「守り」に入る。なるべくコストを減らし運転資金の確保に努めながらV字回復の機をうかがう。しかしコロナ禍においても新たな国内線の就航を次々と発表しているピーチ・アビエーションの戦略は少し異なるようだ。ピーチ・アビエーションは、プレスリリースなどで明確な理由を示していない。

しかし報道機関(PRESIDENT Online)が行った担当者に対するインタビューでその理由の一部が語られている。1つ目の理由は「コロナ禍で国際線が運航できなくなり所有している航空機を国内線に振り向けたこと」という。2つ目の理由として「地方の重要性が増す中で地方と大都市を結びつける重要性が高まったこと」を挙げている。

決して無謀なチャレンジではない

たしかにピーチ・アビエーションの担当者が語るこうした理由は、理に適っている。特に2つ目の理由は、テレワークの有用性の実証に伴い今後は地方で働くスタイルが増えることを考慮するとぴったりの施策だといえる。つまり冒頭の問いに戻ればピーチ・アビエーションは、決して「無謀」なチャレンジをしているわけではない。

現時点で実行できることや将来につながることにせっせと取り組んでいるだけだ。今後を見据えて先回りして動くピーチ・アビエーション。今の取り組みが将来の業績に実際に良い影響を与えることになるのか注目したい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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