2022年の経済・金融ニュースを読み解く際、「政策金利」の知識は必須になるだろう。米国の利上げや中国の利下げなど、政策金利に関するニュースが飛び交う1年になりそうだからだ。今回は、政策金利の基礎知識をわかりやすく紹介する。

ニュースの中で飛び交う「利上げ」「利下げ」

2022年、アメリカでは政策金利の引き上げが行われる見通しだ。アメリカの政策金利は「フェデラルファンド(FF)金利」であり、アメリカの中央銀行に相当する「FRB」(連邦準備制度理事会)は、3月の会合で利上げを決定することを示唆した。

アメリカでは「利上げ」が濃厚だが、中国では「利下げ」が続いている。1月20日、中国の中央銀行にあたる「中国人民銀行」は、中国の政策金利にあたるLPR(ローンプライムレート)を2ヵ月連続で引き下げることを発表した。

最近では、ロシアの中央銀行が政策金利を8.5%から9.5%に引き上げることを決定した。一方、欧州では欧州中央銀行が主要な政策金利を据え置くことを発表している。

このようなニュースを見てもわかるように、「政策金利」は今年の経済界・金融界における注目トピックの一つだが、知識があいまいな人も多いのではないだろうか。

政策金利の基礎知識

そこで、ここでは政策金利の基礎知識を紹介しよう。政策金利とは中央銀行がコントロールしている金利のことで、上下することによって景気や物価を安定させることを目的としている。日本における政策金利は、中央銀行が市中銀行にお金を貸し付ける際の金利を指す。

「政策金利と景気」の関係

インフレや景気の過熱を抑える場合は政策金利を上げ、デフレ(物価の下落)が起きている場合や景気が悪化している場合は、政策金利を下げることが多い。

政策金利が下がると、市中銀行は中央銀行から低金利でお金を借りられるため、個人や企業にお金を貸し出す際の金利も下がる。一方で政策金利が高くなると、市中銀行が中央銀行からお金を借りる際の金利が高くなるため、個人や企業に対する貸出金利も高くせざるを得なくなる。

政策金利が上がれば、結果的に個人や企業の消費や設備投資が控え目になり、景気の過熱が抑えられる。逆に、政策金利が下がれば個人や企業の消費や設備投資が盛んになり、景気が上向きやすくなる。

「政策金利と物価」の関係

先ほど少し触れたが、政策金利は「物価」にも影響する。物価の上昇度合いは「インフレ率」で表され、インフレ率が政府目標よりも高い時は、物価の上昇を抑えるために政策金利を上げることが多い。

政策金利を上げると物価の上昇が抑えられるのは、景気の過熱が抑えられるからだ。すると消費者が商品・サービスに対する購買意欲が落ちるため、結果的に物価が下がりやすくなる。

一方、政策金利を上げると景気が良くなり、人々の消費行動が盛んになる。消費行動が盛んになると商品・サービスに対する購買意欲が高まるので、結果的に物価は上がりやすくなる。

需要が供給を上回るとモノやサービスの価格は上がり、逆に需要が縮小して供給過多になると、モノやサービスの価格は下がる。このような市場の価格調整メカニズムを「神の見えざる手」と呼ぶ。これを理解すれば、政策金利と物価の関係も腑に落ちるはずだ。

アメリカの利上げ、中国の利下げの理由は?

政策金利と景気の関係、そして政策金利と物価の関係を理解すると、なぜアメリカが利上げに踏み切るのか、なぜ中国が利下げを行っているのかがわかる。

アメリカは今、インフレに苦しんでいる。2022年1月のインフレ率は7.5%であり、当局がインフレの目標として掲げている「2%をやや上回る水準」を大幅に超えている。そのためアメリカの中央銀行は、物価上昇を抑えるために政策金利を上げようとしているのだ。

一方、中国では景気の減速が鮮明になってきている。2021年10〜12月のGDP(国内総生産)の伸び率は4.0%と、前年同期と比べて鈍化している。そのため、景気を良くするために政策金利を下げようとしているわけだ。

株式投資でも役立つ知識

政策金利関連のニュースを見るとき、「政策金利が何%から何%になった」といった数字の変化に目を向けることも重要だが、この記事で説明したことを理解していなければ、利上げや利下げの背景まではわからないだろう。

政策金利について理解を深めていくと、株式投資においても役に立つ。金利の上昇に強い業種もあれば弱い業種もあるため、銘柄を選ぶ際の参考になるからだ。

政策金利に関するニュースが飛び交うことになる2022年。この機会に、政策金利について深く学んでみてはいかがだろうか。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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