■ヨーロッパ

ヨーロッパでは、宇宙科学系の探査機は長期計画に基づいて進行しています。
1985年にはHorizon 2020計画が、1994~1995年にかけてはHorizon 2000 Plus計画が、2005年にはCosmic Vision 2015-2025が制定されました。

1985年:ESA初の深宇宙探査機「Giotto」の打上げ

「Giotto」はヨーロッパ宇宙機関(ESA)が1985年に初めて打ち上げた深宇宙探査機です。

1986年にはハレー彗星の核にもっとも接近し、彗星に有機物が存在する証拠を初めて発見しました。長い旅路の末、1992年にGiottoはグリッグ・シェレルップ彗星に向かい、多くの情報を地球に送信しました。

1995年:ヨーロッパは太陽探査へ「SOHO」

「SOHO」は、The Solar and Heliospheric Observatory の略で、1995年に打ち上げられました。
地球から150万km離れたラグランジュポイントと呼ばれるところで、太陽の内部や表面、嵐の様子などを観測していました。

元々は1998年までの運用予定でしたが、2014年末まで運用が延長されました。

2003年:火星への着陸を目指した「Mars Express」

「Mars Express」は2003年にソユーズロケットで打ち上げられました。

「Mars Express」が火星軌道に投入される6日前の2003年12月19日に、着陸機「Beagle 2」を分離しましたが、「Beagle 2」は残念ながら通信が途絶してしまいました。

「Mars Express」自体は2003年12月25日に火星への軌道投入に成功し、火星の3D画像や、過去に水が存在していた跡を観測、火星の大気組成にメタンが含まれる可能性を示しました。

2003年:電気推進搭載の小型月面探査ミッション「SMART-1」

2003年に打ち上げられた月探査衛星で、当時の最新技術である電気推進技術を用いて月に向かいました。

質量約370kgの非常に小さな衛星ですが、月の表面の元素組成や鉱物組成、地形などを調査しました。

2004年:彗星への着陸に成功「Rosetta」

はやぶさ2予算はアポロ計画の1/300!? 各国の宇宙探査まとめ
(画像=Credit : ESASource : esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Rosetta_overview、『宙畑』より引用)

2004年に打ち上げられたRosettaは、4回のフライバイ(3回は地球、1回は火星)を利用して、目的のComet 67P/ Churyumov-Gerasimenkoに2014年に到着しました。

着陸機であるPhilaeは2014年に彗星の表面に着陸しました。Rosettaはその後、太陽のまわりを回る彗星の後を追い、彗星の表面に降下して運用の終了しました。

2016年-:ESAが進める火星ミッション「ExoMars」

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(画像=Credit : ESASource : exploration.esa.int/web/mars/-/46048-programme-overview、『宙畑』より引用)

「ExoMars」は大きく分けて2つに分かれます。

一つは2016年に打ち上げられたthe Trace Gas OrbiterとEDM(an Entry, Descent and landing demonstrator Module)からなるミッションで、もう一つが2022年に打上げられる予定のローバーです。どちらのミッションもロシアとの協力の中で実施されます。

ミッションには、以下のような項目が含まれます。

・火星軌道に投入し、降下させ、火星の表面に着陸する
・ローバーで火星の表面を移動する
・表面下のサンプルにアクセスする
・サンプルを取得し、解析を行う

また、科学的には以下のようなことを実施する予定です。

・過去または現在の火星上の生命の痕跡を探索する
・水環境や科学環境の変化
・火星大気とその起源の調査

2018年-:日本との共同水星探査「BepiColombo」

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(画像= 下からMercury Transfer Module、Mercury Planetary Orbiter、Sunshield and Interface Structure、一番上が日本が担当するMercury Magnetospheric Orbiter.Credit : ESA/ATG medialabSource : sci.esa.int/web/bepicolombo/-/59076-bepicolombo-exploded-view、『宙畑』より引用)

2018年10月に打ち上げられた探査機で、2025年に水星への到着を予定しています。もっとも太陽に近い銀河系の惑星ということで技術的にもハードルが高いミッションです。

探査機は、大きく水星輸送モジュール、水星表面探査機、水星磁気圏探査機に分かれており、日本は水星磁気圏探査機を担当しています(日本の章を参照)。

2020年-:ヨーロッパはふたたび太陽へ「Solar Orbiter」

Solar Orbiterは、2020年2月10日に打ち上げられた太陽観測衛星です。2021年11月からの定常観測が予定されています。

これまでの太陽観測衛星の中でももっとも近くまで接近して撮影を行ったり、極域の撮影を行うことを予定しており、これにより、太陽活動の11年周期の謎や太陽風を作り出している要因などを明らかにしていく予定です。

■中国

中国にとって宇宙科学の最初の大型プロジェクトである月面探査計画「 嫦娥計画」は21世紀で最も野心的な宇宙探査計画の一つです。

はやぶさ2予算はアポロ計画の1/300!? 各国の宇宙探査まとめ
(画像=『宙畑』より引用)

2003年3月に開始された嫦娥計画は、大きく探査計画、着陸計画、滞在計画の3段階に分かれていて、現在は第一段階である探査計画を遂行中で、探査機の着陸の段階まで進んでいます。

2007年:中国月探査の幕開け「嫦娥1号」打上げ

2007年に嫦娥計画の初号機となる「嫦娥1号」を打ち上げました。「嫦娥1号」は高度約200kmの月軌道を1年にわたって周回し、科学的な探査を行いました。

2010年:「嫦娥2号」打上げ

「嫦娥2号」は、設計は「嫦娥1号」とほぼ一緒ですが、解像度10mの高解像度CCDカメラを搭載し、月面から高度18.7kmのところまで接近して、虹の入り江地域を撮影しました。

2013年:世界で3番目の月面着陸国へ「嫦娥3号」打上げ

「嫦娥3号」では、いよいよ着陸機が月面に降ろされ、軟着陸に成功しました。これにより中国は旧ソ連、アメリカに続き、月面軟着陸を成功させた3番目の国になりました。

着陸機に搭載されていた月面車「玉兎」は、およそ1か月月面の探索を行いました。

2014年:サンプルリターンの実証「嫦娥5号T1」打上げ

探査機の号数が前後しますが、別の技術要素として「サンプルリターン」技術の実証として、地球周回軌道より遠くから、カプセルを大気圏に突入させ、地上で回収するミッションが実施されました。

2018年:「嫦娥4号」「鵲橋」打上げ

「嫦娥3号」からの流れを組む「嫦娥4号」は、着陸機と月面車を搭載し、月の裏側の探査を実施しました。「鵲橋」は「嫦娥4号」の月の裏側での活動をサポートするためのデータ中継衛星です。

2020年:「嫦娥5号」打上げ

「嫦娥5号」はこれまでの探査計画の集大成として、月面への軟着陸を行い、月面のサンプルを採取し地球へ持ち帰る計画です。

当初2019年を予定していましたが、2020年11月24日に打ち上げられ、12月2日にはサンプルの採取に成功、現在引き続きミッション遂行中です。※2020年12月5日時点