米国バイデン政権の対ロ抑止力低下
今回のロシアによるウクライナ侵攻の背景には、中国による「台湾有事」や「南シナ海問題」への対処など、「クアッド」や「オウカス」等の枠組みにより、中国に対して軍事力を集中せざるを得ない米国バイデン政権の、対ロ抑止力の低下があると筆者は考える。ロシアや中国が相次いで開発した迎撃困難な極超音速弾道ミサイル兵器の影響もあろう。
このため、バイデン政権はロシアに対して軍事介入の選択肢はなく「経済制裁」しか発動できないのが現状である。しかし、「経済制裁」は2014年の「クリミア併合」でロシア側も織り込み済みであり、最近の原油高もあり、影響は限定的と言えよう。
もちろん、米国は、対中、対ロの二正面作戦を回避するため、NATO非加盟国のウクライナを支援すべき軍事介入は困難である。しかし、これまで、ロシアによる「クリミア併合」後の米国のウクライナに対する兵器等の援助は8年間で総額25億ドルにとどまっており、今回の侵攻を考えると、対ロ抑止力として十分ではなかったと言えよう。