雪崩を打って縮小に転ずるモール多店舗展開型の小売りチェーン

たとえば、2020年の8月ごろには、以下の表に出てくるような小売りチェーンが続々と店舗数の削減を発表していました。

巨大モール、アメリカン・ドリームが開業丸3年保たずにアメリカン・ナイトメア(悪夢)に(後編)
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

これだけ店舗数を削減しても、業績はあまり向上せず、2021年の4月初旬までに以下のような追加的な店舗数削減計画が発表されています。

巨大モール、アメリカン・ドリームが開業丸3年保たずにアメリカン・ナイトメア(悪夢)に(後編)
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

そもそも、我が世の春を謳歌していたころの巨大モールに出店していた企業群は、そうとう悪辣なことをやっていました。

たとえば、上の2枚の表には顔を出すことさえなくなってしまったほど発祥の地、アメリカ国内で影が薄くなったトイザらスというおもちゃの巨大チェーンがありました。 どこにでも初めて進出したころは、ほんとうに割安で手広くおもちゃを提供していました。 ですが、地場のおもちゃ屋さんが商売にならずに店仕舞いしてしまうと、途端に労賃の低い国からの安物を輸入してきて、品質から見ればちっとも割安ではないけれども地域にほかのおもちゃ屋がないのでここで買うしかないという商売をやっていました。 こういう企業が、ネットで安く確実に量産品を買えるようになれば没落していくのは当たり前です。 アメリカではほとんど店がなくなってしまったトイザらスですが、日本では地場のおもちゃ屋さんが頑張って商売を続けているので、あまり手抜き商品を売ることもできずに堅実経営をしてきましたので、今でもこの業界では最大級の小売業者として存続しています。 モールが「綺麗にラッピングされた郊外の夢」と言えるほど輝かしいものだった時代は、ほんとうにあったのでしょうか。

なぜか暴力衝動と縁が切れなかった、アメリカの郊外型巨大モール

どう考えても、モールがきらびやかな世界だったこともあるというのは、追憶による美化がかなり混じった評価だと思います。 現実の郊外型モールは、まだアメリカ社会全体は今ほどすさんでいなかった時代でさえ、むき出しの暴力が噴出する世界でした。 まず、比較的最近、2018年のブラック・フライデーのモールでの乱闘場面からご覧いただきましょう。

巨大モール、アメリカン・ドリームが開業丸3年保たずにアメリカン・ナイトメア(悪夢)に(後編)
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

以前にもお伝えしたことがありますが、ブラック・フライデーとは毎年11月の第4木曜日と決まっている感謝祭(Thanksgiving Day)の翌日に当たる金曜日のことです。

「黒山の人だかりができるからブラックだ」という説と、「年初からこのころまで赤字だった店でも、この日から黒字に転換するからブラックだ」という説があります。 ですが、この写真を見るそんな華やいだ気分とは縁遠い、殺伐とした安売り商品の奪い合いの日だとわかります。 次は、もっと古い2013年の、やはりブラック・フライデーの乱闘風景です。

巨大モール、アメリカン・ドリームが開業丸3年保たずにアメリカン・ナイトメア(悪夢)に(後編)
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

この写真が撮影された年が、ちょうどホリデーシーズンのモールへの来場者数が丸3年で半減した2013年なのは、たんなる偶然でしょうか。 私はそうではないと思います。 せっかくの祝日に「何かいいものを安く売っていたら、買おうかな」といった気分で来店した人たちの祝祭気分がぶち壊されるだけではなく、深い幻滅を味わって「二度とあんなところに行くものか」と思って足が遠のく傾向がじわじわ積み重なったのではないでしょうか。 その結果、3年間で来場者数が半減してしまうほどモールが不人気になったと考えるほうが自然だと思います。