好成績はハイテク比重が高かったから

ナスダック(NASDAQ)とは、全米証券業協会が運営している証券取引所より簡易なシステムで、売り手と買い手が集まる場所はなく、お互いに気配値を連絡し合って取引しています。

まだ誕生したばかりの小さな企業でも、取引所に上場するほど敷居が高くないので、昔から画期的な技術を武器に急成長中の新興企業が上場することが多く、したがっていわゆるハイテク企業の比率が高かったわけです。

そして、約3000のナスダック上場全銘柄を時価総額で加重平均したのが、ナスダック総合指数で、そのうちから100銘柄を選んだのがナスダック100指数です。

まず、総合指数のほうから構成銘柄のセクター別内訳を見ていきましょう。

ブル相場の終焉を確認すべき3月16日のアメリカ株市場
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

テクノロジー株の比重が半分近くに達し、圧倒的に高いと一目でわかります。2番目に比重の高い裁量消費財と合わせると、2セクターだけで7割近くになっています。

次に、S&P500採用銘柄とナスダック100採用銘柄のセクター比重の差をご覧ください。

ブル相場の終焉を確認すべき3月16日のアメリカ株市場
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

先ほどのナスダック総合とは微妙にセクター分類が違いますが、テクノロジー株はほぼ共通ですから、ナスダックの2指数はテクノロジー株のウエイトが非常に高く、S&P500ではそれほどでもないとわかります。

ナスダック市場に上場しているうちから100銘柄だけを選んだナスダック100に占めるテクノロジー株の時価総額は、じつに55%に達していました。

結局のところ、過去2年間のナスダック2指数のすばらしいパフォーマンスは、時価総額ウエイトの高いハイテク銘柄が順調に業績も伸ばし、それ以上に急速に株価を上げてきたことが主な要因だったのです。

2008年以降のナスダック100とS&P500の収益実績を比較すると次の2枚組グラフのとおりでした。

ブル相場の終焉を確認すべき3月16日のアメリカ株市場
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

なお、総合収益とは受け取った配当を全額同じ指数の買い増しに使って投下資金を増やしていった場合に、元本の評価額がどのくらい増えていたはずかを示します。

年間総合収益率で見ると、S&P500が10.1%に対して、ナスダック100が16.1%とちょうど6ポイントも差があり、これが複利計算で伸びていくので、期間が長くなるほどパフォーマンスの差が開くことがわかります。

また、これだけ年間収益率に大きな差がありながら、変動率のほうはS&P500の21%に対してナスダック100は23%と小さな差にとどまっているので、ナスダック100は収益の安定性もほとんど犠牲にしていないわけです。

ひとつ注意すべき点があります。それは、ナスダックで大きな比重を占めているテクノロジー株がみんな好業績だというわけではなく、その中で時価総額の大きな株が指数全体を引っ張っていることです。

各業界の大手企業から選ばれたS&P500の採用銘柄のあいだでは、時価総額にあまり大きな開きはありませんが、ナスダック上場銘柄を網羅したナスダック総合の場合、大手と新興企業の時価総額には非常に大きな差があります。

ナスダック上場銘柄中で時価総額の順にトップ20社を挙げると、次の円グラフのとおりです。

ブル相場の終焉を確認すべき3月16日のアメリカ株市場
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

円グラフに書きこまれた数字は、それぞれの銘柄の時価総額が全銘柄時価総額に占める比率ですが、約3000銘柄中の20銘柄だけで53.5%に達しています。

さらに、トップ5社だけで36.8%と全銘柄時価総額の3分の1を超えています。

トップ5銘柄をのぞくと去年からベア相場

もっと驚くべきことに、トップ5銘柄をのぞいたナスダック総合指数をつくってみると、絶好調に見えた去年からすでにベア(弱気)相場に入っていたのです。

ブル相場の終焉を確認すべき3月16日のアメリカ株市場
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

時価総額最大の5社をのぞいたナスダック総合指数は、去年の2月半ばごろに大天井を打ち、その後は小さな波動のたびに上値、下値を切り下げる典型的な弱気相場に入っていました。

それでも実際のナスダック総合指数は上昇基調を維持していたわけですから、時価総額トップ5社の株価がいかに大幅に伸びつづけていたかがわかります。

ナスダック総合の時価総額の3分の2弱を占めるその他銘柄は、2月半ばから11月半ばまでで約3割下落しています。

ですから、トップ5銘柄は6割ぐらい上昇しなければ、総合指数を横ばいに保つことさえできなかったはずです。

実際には総合指数はこの期間に約1割上がっていますから、トップ5銘柄の値上がり率は8割前後に達していたわけです。