熊田木材工芸 取材後の感想

初めてお会いした時、「すみません、私は家具作りの世界に疎いもので、とんちんかんな質問をするかもしれませんが、どうかお許しください。」と言ったところ「木はひとつひとつ全部違うんですよ。だから簡単にはわからない。木をわかっているなんていう人がいたら信用できないねぇ」。

う~む、なかなか手ごわいお方のようだ。。。見た目もちょっと怖そうだし(失礼!)

取材時、私が熊田さんの熱量をドラマチックなストーリー仕立ての記事にしようと目論見ながら質問する私の下心を見透かしたように、侠児さんと悦子さんの言葉はシンプルで飾りがありません。

「職人さんというよりは、作家さん、いえ芸術家のようですね」というと「呼ばれ方なんてなんでもいいんだよ、そういうの俺、興味ない」

私は、原木から作られる一枚板のテーブルというと、大きくて、重くて、大豪邸にしか似合わないんじゃないか、というイメージを持っていました。

「うちなんかマンションだから、一枚板テーブルは大きすぎて・・・」そう思っていましたが、決してそうではなく、マンションにも似合う一枚板テーブルは作れるそうです。

「そうは言ってもテーブルはちょっと・・・」という方には、例えば、花を置く花台であれば、どんなお家でも合うでしょう。

「うちには床の間がないんだけど、この花台で床の間ができたわ」と喜ばれるお客さまもいらっしゃるのだとか。

テーブルは何かを置く場所としての機能的側面だけでなく、いつも一家の中心にあり、長い時間を共にすごす場所。

だから、そこにあるだけで落ち着く、なんかいいなとじっと見る、手でさすってみる、単なる物ではなく、家具が語りかけてくるような味わいがあると、日常がもっと豊かになるような気がしました。

日本の木材は四季(気候の変化)があるおかげで年輪がきれいで味があるものが多いそうです。

原木から生まれる一枚板テーブルは、百年以上生き続けます。親子2代、3代にわたり受け継がれる、そんな家具があるってなんかいいですよね。

銘木の一枚板テーブルと言うと日本式家屋しか合わないというイメージが強いかもしれませんが、最近では、北欧系のインテリアとの相性も良いと、若い層の人たちにも人気が出ているようです。

【栃木県佐野市】熊田木材工芸(KUMAMOKU)が40年間守り続けてきたモノづくりの信念とは?
(画像=『たびこふれ』より引用)

このような猫足のテーブルなら、洋風のお部屋にも合いそうですね。

熊田木材工芸は、侠児さんと悦子さんご夫妻の二人三脚でやってこられました。侠児さんも仰います。「女房がいなければここまでできなかった」と。

侠児さんがメインで悦子さんがその助手を務める、ということではありません。

例えば、塗装に関しては悦子さんが行っています。

景色や人が、まるで鏡のように映り込む鏡面塗装という仕上げ法があり、KUMAMOKUのテーブルの鏡面塗装は歪みひとつなく、真っ直ぐ平らに悦子さんがが磨き上げているためにまさに鏡のように映り込みます。写真を撮ろうとすると自分が写り込んでしまう、カメラマン泣かせなテーブルでもあります。

【栃木県佐野市】熊田木材工芸(KUMAMOKU)が40年間守り続けてきたモノづくりの信念とは?
(画像=『たびこふれ』より引用)
【栃木県佐野市】熊田木材工芸(KUMAMOKU)が40年間守り続けてきたモノづくりの信念とは?
(画像=『たびこふれ』より引用)

どうですか、この鏡面塗装の艶と光沢。

また、大きな機械を扱うのは男性の侠児さんですが、その時も常に悦子さんが側にいて、道具の扱いや怪我や事故のないようにコードの配線に気を配るなど全てのサポートをしています。つまりそういう二人三脚の役割を果たすことでKUMAMOKUの家具は作られています。どちらかが欠けたら作品は出来上がらないのです。

完璧な昭和の亭主関白スタイルで、自分のやりたいように生きてきた侠児さん。さぞ悦子さんは、侠児さんのわがままに振り回され、我慢を強いられてきたことだろうかと思いました。ところが、侠児さんが話すのを隣で聞いている悦子さんは、自然体で優しく柔らかい。

悦子さんは侠児さんの話を聴いて楽しそうに聴いていらっしゃいますね」と言うと「そんなきれいごとばかりじゃなかったけれど、言い出したら聞かないからね、この人。笑」と悦子さん。そこには悦子さんの人間的な懐の深さと侠児さんへの信頼が感じられました。

【栃木県佐野市】熊田木材工芸(KUMAMOKU)が40年間守り続けてきたモノづくりの信念とは?
(画像=『たびこふれ』より引用)

<ふたりだったからこそ今日までやってこれた>

原木から作られる一枚板テーブルがある家、っていいなと思いました。

木から作られた家具は単なる道具じゃない。一緒にいる生活の一部なんだと。そこには、温かく、豊かで味のある空間が作られます。

あなたもぜひ一度、栃木県佐野市にある熊田木材工芸に訪れて、侠児さん、悦子さんが魂を注いで作られる作品を自分の目で確かめてください。

【栃木県佐野市】熊田木材工芸(KUMAMOKU)が40年間守り続けてきたモノづくりの信念とは?
(画像=『たびこふれ』より引用)

「(餅をつく)臼を椅子にしたい」と持ち込まれて椅子に生まれ変わった臼。

熊田木材工芸には、手直しや古い家具の再生などを依頼してくるお客さんも多いのだそう。確かな腕と姿勢に魅せられ、ファン・リピーターが多いのもうなづけます。

文・写真・シンジーノ/提供元・たびこふれ

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