ロックダウンは、まず恐怖宣伝

ここまでアメリカ社会における医療健康ロビーの強さを見てきた上で、あらためてコロナ騒動勃発当初に欧米諸国の大都市圏で乱発されたロックダウンの意味を検討してみましょう。

まず、今にして思えば、あれは完全な恐怖宣伝でした。伝染性もあまり高くなく、生活習慣病を抱えた高齢者以外にとっては致死率が極めて低い感染症を、まるで見知らぬ人とすれ違っただけでも感染するかのような大げさな恐怖をあおり立てることに成功しました。

そして、アメリカ国立衛生研究所や世界保健機関(WHO)の内部では、このあまり被害の大きくない感染症をワクチンの開発製造に携わる業者にとって最大限の収益を確保させる機会とすることは、当初からの前提でした。

どちらも、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団や世界経済フォーラムにとって、研究開発型の製薬会社に大きな収益をあげさせるとともに、ワクチン接種証明を日常的に携行させることによって、全面監視社会を実現させるための道具になっているからです。

そして、アメリカ中の政治家にとって、たっぷりワイロをばら撒いてくれる大スポンサーですから、まさにこういうときこそ忠勤を励んで日頃の恩顧に報いなければなりません。

どう考えても治験期間が短すぎて危険なワクチンを強引に実用に供するまでの間、なるべく恐怖を感じさせながら、ついでにコヴィッド-19感染者も増やしておこうという作戦です。

そして、世界中でなるべく多くの人たちにワクチン接種をさせるためにも、在来薬品がコヴィッド-19の予防や感染後の治療に効果があってはならなかったのです。

ましてや、イベルメクチンのように家畜の虫下しに使えるほど安くて大量に存在している薬が、すでに感染してしまった患者の重症化を防ぐために顕著な効能があるなどとは、もってのほかです。

たとえ、真実でもそんな新しいワクチンを完成させるための研究開発費がムダになるような話は「根も葉もないフェイクニュース」として、既存の大手メディアにも、新興のソーシャルメディアにも取り上げさせてはいけなかったわけです。

そして、家族の中にひとりでも自覚症状のない感染者がいれば、ふつうの日常生活を送るよりほぼ1日中自宅で家族と濃密接触をつづけているほうがコヴィッド-19を蔓延させる効果が大きいことも、医療当事者にはわかっていたはずです。

この推測が事実であることは、とくにワクチンが実用化されるまでの期間に厳格なロックダウンを実施した国ほど感染者、犠牲者の人数が多く、あまり厳格なロックダウンをしなかった国ほど感染者、犠牲者の人数が少ないことによって立証されていると思います。

表向きは部下の女性に対するセクシャルハラスメントを理由に辞任に追いこまれたアンドリュー・クオモ前ニューヨーク州知事の、ほんとうの罪状はセクハラではありませんでした。

非常に不潔で非衛生的なので免許を更新すべきではなかった高齢者介護施設の運営業者を、巨額献金をもらっているという理由で経営させ続けていたのですが、その施設にすでに感染が確認されていた高齢者を送りこんだまま、施設全体を封鎖してしまったのです。

はたして、その施設に収容されていた高齢者で発病した方々が全員亡くなるという悲惨な結果となりました。

「これはあまりにもひどい」ということで、クオモを辞任に追いこむ運動が盛り上がりました。

ただ、州知事、州上院議員レベルの政治家にとって介護施設からの献金は非常に実入りのよい「副業」なので、そのために適格ではない業者に運営を続けさせる程度のことはほとんどだれでもやっています。

だからこそ、同時にセクハラもひどかったクオモを辞任させるために、セクハラのほうを大義名分に選んだのです。

こうした実情をきちんと明らかにせず、コヴィッド-19という感染症自体の怖さにすり替えることで、人々をなんとかワクチンが実用化されるまで不自由を堪え忍んで待とうという心境に追いこんでいったわけです。

そして、強制的な需要移転

ロックダウンには、もうひとつ大きな目的がありました。身も蓋もない表現になりますが、あまりワイロを出してくれない業界からたっぷりワイロをばら撒いてくれる業界に、消費需要を移転させることです。

先進諸国ではどこでもそうですが、個人消費支出はどんどん製造業からサービス業へと移転しています。

ところが、寡占化の進んでいる製造業には巨額献金のできる大企業が多いのですが、あまり寡占化していないサービス業には、政治家たちにとって太っ腹にワイロをばら撒く大企業が少ないのです。

大都市圏ロックダウンの効果は覿面でした。それまで延々と下がっていた個人消費支出に占める製品の比重が上がり、ずっと堅調に伸びつづけていたサービスの比重が下がったのです。

現在でも、製品消費はコロナ前の傾向線を上回る水準で推移し、サービスはコロナ前からの傾向線より低い水準で推移しています。

ところで、インターネットを舞台に急速に成長しているソーシャルネットワーキングサービス(SNS)大手各社は、いっせいに「コロナは大疫病であり、ロックダウンやマスク着用には効果があり、ワクチンの効能を疑うのは悪質なデマ宣伝だ」と唱えました。

なぜだとお考えでしょうか。

見落とされがちですが、SNSはサービス業の中では例外的に寡占化の進んだ業界であり、しかもロックダウンで都市型サービスが壊滅状態になっても、むしろマイナスよりプラスのほうが大きな業態なのです。

医療健康ロビーの強大さを知らずして、コロナ騒動を語るなかれ
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

ご覧のとおり、業界全体としては、まだロビイング支出総額が1億ドルに達していない、中堅規模の業界ということになります。ただ、非常に小さな業界だった頃から、企業規模に比べればかなり大きな金額をロビイングに投じていた企業が多いのです。ふつうに考えれば当然独占禁止法違反となるような商慣行が横行している業界で、政治家に鼻薬を嗅がせなければ議会で喚問を受け吊し上げられることも多かったからでしょう。また、個別企業で見るとすでに非常に巨額の献金をしている会社が続々登場しています。

医療健康ロビーの強大さを知らずして、コロナ騒動を語るなかれ
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

この表で社名が赤になっているのは、アメリカを本拠とするSNSおよびeコマース(ネット通販)企業で、緑になっているのが中国を本拠とするSNSおよびeコマース企業です。この表で1~2位となっているメタとアマゾンは、個別企業だけではなく、中分類以下の全産業団体をふくめたランキングでも7位と9位という高い順位を占めています。こうした企業にとって、大都市圏のロックダウンは「現実に会うこと(オフ会)ができないので、せめてオンラインで連絡しあおう」ということで需要を拡大してくれます。とくに米中それぞれでeコマース首位企業となっているアマゾンとアリババにとっては、小売業界の中で実売店舗を営業している企業のシェアをさらに浸食する絶好のチャンスです。それに比べると、実売店舗側は、あまりにも無防備でした。

医療健康ロビーの強大さを知らずして、コロナ騒動を語るなかれ
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

アメリカ経済に占める地位は一貫して高かったのに、20世紀末まで業界全体としての献金額が1200万ドルにさえ達していませんでした。最大の理由は業界の規模は大きくても、業界に関する法律や規則を自社に有利に変えさせようとするほど圧倒的に大きな企業1~3社による寡占化が進まなかったからでしょう。2000年代半ば頃から急激に伸び始めますが、これは業界内でウォルマートが突出した首位になったからなのか、遅まきながらeコマース企業の成長を脅威と感じ始めたからなのか、理由はわかりません。ただ、業界全体のロビイング支出が、2021年になってもメタとアマゾン2社の合計額より約1000万ドル高いだけですから、政治家の好意を呼びこむにはあまりにも少なすぎます。これはアメリカのように高度利権社会化した国では弱点ですが、政治家の好意をカネで買って自社と自社が属する産業を有利にすること自体が、どう考えてもまっとうな経済活動とは言えないでしょう。

社会全体がまともになれば、マーケットシェアが極端に大きく、価格決定力まで握ってしまう寡占企業の存在する業界より、数多くの企業がドングリの背比べで発展する業界のほうが健全なことは間違いありません。

その小売業界よりもっときびしい立場に置かれているのが、レストラン・バー業界です。

この業界の場合、日本のようになんとかロックダウンはまぬかれた国でも、緊急事態とか、蔓延防止とか称して、営業時間の制限、客1グループ当たりの人数や店内滞在時間の制限、アルコール飲料の提供禁止といった措置でいじめられつづけてきました。

その第1の理由は、業界全体としてワイロに遣える金額の少なさです。

医療健康ロビーの強大さを知らずして、コロナ騒動を語るなかれ
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

小売業界のそのまた5分の1しか政治家に献金していないのですから、いじめられるのも無理はないと思います。それに加えて、じつはこの業界に対すること細かな営業制限は、すべて業界内で大手による寡占化を促し、個店経営で頑張っている中小零細独立店舗を根絶やしにしようという政策的意図が働いているのです。

医療健康ロビーの強大さを知らずして、コロナ騒動を語るなかれ
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

ご覧のように、最大の支出をしている全米レストラン協会と、第9位の独立レストラン連合以外は、みごとにファストフード店やファミリーレストランのチェーン展開をしている企業ばかりです。ファストフードやファミレスにとって、アルコール飲料の提供禁止や1グループの滞在時間制限は、まったくと言っていいほど苦痛になりません。何本も酒瓶を空けて長居がしたくなるような雰囲気の店は皆無といっても良く、食べ終えたらそそくさと帰るか、なんならドライブスルーで注文しておいた品を持ち帰るだけという客ばかりになったら、むしろ回転が速くなって大歓迎です。つまり、こうした制約にはなるべく業界全体を寡占化して、政治家にたくさんワイロをやれる企業を増やそうという業界内大手と政治家の暗黙の了解が存在していたのです。東京のいい雰囲気の居酒屋や大衆食堂がとうとう日常生活の復活を待ちきれずに潰れていったについては、欧米とはまた違った特別な悲哀があります。

欧米では、業界全体の寡占化促進、そしてワイロの増加というそれなりに目的のある個店経営レストラン潰しとして、どんなに悪辣でも少なくとも意味のある行為でした。

そもそもコロナ自体の感染者数も犠牲者数も少なかった東京で延々とレストランいじめをしてきたのは、だれにとってもまったく意味のない大量殺戮と言っても過言ではありません。

欧米で流行っていることならなんでもマネしたがり、悪いことほど長くマネしつづける目立ちたがり屋がたまたま都知事をしていたという以外に、これだけ不幸な事態に至った理由がないからです。