ブラック・フライデーにつきものとなったモールでの乱闘は現代アメリカ社会の縮図

いろいろデータを探していたら、なかなか興味深い分析をしているサイトに出くわしました。『The Hustle』という、アメリカの俗語では麻薬の密売とか、夜の世界でヒモになることとかを指す場合もある危ないサイト名を名乗っています。 ですが、分析の角度はおもしろくて、最近では「アメリカでは国民ばかりじゃなくて、クルマも体重過剰に苦しんでいるのではないか?」といった記事が投稿されています。 そのハッスルが、3年前の2019年11月23日、ブラック・フライデーを約1週間後に控えた時点で、かなり詳しいブラック・フライデー乱闘特集をやっています。 まず私が眼を奪われたのは、次の地図グラフでした。

巨大モール、アメリカン・ドリームが開業丸3年保たずにアメリカン・ナイトメア(悪夢)に(後編)
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

こう申し上げては失礼ですが、ブラック・フライデーでの乱闘事件が多い2大州の一角をノースカロライナ州が占めていたことは、それほど意外ではありませんでした。

経済的にかなりきびしい境遇にある人たちの多い州だからです。 しかし、もう1州がカリフォルニア州だったことには、ほんとうにびっくりしました。 人口が多いだけに、州内総生産では2位以下を大きく引き離して首位、州民1人当たり州内総生産でも、ニューヨーク、マサチューセッツ、ワシントンに次いで4番目という豊かな州なのです。 しかも、ほかの州ではブラック・フライデーの乱闘で亡くなった方はそれぞれひとりだけなのに、カルフォルニアには4人もいたのです。 つまり、これはたんなる貧困の問題ではないのです。

改めて身に染みるクルマ社会の怖さ

次の事件がどこで起きたかのグラフも、なかなか考えさせられる内容をふくんでいます。

巨大モール、アメリカン・ドリームが開業丸3年保たずにアメリカン・ナイトメア(悪夢)に(後編)
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

もちろん、件数がいちばん多いのは、直接お目当ての安売り商品を奪い合う店舗内です。次に多いのは、ほかの客より少しでも速く安売り商品に近づこうと押し合いへし合いになるドア周辺です。

でも死傷者全体に占める死亡率でも、犠牲者の数でも、いちばん多いのは駐車場と路上なのです。 駐車場が多いのは、警備も手薄なため、店舗内では一応収まっていた喧嘩が、ここでは銃やナイフを持ち出しての本格的な暴行事件になるからでしょう。 また、路上というのは、たまたま執念深い客が欲しがっていた商品を先に買ってしまったため、付け狙われて煽り運転や意図的な追突の犠牲になったり、それを避けるために無理な運転をしてほかの自動車との事故で亡くなったりということがあるのかもしれません。 とにかく、これだけ興奮しやすく、暴力に訴えがちな人々もまた、モールへの行き帰りにはクルマを運転しているのだと思うと、完全にクルマ社会化してしまったアメリカという国の怖さがしみじみわかります。