勤め先の早期優遇退職者の募集に手を挙げた場合、加算された退職金を受け取り、新たな人生をスタートさせることになる。なかには、新しい仕事がうまくいかず手を挙げたことを後悔するケースもあるが、電通の場合は近年早期退職した人の多くが「充実」しているという。

電通の早期退職者の多くが「充実している」と回答

日本の広告代理店大手である電通。2020年に実施した早期退職者の募集では、早期退職した人と業務委託契約を締結し、一定額の報酬を最大で10年にわたって支払う仕組みを導入した。同制度で早期退職した人は、個人事業主となり電通が設立したNH社(ニューホライズンコレクティブ合同会社)と業務委託契約を結びNH社から報酬を一定額の報酬が支払われることになる。

冒頭で「電通の場合は最近早期退職した多くの人が『充実』している」と記載したのは、NH社と業務委託契約を結んだ元電通社員の多くが、退職後1年間における自身の取り組みについて「充実している」と回答しているからだ。アンケートの回答結果は「とても充実している」が34.5%、「充実している」は54.9%と充実している人の割合は合計で約89.4%に上る。

なぜ多くの人が退職後に充実感を得られているのか

なぜここまで多くの人が「充実している」と回答するに至ったのだろうか。その理由の1つにNH社と業務委託契約を結ぶことで退職後も一定額の報酬を受け取り続けることができる制度が挙げられる。収入の安定は、社会人にとっては非常に重要な要素だ。しかもNH社は、単に業務委託するだけではなく個人事業主となった電通の元社員に対しさまざまな学びの機会を提供している。

例えば「スキルを高めるためのセミナーを実施する」「資格取得を後押しする」といった具合だ。こうしたセミナーなどに参加することでコミュニティに属し続けることができる点も大きいと考えられる。通常早期退職すると一気に孤独感が増し所属していた企業の所帯が大きければ大きいほど退職後に感じる変化も大きくなりがちだ。

こうした孤独感を避けられることも電通で早期退職者の9割が「充実している」と回答した理由の1つだろう。

電通の早期退職制度が若者をひきつける!?

早期退職者とも業務委託で一定額の報酬を長期間にわたって保証する……電通のような早期退職制度を用意できる企業は、決して多くはないかもしれない。しかし「1つの企業に所属して働き続ける」という生き方に疑問を持つ若者も増えてきている時代において、前向きな早期退職の取り組みは今後社会に出る若年層をひきつける余地があるだろう。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

【関連記事】
サラリーマンができる9つの節税対策 医療費控除、住宅ローン控除、扶養控除……
退職金の相場は?会社員は平均いくらもらえるのか
>後悔必至...株価「爆上げ」銘柄3選コロナが追い風で15倍に...!?
【初心者向け】ネット証券おすすめランキング|手数料やツールを徹底比較
>1万円以下で買える!米国株(アメリカ株)おすすめの高配当利回りランキングTOP10!