「緑の革命」を真に受けた罰

最大の理由は、「地球温暖化=二酸化炭素元凶」説を真に受けて、化石燃料の利用を本気で減らしにかかってしまったことだと思います。

世界中どこでも似たようなものでしょうが、アメリカでも銀行が融資をする際の与信基準は各行横並びになりがちです。

そして、間の悪いことにアメリカの大手銀行は2019~20年ごろいっせいに「化石燃料採掘業者の長期投資はunbankable(担保価値がない)」と見なすように与信基準を変更しました。

その結果、世界に名だたるオイルメジャーの案件でさえ、新規の油田・ガス田を発見するための探査や試掘のための先行投資ばかりか、既存のしかも豊富に埋蔵量を残している油田・ガス田の老朽化したリグ(掘削機)の更新のための融資さえ断るようになっていたのです。

その結果、すぐにではありませんが、徐々にアメリカの原油や天然ガスの生産量が減少に転じました。

オイルメジャーのほうも、どうせ再生可能エネルギーだけで現代社会のエネルギー需要を満たすことはできず、需要は化石燃料に戻ってくることを確信しています。

ですから、自己資金だけで設備を拡張するような冒険はせず、生産減による値上がりで高収益を保ちながら、需要が回帰してくるのを待っているわけです。

結局のところ、貧乏くじを引くのは少量を高値で買わされることになる消費者で、とくにアメリカの場合ガソリンやディーゼル油は生活必需品ですから深刻です。

こうして世界中で持て余している投資用待機資金を「再生可能エネルギーによる完全電化生活のためのインフラ投資」に大盤振る舞いし、やっぱり不可能と分かった時点でまた化石燃料中心に戻るために巨額資金を遣い、といったムダな投資に莫大な資金が注ぎこまれてしまうのかと諦めに近い心境で見ていました。

ところが、ここにきてアメリカの大衆が本気で暴動を起こすかもしれない事態がかなり実現しそうな気配が漂ってきました。

3月25日原油価格高騰の世界史的意義

ウクライナ戦争勃発直後のショック高のあと、停滞気味だった原油価格が急騰に転じたのです。

原油バレル当り180~200ドル説の根拠は?
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

午前8時半ごろまで下落していたWTI原油先物価格が急騰に転じた背景には、南イエメンフーシ派による、サウジアラビア国営石油会社アラムコのジェッダ製油施設ドローン爆撃という大ニュースがありました。

原油バレル当り180~200ドル説の根拠は?
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

南イエメンのフーシ派政権は、アメリカの軍事的支援を受けたサウジアラビア・UAE連合軍による空爆によって2015年以降10万人を超える死傷者を出し、食料や物資の補給もままならない人道上の危機と呼ばれる状態が続いていました。

しかし、2019年に安価な手製のドローンによるアラムコ製油施設の爆破に成功してから、徐々に形勢を逆転しはじめていたのです。すでにUAEはほぼ戦線を離脱したと見られています。

この攻撃がジェッダでF1開催を週末に控えた金曜日に遂行されたことから、フーシ派はいちばん宣伝効果の高い時期を選んで攻勢を仕掛けることができるほど主導権を握りつつあるとわかります。

そして、サウジアラビアは「アメリカなどの支援なしには原油の供給責任を果たせなくなる」と主張しているのです。

もちろん、軍事・経済両面にわたる支援の増額を求めての発言でしょうが、実際にサウジアラビアからの供給量が一時的に激減する可能性も出てきたのは間違いのない事実です。