ちょうど2年前の春、10年乗ったポルシェ・ボクスターSを手放した僕はフランス製の特別なハッチバックを手に入れることになった。それが「ルノー・ルーテシアR.S.」。それから共に過ごした2年間で感じたことをお届けしよう。
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クラスメイトへの恋のように出会ったルーテシアR.S.
ルーテシアR.S.は特別なクルマ、だけどリーズナブル
クラスメイトへの恋のように出会ったルーテシアR.S.
クルマを探し始めた当初は、それまで乗っていたボクスターのように後輪駆動でMTの2シーターオープンを買おうと思っていた。ボクのクルマ生活は2台持ちでそのうち1台は実用車(ルーテシア購入時はマツダ・プレマシーでその後CX-5に乗り換えた)だから、2台目の車は趣味車に徹し、実用性など考えずに走りや気持ちよさだけで選ぶようにしている。
そんな環境もあって2シーターオープンカーで何ら不満はなかったからだ。それよりも、走って楽しいことや運転すると元気が出ることが重要である。
ところが、ふと中古車検索サイトを見ていたらルーテシアR.S.が急浮上してきた。それまで何度か乗って楽しいクルマだなとは思っていたけれど、自分で所有することまでは考えたこともなかった。しかし、気が付くと車両を絞り、販売店に連絡を入れていた。
それはまるで、ずっと近くにいる女性への突然はじまった恋のようなものかもしれない。中学や高校の時、クラスメイトのひとりでそれまで全く興味のなかった異性にふと恋心が芽生えたような心境だ。
中古車検索サイトで探した購入候補は、登録から半年が経過し走行1000kmという個体。「いちおう実車を確認する」程度の感覚で、クルマを1時間半ほど走らせて向かった販売店で、気が付いたらあとはハンコを押すだけの状態になってしまった。
ルーテシアR.S.は特別なクルマ、だけどリーズナブル
ルーテシアR.S.には「シャシースポール」「シャシーカップ」そして「トロフィー」という3つの仕様があり、後者になるほど仕様がハードになる。サスペンションが硬くなり、トロフィーではステアリングギヤ比がクイックになったり、エンジンパワーも220馬力までアップしている。一般道走行なら「シャシースポール」で十分。
そんなことは頭では理解している。だけどせっかく特別なクルマを買うのだから……。「毒を食わらば……」の精神でいちばん過激な仕様を選んでしまった(毒サソリのアバルトじゃないんだから、ちょっと言葉の使い方を間違っている気もするけど)。硬いサスペンションのせいで乗り心地はちょっと(いやかなり?)よくないけれど、そんなことは気にしても仕方がない。
コンパクトハッチバックのルーテシアは、欧州でゴルフに続いて2番目に売れている人気車だ。Bセグメントではトップセラーである。
しかし、「R.S.」は似ているけれどそれとは別物。ルノーのモータースポーツ部門である「ルノースポール」が徹底的にチューニングした、日産GT-Rでいえば「GT-R NISMO」、トヨタ86でいえば「86 GRMN」のようなもの。エンジンは標準車に設定のない1.6Lターボ(なんと日産横浜工場製!)を組み合わせ、車体組み立てはルノーの工場ではなくルノースポールの工場にある専用ラインで、レーシングカー製造の脇で職人の手でおこなわれている。
そんな特別なクルマが、新車でも300万円強から選べるのだからとんでもないことである。今にして思えば、そんなバックストーリーも、このクルマに惹かれた理由のひとつかもしれない。