Q9. でも今回はまだ極端な円売りは起きてませんね?
短期的にはウクライナ危機の影響で株価が下がり、相対的に安全な国債が買われているようですが、長い目でみるとアメリカの1月の消費者物価指数が7.5%、日本の企業物価指数も8.6%という異常な伸びになる中で、世界の金利が上がることは避けられません。
FRBは3月にも政策金利を0.5%に上げるといわれています。長期金利はすでに2%を超えたので、日銀が長期金利を0.25%でおさえると日米の金利差が大きくなり、円安になるでしょう。金利の安い円を借りて高いドル資産を買う流れが強まるからです。
Q10. インフレは日銀の黒田総裁の目標じゃないんですか?
黒田さんの考えていたのは、日銀がお金をたくさん供給したら国民の「インフレ期待」が高まって物価が上がり、円安で輸出が増えて景気がよくなるというシナリオでしたが、インフレ期待は起こらなかった。2%のインフレ目標を知っている人は国民の2割しかいないからです。
円安になっても、輸出は増えません。去年は貿易赤字(輸入が輸出より多い)でした。日本の大企業は、海外生産して海外で売るようになったからです。かつては輸出企業が円安を歓迎したのですが、今はそういう声はほとんど聞かれません。
Q11. これから「悪い円安」になるんでしょうか?
少なくとも今年いっぱいは、円安の流れは変わらないでしょう。今は1ドル=116円前後ですが、120円を超えると思います。原油や天然ガスなどの資源価格も上がり、4月から多くの値上げが予定されているので、インフレ率は2%を超えるでしょう。
でも日銀は金利を上げられません。銀行は今まで黒田さんの買い支えを信じて国債を大量に買ってきたので、その期待を裏切るとパニックになって国債が売られ、バブルが崩壊して信用不安が起こるからです。インフレ率が2%を超えても、黒田さんは「一時的な現象だ」といって金利を上げないでしょう。
しかし7月に参議院選挙をひかえた岸田政権が、政治的に危険なインフレを放置するとは思えないので、利上げ圧力が首相官邸から強まるでしょう。あとは政治の問題ですが、はっきりしているのは、インフレを止める手段は日銀がもっているということです。インフレが急激に加速すると、最後の手段としては総裁更迭もあるかもしれません。
文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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