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熊田木材工芸のモノづくりとは
熊田さんが「職人として一人前になれた」と感じた瞬間
熊田木材工芸のモノづくりとは
熊田さんがこれまでずっと意識してきたことは2つ。
- (1) 手抜きをしてはだめ
- (2) 都合よく解釈してはだめ
シンプルでありながら深い言葉です。言うのは簡単ですが、なかなかできることではありません。熊田さんはひたすら目の前の木に真剣に向き合い、集中して作り続けてこられました。
ちなみにこちらが一枚板テーブルの材料となる原木です。

素人がみただけでは、これがいったいどんな家具になるのか想像もつきません。
「(失礼ながら)こんな木からあのようなテーブルができるんですか・・・」と訊くと「イメージとしては、原木の中から取り出す、という感覚かな」と熊田さん。
まるでイタリア・ルネッサンス期の巨匠、ミケランジェロのようです。
普通、お客さんは家具の制作をお願いする時、家具を置きたい部屋の図面、寸法を持ってきて、そこに合う家具を作って欲しいと依頼されることが多いのだとか。しかし熊田さんは、図面から入るのではなく、立体的にイメージする。お客さんがどういう家に住み、その家具をどういうスペースに置こうとしているのかを聴きとり、その空間にぴったりの作品を作る。家具職人さんというよりは、作家、芸術家の領域ですね。
私たちがよく見る、原木から作られた一枚板テーブルの側面は、木そのものの形を生かしたデザインになっているのだろうと思いますよね。
しかし原木の形をそのまま残すのではなく、その木の特徴や年輪の形状などもみながら、一番良い姿に、熊田さんの手作業によって形づくられているのだそうです。やはり芸術作品です。

一枚板からできた家具は、製品になった後も生きていて、多少のゆらぎが起こるそうで、それも見越した上で作るのだそうです。匠の技ですね。
熊田さんが「職人として一人前になれた」と感じた瞬間
一枚板テーブル作りは、サイズの決まった材料があり、マニュアルに沿って作っていけば出来上がるようなものではありません。素材がひとつひとつ違いますから、作り方もそれに合わせて当然変わってきます。
つまりこの工程は、どこまでやればOK、という明確なゴールがないのです。やってもやっても終わりがない。これは厳しいですね。
そんな難しい仕事を、ここまでやれたら「うん、いいだろう」と納得することができるようになった時「自分も一人前になったな」と感じたそうです。