先日、ある会計システムの説明会に参加しました。ターゲットは中堅の中小企業だそうです。説明会では「鉛筆の購入」の流れを事例にしていました。
「この説明会では売れない」。会終了後、そう思いました。
なぜ売れないのか。事例で用いられた「鉛筆購入」の処理を追いながら、説明してみたいと思います。

効率化を訴求する営業担当者
説明会の事例企業は、総務部・企画部・製造部・営業部の4部門で構成されていました。購入したのは、1本100円の鉛筆を10本。1,000円の購入取引です。(*1)
取引は、以下の順で処理されました。
1.文房具販売会社から届いた請求書データの読み取り
2.経理部門長へ、請求書データ送信・決裁
3.銀行へ振込(予約)実施
4.費用計上
購入したものが「鉛筆」であることから、「事務用品費」として、4つの部門へ費用配分されました。各部門への配分比率は、事前に登録しておく仕組みです。今回は1/4づつとしています。
結果、会社の預金口座から1,000円が減少し、4部門それぞれに「事務用品費」が250円づつ計上されました。すべて自動処理です。
とても効率的です。
「どうです? すごいでしょう?」
営業担当者の、心の声が聞こえてきそうです。
しかし、筆者には会計担当者の声も聞こえてくるのです。
「このままでは使えない」と。
この会計システムの、どこに問題があるのでしょうか。
決裁の問題
まず、決裁に問題があります。
確かに、決済は経理部門長が行っています。しかし、これは「1,000円を支払っていい」つまり、会社の預金口座から1,000円減っても資金繰りには問題ない、という承認です。
一方、費用が配分された、4部門の部門長は「事務用品費を使っていい」という決裁を、行っていません。しかも、各部門が鉛筆を使う使わないにかかわらず、「勝手」に、固定的な「比率」で、費用が割り振られてしまっているのです。
通常、各部門長は費用が発生すると、自部門の予算と照らし合わせ、予算オーバーしないよう管理する「予実管理」を行います。ところが、上述のように、「勝手に」費用計上されると、予実管理ができなくなってしまいます。