在来メディアの言動は、恥も外聞もない延命策
ところで、SNS系メディアに日々シェアを奪われているテレビ、新聞、雑誌といった在来メディアも、まるで新興ネットメディアそっくりにゲイツ財団=世界経済フォーラム=WHO公認情報を横流しするだけなのは、いったいなぜでしょうか。
ふつうであれば、どんどん劣勢に立たされるだけの情勢を挽回するために、あえて新興メディアとは正反対の立場を取っても良さそうなものです。
でも現実には、日本で言えば夕刊フジや日刊ゲンダイに当たるタブロイド新聞くらいしか、そうした気骨を見せた媒体はありませんでした。
なぜかと言えば、一流紙とか全国ネットの大手放送網とか呼ばれている媒体ほど、経営悪化が急激で、今や業界全体としても大物政治家にははしたガネとさげすまれる程度の献金しかできないからです。
こちらが新聞・雑誌に出版業界までふくめた中分類でのロビイング支出額です。業界全体としてほんとうに少額のレストラン・バー業界とほぼ同水準です。ただ、あまり歓迎できない変化ながら、レストラン・バー業界のほうはチェーン経営の大企業が増えるにつれて伸びています。それに対して、新聞・雑誌・出版業界はハイテク・バブルがはじけた頃まではなんとか1500万ドル程度を拠出できていました。直近のピークは2020年でしたが、2002年の3分の2にとどまっています。新聞業界の凋落は昔から続いていたことですが、テレビ業界、とくに地上波全国放送網や有料ケーブル配信各社の没落は急激でした。
こちらのピークは2014年でした。1970年代以降、ありとあらゆるメディアの王者として君臨していたこと、支出企業・団体数が35と小分類の中でも際だって少ない寡占化した業界であることを考えれば、ピークの3200万ドル自体、意外に少ない金額です。これだけ利権社会化が爛熟したアメリカでも、自分たちのようなオピニオンリーダーなら、かたちばかりの少額ワイロしか出さなくても、大きな影響力をふるいつづけることができると思っていたのでしょうか。新聞・テレビのロビイングは、他産業のようにもっと儲けるために法律規則を自分たちに有利に変えてくれという悪いなりに積極的な支出ではなく、本来であれば潰れてもおかしくない経営状態でもなんとか生き延びさせてくれという支出です。これまで延々とバカにしつづけてきた共和党保守派に今さら取り入っても相手にしてくれませんから、昔は自分たちが擁護者だと思い上がっていた民主党リベラル派を庇護者としてすがりついていくしか、生き延びる道はありません。
だからこそ、民主党リベラル派の主張ならどんなに奇矯な言説でも喜んで請け売りしているのです。
編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2022年4月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。
文・増田 悦佐/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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