年末年始に2回のシステム障害を起こし、2022年2月にも新たな障害が発生したみずほ銀行。2021年に相次いだトラブルは、まだ収束する兆しが見えない。1月、みずほ銀行は金融庁に業務改善計画を提出した。どのような内容なのだろうか。

昨年から相次ぐシステム障害

みずほ銀行では2021年2月から年末年始にかけ、合計10回のシステム障害が発生し、ATMの稼働や振込などに影響が出た。9月に8回目の障害が起きた後、金融庁は一連のトラブルを重く受け止め、みずほフィナンシャルグループとみずほ銀行に対して業務改善命令を出している。

顧客の大切なお金を預かり、使いたい時に引き出せる仕組みを提供するのは、銀行の重要な役割の一つであり、かつ最も基本的なサービスといえる。この重要かつ基本的な部分でトラブルが頻発していることで、ネットでは厳しい批判の声が上がっている。

Twitterで「みずほ トラブル」と検索すると、「トラブル多すぎ」「障害は大きな問題だけど、みずほ銀行に関してはもう驚かなくなった」「もう恒例行事みたいなもの」といったツイートが見つかる。

今後もシステム障害が続けば、みずほ銀行への信頼度はさらに落ちていく。その意味で1月に金融庁に提出した業務改善計画は、みずほ銀行にとって非常に重要だ。計画を実践することで、この問題に終止符を打てるかどうかに注目したい。

業務改善計画の中身を読み解く

業務改善計画の中身を見てみよう。提出された書類は全15ページで、「多層的な障害対応力の向上」「経営管理面での対応高度化」「真因を踏まえた人と組織の持続的強化」という3つのテーマで構成されている。

ちなみに全文は以下のページから閲覧できる。業務改善計画の中で示された対策の中にはすでに実施されているものもあるが、提出書類ではすでに実施済みの対策とこれから実施する対策が書かれているので、この記事でも両方を紹介する。

▼株式会社みずほ銀行の業務改善計画(PDF/221KB)
https://www.mizuho-fg.co.jp/release/pdf/20220117release_jp_1.pdf

多層的な障害対応力の向上

「多層的な障害対応力の向上」では、システム障害を事前に防ぐための点検・対応の項目として、重大な障害につながるエラーの波及影響と対策の確認や、システムの安定稼働に必要なメンテナンス内容の点検などを挙げている。

設備・機器に関しては、保守期限内に更改すべき機器の明確化や保守期限の超過がないかの点検などを挙げ、バグ情報についての分析に臨むことについても明言している。

人材面の強化も掲げている。保守・運用に詳しい人物を適正なポジションに相当数配置し、システムの安定的な稼働が促されるようにするという。

経営管理面での対応高度化

「経営管理面での対応高度化」では、現場の実態に対する把握を強化した上で、経営戦略・経営資源配分の機動的な見直しを行うと説明している。

また、経営戦略などを現場の人員と積極的に共有することも掲げている。実際の文言は、以下のとおりだ。

「トップからの直接のメッセージ発信や説明機会、各部門UGでのきめ細かい説明の場など、様々なレイヤーから同一または異なるレイヤーに対して、複線的に説明の場や機会を設定することで、戦略・施策の趣旨を共有するためのコミュニケーションを強化」

真因を踏まえた人と組織の持続的強化

「真因を踏まえた人と組織の持続的強化」では、まずシステムリスクの管理・対応に対する態勢の高度化を掲げている。広い視野を持つ専門人材を積極的に活用し、「人と組織態勢を全社的に強化」するという。

社員の専門性を高める取り組みも進める。この点については、2022年3月までに枠組みを構築し、4月から本格的に取り組みを開始するという。組織マネジメントのために、外部人材を採用することも業務改善計画に含めた。

この他、「お客さまの声、営業現場の声を継続的に取り入れるための枠組みを構築する」と明記しており、企業風土の変革に向けては「社員が自由に行動・発言できる環境や雰囲気の醸成」に努めていくという。

あらゆる面からアプローチ

みずほ銀行の業務改善計画を読むと、単にシステムに関することが書かれているわけではなく、システム障害をなくすためには、人材・企業文化・経営戦略などあらゆる面からのアプローチが必要であると認識していることがわかる。

この業務改善計画を1月17日に金融庁に提出した後も、2月11日にシステム障害を起こしているが、計画が徐々に遂行されれば障害発生の頻度が減り、いずれ他行と同水準までシステムの安定度を高められるかもしれない。

みずほ銀行がこれからの取り組みを通じて顧客からの信頼を取り戻せるか、引き続き注目したい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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