クレアチン
なぜ摂るのか
クレアチンはステロイドのひとつではないかと誤解されていた時代もあった。もちろんそれは大きな間違いである。クレアチンは人間の体内にも存在している安全な物質であり、エネルギーを貯蔵するために必要なものだ。しかし、体内で作られる物質ならサプリメントを利用してまでクレアチンを摂る意味はあるのだろうか?
性別を問わず、トレーニングを行っている人は特に筋力を向上させたいと思っている。筋肉も形良くつくりたいし、活発に動くことができる身体を維持したいと願っている。そういう人たちが積極的にクレアチンを摂取しているのだ。しかし、調査によると、どうもそれだけが理由ではないらしい。
●長時間の運動を行う持久系アスリートは、持久能力が向上し、疲労回復時間の短縮されるということでクレアチンを摂取している。疲労回復が促されるのは、クレアチンが炎症を抑制するためだそうだ。また、筋線維の修復にもクレアチンは作用するため、このことも疲労回復の促進につながっている。
●クレアチンはタンパク質の筋中同化を促すため、筋肉の疲労回復や修復が促進されると言われている。そのため、何日も休日を挟まなくても、次回のワークアウトを行うことができるというのも、トレーニングが好きでたまらないという人たちには歓迎されている。
●筋肉に負荷をかけるウエイトトレーニングとクレアチンを組み合わせると、骨密度を高めることができるそうだ。このことは、たとえば骨粗しょう症患者が治癒目的でトレーニングする場合にも用いることができる。
●クレアチンはブドウ糖の代謝を促すという実験結果も得られていて、もしこれが事実ならタイプ2糖尿病患者にとっては朗報だ。運動を開始するのと同時期にクレアチンのサプリメントも開始することで、身体のグリセミックコントロールが大いに改善されたという実験結果もある。これからトレーニングをはじめてみようという人は試してみるといいかもしれない。
●酸化によるストレスの軽減にクレアチンは役立つという実験結果がある。酸化によるストレスとは、体内でフリーラジカルの生成が中和作用よりも上回ってしまい、この状態は細胞の健康を大いに損なうことになる。私たちの身体には元々フリーラジカルの働きを中和したり、抵抗する機能が備わっているのだが、それが追いつかないほどフリーラジカルが生成されてしまうと、好ましくない症状が次々と現れてしまう。クレアチンを摂取することで酸化が緩和されるなら、これは健康作りに大いに役立つと言える。
●脳の働きを正常に保つというのもクレアチンの作用のひとつだ。クレアチンによって記憶力が高められるそうなので、物忘れする頻度が多くなったという人は、試しにクレアチンを摂取してみるのもいいかもしれない。
いつ摂るのか
クレアチンはどのタイミングで摂取してもかまわないが、ラベルには一回2~5gを食事と一緒に摂取するのがいいと書かれている商品が多いようだ。クレアチンについて重要なことがあるとすれば、継続的に摂取するという点であろう。継続すれば、それだけ確実にクレアチンが作用するようになることを覚えておこう。
クレアチンの摂取についてもうひとつ加えておくなら、初めて摂るという人は、最初の数日間はローディング期間を設けるといいだろう。これは、最初だけ体内のクレアチンレベルを一気に高めるための方法である。
ちなみに、インターナショナル・ソサイエティ・オブ・スポーツニュートリションによると、日々の食事で私たちは1、2g程度のクレアチンを摂取することができているのだそうだ。その量は、筋中に蓄えられているクレアチンの60~80%を維持するのに役立っている。つまり、サプリメントを摂取するなら、筋中クレアチンが飽和状態になるまでの20~40%を補いたい。そのつもりでクレアチンを継続して毎日摂取していくのがいいだろう。
具体的にどれだけを摂取すればいいのか。研究によると、筋中クレアチンのレベルをできるだけ高めるには、クレアチンモノハイドレート5gを一日4回、もしくは体重1㎏あたり0.3gを一日4回摂取する期間を5~7日間続ける(ローディング期)。その後、一日あたり2~5gのクレアチンを継続的に摂取するようにし、ローディング期に高めたクレアチン貯蔵量をできるだけ維持するようにするといいだろう。
βアラニン
なぜ摂るのか
βアラニンは非必須アミノ酸のひとつだ。非必須アミノ酸は体内で様々な材料から作られるため、食べ物などから摂る必要のないアミノ酸、だから非必須アミノ酸と呼ばれている。
βアラニンは、ワークアウト前に摂取するプレワークアウト・サプリメントに含有されていることが多い。決して新しい成分ではなく、競技能力を高めたり、特に持久能力を高めると認識されてきたため、プレワークアウト・サプリメントにも含まれるようになったのだ。
インターナショナル・ソサイエティ・オブ・スポーツニュートリション(ISSN)は「βアラニンを日々のサプリメントと一緒に4~6g、2~4週間にわたり摂取し続けると運動能力が向上する」と述べている。
高強度のインターバル運動やウエイトトレーニングでは、βアラニンによって疲労の遅延が認められるとの報告がある。そのため、運動の継続時間を延長させることができるとされている。また、ISSNによると前記した量のβアラニンを被験者に4週間摂取してもらったところ、筋中のカルノシン濃度が顕著に増加するという結果も得られているそうだ。
推奨量を守っている限りは副作用の心配はないと思われるが、人によっては皮膚にチクチクした感覚が起きることもある。その場合は一日推奨摂取量を複数回に分割し、1回の摂取量を1.6g以下にして様子を見てみよう。もしくはタイムリリース型もあるので、それを用いれば一気にβアラニンが溶け込まず、皮膚の不快な感覚を避けられるかもしれない。
いつ摂るのか
βアラニンについては特定の摂取タイミングというのはない。基本的にはいつ摂取しても結果に変わりはないと考えられるが、クレアチンと同じようにβアラニンも継続して摂取することが大切だ。一度に推奨量を摂取してもいいが、皮膚に不快な感覚が起きるような場合は数回に小分けして摂取してもかまわない。摂ったり摂らなかったりせずに、毎日続けて摂取してみよう。