核を放棄したウクライナの悲劇
今回、ウクライナがロシアから軍事侵攻を受けた最大の原因は、ウクライナの「核放棄」にある。1991年にソ連が崩壊しウクライナが独立した当時、ウクライナは1240発の核弾頭と176発の大陸間弾道ミサイルという世界第3位の核兵器を保有していた。
しかし、ウクライナは、核不拡散と核独占を狙う米国・ロシアから核の放棄を強要され、ウクライナの独立・主権・安全を保障する1994年の「ブタペスト覚書」と引き換えに核をすべて放棄し、ロシア側に引き渡した。このため、ウクライナは隣国の核大国ロシアに対して一切の「核抑止力」を失い、その結果、2014年の「クリミア併合」、さらには今回「ブタペスト覚書」を反故にする軍事侵攻を受けたのである。
もし、ウクライナが核を放棄していなければ、「クリミア併合」も今回の軍事侵攻もなかったであろう。なぜなら、ウクライナによる対ロ「核抑止力」が働き、首都モスクワが核攻撃の対象となれば、プーチン大統領といえども核を持つウクライナへの侵攻は躊躇せざるを得ないからである。
その意味で、今回の事態は、まさに核を放棄したウクライナの大失敗であり悲劇である。日本は、他国とはいえ、この厳粛な事実と教訓を肝に銘じ、「核抑止力」を含め、米国に頼り切ることなく、最後は「自分の国は断固として自分で守る」という日本防衛のために、勇気と覚悟と英知を持つべきなのである。
国際社会では、外交力だけでは国は守れないのであり、外交力を担保する強力な経済力と軍事力が「抑止力」として必要不可欠であることを、今回のロシアによるウクライナ侵攻が証明していると言えよう。
文・加藤 成一/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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