(4)宇宙ビジネス業界マップ「宇宙利用」と注目企業
続いて”宇宙利用編”として宇宙をどのようにビジネスに利用しているかを紹介します。宇宙利用について大きく2つのカテゴリーに分けました。
「人工衛星を利用」して地球での生活に活かすビジネスと、地球上ではできないことができる「宇宙空間を利用」したビジネスです。
前回作成した利用マップに比べて、かなり多くの業種を追加しました。宇宙を利用したサービスは多岐に渡り、これ以外にもまだ開拓されていない事業への利用の可能性があります。

Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)
人工衛星の利用①「高精度な位置情報を検出する」

Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)
人工衛星を使い位置情報を調べるシステムは測位衛星システム(GNSS)として、アメリカのGPSほかに、ロシアのGLONASS、ヨーロッパのGalileo、中国のBeiDou(北斗)、インドのIRNSSなど、各国でインフラとして整備が進んでいます。日本でも現在、準天頂衛星「みちびき」を4機まで打ち上げ、独自の衛星測位サービスが始まっており、2023年度に7機体制になる予定です。
車の自動走行や測量など多くの分野での応用の可能性を秘めており、国内外でビジネス参入が期待されている分野です。
自動走行
機械の位置を監視し、農機、建機などの自動走行を支援します。
<代表的な企業>
Caterpillar、小松製作所、クボタ、ヤンマー、日立造船、マゼランシステムズ
航海支援
船舶などの様子を監視し、効率的な航行を支援します。
<代表的な企業>
Spire、ExactEarth、Forecast Ocean Plus
ナビゲーション
スマートフォンアプリやカーナビなど、位置情報を元にしたサービスを提供します。
<代表的な企業>
Google、各自動車製造メーカー、ヤマップ
郵便
住所がなくても、位置情報を把握することで荷物を届けることができるサービスを提供します。
<代表的な企業>
Ukowapi、OkHi、what3words
宅配
配達の状況をリアルタイムで把握したり、希望の位置に荷物を運ぶサービスを提供します。
<代表的な企業>
Uber、ヤマト運輸、Amazon、ドミノ・ピザ
マーケティング
実店舗の近くを通る際にクーポンや通知を配信するサービスを提供します。
<代表的な企業>
Snap(Snapchat)、Evernote(Anchornote)、Express Checkout(CardStar)、日本航空(JALカードアプリ)、青山トレーディング(洋服の青山)、リクルートライフスタイル(じゃらん)
物流・運行効率化
乗り物の位置を把握して、利用者への配車・運行・物流の効率化を図ります。
<代表的な企業>
Uber、Grab、Cotral、LINE、日交サービス(日本交通)
ゲーム
ポケモンGOやイングレスなど、位置情報をゲームに利用します。
<代表的な企業>
Niantic、コロプラ、Garmin
圏外での位置情報
山岳地帯など電波が届かない場所でも自分の位置を把握するサービスを提供します。
<代表的な企業>
Garmin
人工衛星の利用②「地球を広範囲に調べる」

Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)
リモートセンシング(リモセン)
航空機や最近はドローンなどを使って遠隔操作で対象を調べる技術を、人工衛星を使って行うことで、より広範囲に地上だけでなく、海洋や大気など多くの現象を調べることができます。地球環境のメカニズムの解明を主な役割として利用されていますが、徐々に衛星データの解析からわかるデータが多くの分野へ活用され始めています。
解析結果提供
取得したデータを解析して、様々なドメインの企業に提供します。
<代表的な企業>
Orbital Insight、CapeAnalytics、Descartes Labs、SpaceKnow、TellusLabs、Ursa Space Systems、Rezatec、RS Metrics、Bird.i、ESRI、RESTEC、PASCO、天地人
森林監視・管理
森林の温度や地形を把握することで、火災の監視や違法伐採の監視、植林地選定に活かします。
<代表的な企業>
Rezatec、住友林業
農作物の生育予測
農作物の生育状況を把握し、営農計画を効率的に行います。
<代表的な企業>
Planet、FarmShots、Dacom、Satellogic、Astro Digital、Monsanto、eLEAF、珈和科技 (JiaHe Info、ジアホー・インフォ)、日立ソリューションズ、ビジョンテック、ファームシップ、アットビジョン、青森産業技術センター
魚群探査・養殖監視
海水温やプランクトンの発生を監視し、魚群の位置や養殖の様子を予測・把握します。
<代表的な企業>
Raymarine、Digital Globe 、漁業情報サービスセンター、ウミトロン
インフラ監視
土木建築の劣化や漏水検知など、インフラの状態を監視します。
<代表的な企業>
BlackSky Global、UTILIS、Building Radar、伊藤忠テクノソリューションズ
保険
気候予測から影響の大きい農地に対し条件に応じて保険額を決定、災害の被害状況を衛星データから把握して保険金支払いを迅速化するなど、保険額の支払いに活かすサービスを提供します。
<代表的な企業>
SOMPOホールディングス、三菱総合研究所、東京海上日動火災保険
株価予測
人工衛星で観測できる光量などの情報から企業の売上状況の予測に活かします。
<代表的な企業>
The Goldman Sachs Group、Orbital Insight
建設・不動産
建設予定地や空き家の状況をいち早く把握して見立てに活かします。
<代表的な企業>
Bird.i、Orbital Insight、Building Radar
紫外線・大気汚染情報
紫外線の強さ・大気汚染情報を伝えるサービスを提供します。
<代表的な企業>
Plumelabs、Pola
資産調査
土地の肥沃度や石油残量を予測することで、ファイナンスの審査用のデータとして利用します。
<代表的な企業>
AGRIBUDDY、URSA
地形把握
地形を把握し、正確な地図の作成や植生の分布のモニタリングなどを行います。
<代表的な企業>
UrtheCast、ゼンリン、arbonaut、AABSyS、日立ソリューションズ、宇部興産コンサルタント、アドイン研究所、パスコ
疫病監視
地上データと組み合わせて、蚊の発生箇所を予測して疫病の感染を監視します。
<代表的な企業>
Dipteron
天気予報
雲の動きや降水量、地形情報などから天気予報、大雨被害予測などに活かします。
<代表的な企業>
GeoOptics、Spire、PlanetOS、Tempus Global Data、IBM、ウェザーマップ、ウェザーニュース
気候変動監視
気候の変動や環境を監視し、温暖化や海洋の状況把握に役立てます。
<代表的な企業>
EUROSENSE、BlackBridge、Bird.i、RESTEC、三洋テクノマリン、沿岸海洋調査
防災・防衛
観測データから地上の様子を把握し、防災・防衛に役立てます。
<代表的な企業>
DigitalGlobe、Quadra Pi R2E、パスコ、アジア航測
人工衛星の利用③「時と場所を選ばずに通信を行う」

Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)
船舶監視
船舶や航空機から発信される電波を観測して、位置監視を行います。
<代表的な企業>
HawkEye、Kleos Space S.A.
IoT活用
衛星通信を利用したIoTネットワークを提供します。
<代表的な企業>
Kepler、Hiber、Sky and Space Global、Astrocast、Chipsafer、fleet
移動通信
走行中の車や飛行機など、移動中にも大容量の通信サービスを提供します。
<代表的な企業>
JAL、Kymeta、トヨタ自動車
宇宙空間の利用①「地球とは異なる環境下でモノを作る」

Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)
宇宙太陽光発電
雲に邪魔されることのない宇宙空間で太陽の光を受け、発電したエネルギーを地球に伝送します。
<代表的な企業>
清水建設、日本電気硝子
バイオテクノロジー
地球上では実現できない環境を提供します。また、その環境を使って新たな薬や技術の開発を行います。
<代表的な企業>
Space Tango、ペプチドリーム、中外製薬
宇宙空間の利用②「地球にない資源を獲得する」

Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)
資源探査
化石燃料などの地球上では限りがある資源を、外部天体から獲得することを目指します。
<代表的な企業>
Planetary Resources、Deep Space Industries、iSpace
宇宙空間の利用③「地球でできない体験をする」

Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)
宇宙葬
故人の遺灰の一部をロケットで打ち上げ、宇宙空間や月面に送るサービスを提供します。
<代表的な企業
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Elysium Space
エンターテイメント
人工流れ星や宇宙遊泳模擬体験など、宇宙空間の特性を活かしたサービスを提供します。
<代表的な企業>
Blue Abyss、ALE、オスカー
拡大が進む宇宙利用(宇宙利用編まとめ)
宇宙を利用したビジネスの例を紹介してきましたが、宇宙利用のすべてを網羅できているわけではありません。また、宇宙分野への民間参入は始まったばかりであり、宇宙を使うからこそできることはまだまだ可能性に満ちているはずです。今後、宇宙をビジネスの手段として利用することが当たり前になる社会になることで、地球で生きる私たちの生活も豊かになっていくに違いないと考えられます。
また、課題という観点から利用事例をまとめたものがこちらです。
通常時と発災時に分けて書いてありますので、余白部分に他にもこのようなユースケースが考えられるのではないか?というものを書き込んでみてください。

