(4)オープンデータのデータセットまとめ
では、いよいよ世の中にどのようなオープンデータがあるのかについて、本章で紹介します。
本記事ではオープンデータをその出所を基準に以下3つに分類し紹介します。
①国内外の国家機関・国際機関発のオープンデータ
②地方自治体発のオープンデータ(日本のみ)
③民間企業発のオープンデータ
①国内外の国家機関・世界機関発のオープンデータ
■国(主に日本政府)が主導して提供するオープンデータ
まず、日本のオープンデータは「データカタログサイト」というポータルサイトに各省庁の出すデータがまとめられており、「e-Stat」には政府統計情報がまとめられています。また、2022年1月11には、総務省がデータサイエンスのオンライン講座「誰でも使える統計オープンデータ」を開講し、オープンデータに今後も力を入れていく姿勢が見受けられます。
本記事では、数多あるオープンデータのなかでも、よく利用されているだろうオープンデータを紹介します。
・国勢調査
国勢調査は、年齢別の人口、家族構成、働いている人や日本に住んでいる外国人などのオープンデータを確認できます。国勢調査は5年ごとに実施されています。
・気象データ
その名の通り、日本全国の過去の気象データがオープンデータとして公開されています。特定地点の特定時期の気象を知りたい、使いたいというときに利用できます。
・農林水産省統計表
日本の農林水産業の各分野の主要な統計について、農林水産省の統計調査結果を主体に他府省、各種団体などの統計調査結果をまとめて確認できるオープンデータです。
農家数及び世帯員数や就労形態、収入状況、耕地面積など、一次産業における様々なデータを閲覧したい場合はぜひここからデータをご確認ください。
・犯罪発生情報
全国の都道府県警察が出しているもので、犯罪が発生した場所と犯罪の概要が確認できるオープンデータです。
オープンデータ活用事例でも住みやすさの評価などに利用されているほか、犯罪発生予測によるパトロール強化地域のレコメンドに利用されています。
・歩行空間ネットワーク
データカタログサイトで最もアクセスが多いオープンデータが「歩行空間ネットワーク」です。
特定地域の段差がある場所や幅員などのバリアフリーに関連する情報がオープンデータとして公開されており、歩行者の利便性向上に使用されています。
・衛星データ
衛星データも現在は一般の人が無料で使用できる形で公開されているものがあります。
ただし、一部データ(landsatなど)を除いて有償利用については許諾が必要なものが多いため、オープンデータの定義からは外れますが、無償での利用においてはある程度の自由度があるため、ぜひ本記事で他のオープンデータと組み合わせて触ってみてください。
衛星データを閲覧したい場合は衛星データプラットフォーム「Tellus」「Google Earth Engine」「EO Browser」をご覧ください。
・PLATEAU
PLATEAUは、国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化のプロジェクトです。日本の都市をオープンデータとして公開することで個人や企業、自治体が自由に利用し、様々なユースケースを見つけていくことが狙いで、2021年9月時点では、24都道府県の複数都市のデータが公開されています。
・国外のデータポータル
これまで主に日本のオープンデータを紹介しましたが、もちろん日本以外の各国も様々なオープンデータを提供しています。本記事ではアメリカとEUのオープンデータポータルとアジア開発銀行のデータライブラリを紹介します。
■世界機関が提供するオープンデータ
国際連合や世界機関が出しているデータについては、「総務省統計局」のサイトを見るとまとめられています。そのなかからいくつか興味深いものを厳選して紹介します。
・国際連合の人口・人口動態データ
国際連合では「人口統計年鑑システム」「人口・人口動態報告」「世界の推計人口」と様々な世界の人口に関するデータが公開されています。
・国連食糧農業機関(FAO)の出すオープンデータ
FAOでは全世界の「世界森林資源評価」「農作物・畜産に関する統計」「漁業・養殖業統計」のオープンデータが公開されています。国別の生産量も確認できるため、テーブルデータの可視化を切り口を変えて見せるだけでも興味深い示唆が得られそうです。
・貿易統計データベース(Comtrade Database)
1962年から現在まで、国連加盟約200の国や地域の統計機関によって報告された輸出入統計のオープンデータです。
サイトを見るとすでにデータを用いたビジュアライゼーションの一例も公開されており、世界の貿易状況を知ることができます。
・世界銀行
世界銀行は業務の透明性と説明責任を向上するため、「オープンな開発」を推進し、実際にこれまで積み上げてきた約8000の開発指標や1万件以上の調査研究等を無料公開しています。
その分野も「貧困」「経済」「環境」「教育」「保健」「ジェンダー」「気候変動」と幅広く、一見の価値ありです。日本語のサイトもありますので、まずはこちらからご覧いただいてもよいかもしれません。
・ユニセフ
全世界の子供に関するデータをユニセフでは公開されています。子供の死亡率や栄養失調など、日本にいるだけでは触れることがないだろう世界の状況を知ることができます。
②地方自治体発のオープンデータ(日本のみ)
次は「【事例付き】ビッグデータ時代に持つべき”データ活用に必要な視点”とは オープンデータ伝道師インタビュー」でも紹介した消火栓のオープンデータのように地方自治体が出しているオープンデータを紹介します。
■推奨データセット
地方自治体のオープンデータには、「推奨オープンデータ」という政府として公開を推奨するデータと、データ作成にあたって準拠すべきルールやフォーマット等を取りまとめたものがあります。
まず、データセットとして推奨されているのは以下のデータ群で基本編と応用編と別れており、それぞれ以下のような説明がされています。
■基本編(オープンデータに取り組み始める地方公共団体向け)
推奨データセットの対象データの中でも、特にオープンデータに取り組み始める地方公共団体の参考となるようなデータを基本編として位置付けています。
■応用編(地方公共団体・民間事業者向け)
推奨データセットの対象データの中で、基本編以外のデータを応用編として位置付けています。応用編では、地方公共団体に限らず、民間事業者の保有するデータについても対象としています。

AED設置箇所一覧はオープンデータ活用事例でも紹介した「coide 119」で活用されていましたが、その他のデータもオープンデータ化することでどのようなサービスに取り込まれるのかについての資料も以下のようにまとまっています。

ご覧いただくと分かる通り、様々な著名サービスに地方自治体のオープンデータが取り込まれていることが分かります。
実際に推奨データセットがあるか否かは、各地方自治体のHPを訪れて確認してみましょう。
■ユニークなデータセット
続いて、地方自治体のオープンデータとして、推奨データセットには入っていないものの、ユニークなオープンデータを紹介します。
※何をもってユニークかについては宙畑編集部の主観になります
・さばえ検定100門
鯖江市に関する検定で出題された問題、選択肢、回答のオープンデータです。このように問題がオープンデータとなることで様々なジャンルのクイズアプリを簡易に作れる可能性があります。
・ダム貯水量
ダムのある各地方自治体はダムの貯水量データをオープンデータ化しており、福岡市ではリアルタイムに確認することができます。
気象情報や衛星データと組み合わせることで災害対策やその他ダムが必要なスポット、不必要なスポットの選別ができるようになるかもしれません。
・魚群速報
地方自治体によってデータを公開する頻度や内容は異なりますが、水産資源管理のため、沿岸部の魚群情報を記録して公開する地方自治体があります。
衛星データと重ね合わせることで海釣りの際の漁場ポイント最適化の精度アップにつながるかもしれません。
・自治体が所有する車両(バス、ゴミ収集車、除雪車)のドライブレコーダー
これはまだオープンになっておらず、実証実験として利用されている事例がほとんどですが、自治体が所有する車両のドライブレコーダーのデータがオープンになると様々なサービスへの活用が考えられます。
例えば、毎日同じ道を通るバスのドライブレコーダーがあれば道路の変化や危険運転の多い道路の発見にもつながるかもしれません。
より街の状況を把握できる自治体所有車両のドライブレコーダーのデータは自治体にとって貴重な資源です。
③民間企業発のオープンデータ
地方自治体でも国主導でも世界機関主導でもなく、民間企業がオープンにしているデータがあります。
「【事例付き】ビッグデータ時代に持つべき”データ活用に必要な視点”とは オープンデータ伝道師インタビュー」でもコンビニのデータがオープンデータとして公開されるとより地図アプリの機能がアップデートされるだろうという話がありましたが、現時点では例えば「Twitter」「Instagram」といったSNSサービスはAPIを提供しており、様々なサービスですでに利用されている他、民泊サービス「Airbnb」は非商用のものではありますが「Inside Airbnb」というサービス名でAirbnbの利用状況をオープンデータ化して提供しています。
最近は「常識の範囲でご自由にお使いください」というただし書き付ではありますが、スタジオジブリが過去のアニメ作品の作中カット画像の無料提供を開始しました。今後ますますの民間企業のオープンデータ推進が期待されます。
また、本記事では紹介できておりませんが、「オープンストリートマップ」のように国家や地方自治体、民間企業主導ではなく、一般の力を合わせてひとつのオープンデータを作り上げるプロジェクトも存在します。ぜひ様々なオープンデータを探して、触れてみてください。
(5)まとめ
以上、本記事では、衛星データプラットフォーム「Tellus」の公式メディア宙畑がオープンデータの理解を深めるため、オープンデータの活用事例から現時点で公開されているオープンデータセットまで調査を行い、面白いと思ったものを紹介しました。
調査をしてみて、オープンデータの活用事例はひとつのデータでサービス化まで至れることは少ないように感じました。衛星データも、宇宙から取得できるデータということでそのデータ一つで素敵なことが可能になるという印象を持たれやすいデータですが、衛星データの価値はその他のデータや実際の現場の経験と掛け合わせることで本当にその価値を発揮します。
ぜひ衛星データと今回紹介したオープンデータを組み合わせることで何か新しいサービスが生まれないか読者の方が考えていただけたら幸いです。
また、本記事について、事例にしても、データセットにしても、私たちが紹介したのはオープンデータの世界のほんの一部です。ぜひ本記事をきっかけにオープンデータを見て、触って、今回紹介した以外のオープンデータについても調べ、実際のビジネスやご自身の生活に活用されてみてください。今後も調べを進めていく中で、本記事に活用事例やデータセットを追記していく予定です。
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提供元・宙畑
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