考察1:二地域居住の物理的問題の解決
二地域居住は都市部住民には働き方改革や地方での豊かな生活、地方住民には雇用の多い都市での就業、都市には過剰な人口の分散、地方には人口流入による経済産業活性化等、それぞれにメリットがある。
住居については企業が社員への福利厚生の一環として家賃補助、地方自治体が二地域居住推進・人口呼び込みのため家賃補助や空き家活用等の施策があれば解決でき、良質な住居の整備と斡旋、マッチングが重要になる。
交通費は雇用側か自治体側が補助等すれば解決し、生産性が向上または居住コストが下がれば自費支弁もできる。コロナ禍で電車等の通勤や旅行需要が減少し労働人口減も考えれば、鉄道その他公共交通機関が二地域居住向けの割安プラン例えば往復切符やその回数券化(一種のサブスク)を開発提供したり、隣接する地方都市が連携し主要都市との間に高速バスを共同運行することも考えられる。南房総地域から東京へは民間路線の「なのはな号」が運行されている。
都市、地方自治体とも上記メリットを考えれば、住居や交通に補助や減税施策等も有益と考えられる。住民票を地方に置くことで租税負担が減るなら、都市から地方に住民票を移して地方に納税する者が増え地方に定着する(Iターン)可能性もある。
考察2:二地域居住には「雇用側の意識、働かせ方」改革が必要
筆者が「出稼ぎ施設長」ができたのは、現地住居と交通費(ガソリン代)支給があり、何より裁量労働で自由な勤務日程が認められたことが最大の要素であり、月金週5日労働なら実現は不可能だった。
介護系管理職求人を見ると(訪問看護を含め)同じ求人が出続けている。有能な管理職や専門職・技能職を求めるなら硬直した「月金週5日労働」や「副業禁止」にこだわらず、ミッションを明確にし働き方の自由度を実現すべき、従来型雇用とジョブ型雇用の良いとこ取りが必要だ。
既存の雇用体制でも出張扱いや欠勤控除等により「働き方改革」は可能であり、雇用主の意識改革が働き方改革と二地域居住を促進する。自治体は事業者へのインセンティブを考えるべき、特に人材不足の介護サービスは管理者要件(常勤専従)の緩和も必要だ。