■旧ソ連・ロシア

1959-1976年:冷戦の象徴「ルナ計画」

初の人工衛星「スプートニク」の打ち上げによって火がついた宇宙開発競争の舞台は、月探査にも及びました。ソビエト連邦(ソ連)は、1959年から1976年の17年間にわたって、「ルナ計画」と呼ばれる無人月面探査計画を実施。ルナ2号は、世界で初めて月に到達した探査機となりました。さらに3号機は月の裏側の撮影、9号は月面軟着陸などの偉業を成し遂げたほか、サンプルリターンや月面探査ローバー「ルノホート」の輸送にも成功しています。

1961-1983年:世界初の金星探査「ベネラ計画」

世界初の金星探査機となったのは、1961年に打ち上げられたベネラ1号です。以降、1983年まで16機が打ち上げられました。飛行の途中で通信が途絶えるなど失敗に終わった探査機もありましたが、技術を着実に向上させていきました。1970年に打ち上げられたベネラ7号は、金星への軟着陸に成功。

ベネラ計画全体の成果としては、気温や圧力を計測したほか、大気が自転の60倍に達する速さで回転する現象「スーパーローテーション」の存在が認識されるようになったことや、軌道上から合成開口レーダ(SAR)で撮影し、地形のデータを取得したことがあげられます。「金星はソビエトの星」とも呼ばれていて、旧ソ連諸国では特別な惑星だととらえられているようです。

旧ソ連のベネラ計画は、ロシアと米国の共同プログラム「ベネラ-D」として引き継がれました。打ち上げは2031年の予定です。

■アメリカ

1958年-2003年:月から水星、木星そして土星へ「パイオニア計画」

米国・NASAによる惑星探査計画です。1958年から2年間の間に、パイオニア0〜5号機が打ち上げられ、月探査が行われました。1965年から1968年にかけて打ち上げられたパイオニア5〜9号機は、宇宙線や太陽風、彗星を観測。そして、パイオニア10・11号機はそれぞれ木星と土星を探査した初の探査機となりました。さらに、パイオニア10・11号機には、地球外生命体へのメッセージとして、男女の姿と地球の位置情報が描かれた金属板が取り付けられています。

1961年-1975年:人類が月へ「アポロ計画」

アポロ計画の成果は、有人月面着陸だけではありません。1969年に打ち上げられたアポロ11号による月の石の採取は、世界初のサンプルリターンとなりました。合計約380kgの月のサンプルを地球へと持ち帰っています。さらに、1972年に打ち上げられたアポロ17号には、宇宙機としては初めて合成開口レーダ(SAR)が搭載され、月の地下の調査に用いられました。

1975年-1980年:火星へ着陸「バイキング計画」

1975年には、火星で生命の痕跡を調査する、バイキング1・2号が打ち上げられました。土壌を採取し、分析が行われましたが、生命の発見には至りませんでした。温度や気圧の計測や地形の調査なども行われ、バイキング1号は火星の表面のパノラマ写真の撮影に成功しています。

1962年-1973年:金星・火星・水星へ「マリナー計画」

1962年から1973年にかけて、パイオニア計画と並んで実施された惑星探査計画です。1・2・5号は金星、3・4・6・7・8・9号は火星、10号は水星に向かい、惑星のフライバイおよびスイングバイ技術を確立。マリナー4号は、クレーターの存在を明らかにし、マリナー6・7号は広く火星の表面を撮影して、火山や谷などの地形を発見しました。旧ソ連も「フォボス計画」で探査機を火星に送りましたが、失敗が続いたため、火星に関する研究には米国のデータが重宝されていたようです。その後、マリナー計画は後述のボイジャー計画へと引き継がれます。

1977年-:太陽系の外へと旅を続ける「ボイジャー計画」

ボイジャー1・2号機は1977年に打ち上げられ、現在も旅を続けています。ボイジャー1号は、木星と土星に接近して探査を行った後、恒星間空間に入り、地球から見て北の方向へ進んでいます。ボイジャー2号は、木星、土星、天王星、海王星に接近して、探査を行い、1号とは反対の南方向に進んでいます。両機は、地球上の写真や言語、音声が記録されたゴールデンレコードが搭載されていることでも知られています。

1989年-木星探査機「ガリレオ」と土星探査機「カッシーニ」

探査機「ガリレオ」は、1989年に打ち上げられ、1995年に木星周回軌道に到達しました。木星に向かう途中には、小惑星ガスプラとアイダに接近して、表面の撮影に成功しています。「ガリレオ」に搭載されていた小型探査機を木星に突入させ、大気の組成を調査しました。

続いて、1997年にはNASAとESAが共同で開発した、探査機の「カッシーニ」が打ち上げられました。「カッシーニ」は木星に接近した2001年に、「ガリレオ」との共同観測ミッションを行い、磁気圏の調査を実施。その後、「カッシーニ」は搭載していた小型探査機「ホイヘンス」を土星の衛星であるタイタンに投下して地表を撮影し、土星到着後は大気の組成や気温、気圧などを調査しました。

「ディスカバリー計画」

1990年代以降、NASAでは「より早く、より良く、より安く」の概念のもと、計画が承認されてから3年以内に打ち上げ、総費用1.5億ドル(1992年度のレート)で探査を行う「ディスカバリー計画」が立ち上げられました。

かつては液体の水が流れていた証拠を発見した、マーズパスファインダーや地球近傍小惑星エロスを探査したニア・シューメーカー、水星を周回して観測を行ったメッセンジャー、火星の内部を調査するインサイトなどが、これまでに打ち上げられた探査機としてあげられます。マーズ・キューブ・ワン(通称MarCO)と呼ばれる2機のキューブサットがインサイトと相乗りで打ち上げられ、インサイトと地上との通信を中継しています。

2003年-:火星探査機「スピリット」「オポチュニティ」、「キュリオシティ」「パーサヴィアランス」

「マーズ・エクスプロレーション・ローバ」では、2003年に火星探査ローバの「スピリット」と「オポチュニティ」が打ち上げられました。同ミッションは、液体の水を探すことが大きな目的で、カメラのほかに土壌を分析するために岩石を切り取る研磨装置なども搭載されました。続いて、「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」では、2011年に探査ローバーの「キュリオシティ」が打ち上げられました。主な目的は、生命の痕跡を調査すること。かつて水が豊富に存在していたと考えられている、ゲイル・クレーターで探査が進められています。「マーズ2020」で打ち上げられた探査ローバの「パーサヴィアランス」は、2021年2月の到着を目指して飛行中です。行き先として選定されたジェゼロ・クレーターは三角州地形があり、水の存在や生命の痕跡が残っていると期待されています。

2006年-:「ニュー・フロンティア計画」

ニューフロンティア計画は、ディスカバリー計画では実現が難しい中規模のプログラムの実施を想定して立ち上げられました。

探査機「ニュー・ホライズン」は、2006年に打ち上げられ、2015年に冥王星に到達しました。

続いて、木星の大気や磁気圏の観測を目的とする探査機「ジュノー」は2011年に打ち上げられ、2016年に木星に到達。2021年7月まで観測が続けられる予定です。

3つ目のプログラムは、2016年に打ち上げられた探査機「オシリス・レックス(OSIRIS-REx)」です。小惑星ベンヌのサンプルリターンを目指していて、米国版はやぶさとも呼ばれています。ベンヌは、はやぶさ2が探査を行った小惑星リュウグウと同じ、炭素を多く含むC型小惑星に分類されます。「オシリス・レックス」は、2018年末にベンヌに到着した後に、サンプルを採取したとみられています。地球への期間は2023年の計画です。

■インド

2008年-:インドの深宇宙探査が開始。月探査機「チャンドラヤーン」

チャンドラヤーン1号は、2003年に発表され、2008年に打ち上げられました。月の高度100kmを周回して、リモートセンシングを行いました。NASAが開発した鉱物測定装置と小型SARが搭載されており、マグネシウムやアルミニウム、チタン、鉄をはじめとする鉱物や極地域の氷を調査しました。

続いて、チャンドラヤーン2号は2019年に打ち上げられました。ローバーを月表面に着陸させ、土壌の分析を行う予定でしたが、失敗に終わりました。インド宇宙機関(ISRO)は、チャンドラヤーン3号を2021年に打ち上げる計画を発表しています。

2012年-:マーズ・オービターミッション「マンガルヤーン」

マーズ・オービターミッションは2012年に政府に承認され、わずか1年3カ月後の2013年11月に打ち上げられ、インドの宇宙開発に対する姿勢や技術力を世界に示しました。探査機は「マンガルヤーン」という愛称で親しまれています。

日本は1998年に火星探査機「のぞみ」を打ち上げましたが、軌道投入には失敗しており、「マンガルヤーン」はアジアで初めて火星周回軌道に探査機を投入した国となりました。火星地表の観測や鉱物の分布の調査、大気の観測などが行われました。