年金の受け取りは通常65歳からだが、60歳などに前倒しする「繰上げ受給」や、70歳や75歳に後ろ倒しにする「繰下げ受給」も可能だ。繰上げ・繰下げにはそれぞれメリット・デメリットがあり、いつから受給するべきか迷う方も多いだろう。そこで今回は年齢別の損益分岐点を検証し、結果を解説する。受給開始時期を検討する際の参考にしてほしい。

繰上げと繰下げ、それぞれのメリット・デメリット

年金の繰上げ受給は早くから年金を受け取れる半面、受給額が通常より減額される。長生きするほど年金額の減少による影響は大きくなる。

ただし心身や経済的な問題等で老後に働くのが困難な場合、早めに受給を開始することで生活を安定させることができる。それでもどうしても足りない場合は、年金を受給しながら生活保護を受ける方法もある。

一方の繰下げ受給はタイミングが遅れる分、受給額が増えるのがメリットだ。長生きするほど受給額増加のメリットは大きい。年金以外の資産が十分にある人、老後も働ける人の場合、繰下げることで年金もさらに手厚くすることが可能だ。

このように年金の繰上げと繰下げのどちらを選ぶべきなのかについて、一概に正解はない。個人の経済面・健康面等の事情も考慮する必要がある。

2022年4月から年金の繰上げの内容が変更に

2022年4月から、繰上げによる減額が1ヵ月あたり0.5%から0.4%へ変更される。繰下げ受給による増額は1ヵ月あたり0.7%で変更はないが、繰下げできる年齢が70歳から75歳へと拡大される。

この改正によって、繰上げ受給は最大24%の減額(0.4%×60ヵ月)、繰下げ受給は最大84%の増額(0.7%×120ヵ月)となる。

損益分岐点の検証

繰上げ受給した場合、受取額の合計はどこかのタイミングで通常の場合より追い越されることになる。通常受給と繰下げ受給も同様だ。

そこで何歳で累計の受給額が逆転するのか、年齢を検証してみた。

60歳繰上げ受給と65歳受給の比較

60歳から繰上げ受給すると年金額は24%の減額になる。通常の65歳の受給と比べた場合、受給の合計額が追い越されるのは81歳未満だ。

81歳以上生きた場合、通常受給の方がお得となる。

65歳受給と70歳繰下げ受給の比較

70歳に繰下げると受給額は42%増加する。累計の受給額を計算すると、81歳で通常受給に追いつくことになる。

それ以上生きる場合、繰下げ受給のほうが得となる。

70歳受給と75歳繰下げ受給の比較

75歳に繰下げると受給額は84%増額される。この場合、65歳の受給に追いつくのは86歳、70歳の受給に追いつくのは91歳となる。

平均寿命で考える

厚生労働省の「簡易生命表(令和2年)」によると、2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳となっている。男性の場合、70歳に繰下げると65歳の受給に追いつくのは寿命ギリギリになるかもしれない。

一方で女性は70歳に繰下げても、生きている間に65歳受給に追いつく可能性が高いと言える。70歳まで年金を受給しなくても生活していけるなら、繰下げるのも1つの手だ。

自分に適した受給開始タイミングを選ぼう

年金受給の繰上げ・繰下げについて、損益分岐点の計算結果を紹介した。長生きすると繰下げ受給のほうがお得だが、何歳まで生きられるかは分からない。

繰下げると受給が遅れるため、それまで金銭的に持ちこたえられない場合は早く受給を開始したほうが生活は安定するだろう。

このように繰上げと繰下げに関しては、絶対的な正解はなく、個人の事情により判断する必要がある。60歳が近づいてきたら、身体的・経済的な面を考慮して検討しよう。

文・MONEY TIMES編集部

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