「【事例付き】ビッグデータ時代に持つべき”データ活用に必要な視点”とは」にて、オープンデータの今とこれからをオープンデータ伝道師の福野さんにインタビューした内容を掲載しました。

本記事では、オープンデータについてさらに調査を進め、どのような活用事例があるのか、また、世の中にどのようなオープンデータがあるのかをまとめました。

無料のオープンデータがビジネスをアップデートする、その面白さをご紹介できればと思います。

(1)オープンデータとは

まず、本題に入る前にオープンデータとは何かという定義から紹介します。

「OPEN DATA HANDBOOK」を見ると、オープンデータとは、「自由に使えて再利用もでき、かつ誰でも再配布できるようなデータのこと」とあります。また、オープンデータとして「利用できる、そしてアクセスできる」「再利用と再配布ができる」「誰でも使える」の3つが特に重要であると述べられています。

つまり、オープンデータとして公開されているものは、誰もが自由なアイデアをもって利用でき、付加価値をつけることでサービスやビジネスを始められるとも言えます。
※オープンデータを扱うにあたっていくつかルールもあるため、詳しくは第3章で解説します

では、2009年にアメリカとイギリスで始まったと言われるオープンデータを活用した事例は現在どのようなものがあるのか。次章では宙畑が100以上の事例を見て、他の業界でも応用できる可能性がある、もしくは、ビジネスとして面白いと思ったものを厳選して紹介します。

(2)100以上もの事例から宙畑編集部が厳選!オープンデータ活用事例26

オープンデータ活用事例を紹介するにあたって、本記事では活用事例を以下の4つのグループに分類しています。

1.オープンデータを基盤に新規サービス創出(新価値創造型)
2.既存サービスにオープンデータをプラス(ビジネスアップデート型)
3.地域観光・地域行政を変えるオープンデータ活用事例
4.宙畑レコメンド! ユニークなオープンデータ活用事例

それではさっそく事例を見ていきましょう。

■オープンデータを基盤に新規サービス創出(新価値創造型)

①新型コロナダッシュボード

タイトルの通り、日本国内の新型コロナウイルスの感染者数、病床数とその使用率を47都道府県ごとに一覧で確認できるダッシュボードです。

各地方自治体が出している新型コロナに関するデータを元に作成されています。

このダッシュボードを作成している福野さんにインタビューを行っていますのでこちらもぜひご覧ください。

②Beyond Floods

アメリカで展開されているWebアプリで、アメリカの95%の住民が自分が住んでいる場所の洪水リスクを把握することができます。リスクの判定には米国勢調査局、ニューヨーク市情報技術局、米海洋大気庁などが提供する標高データ、過去の洪水被害に関するオープンデータが使われています。

また、このデータは保険料の推定にも利用されているようです。

③Viomedo(臨床試験マッチング)

ドイツの臨床試験登録台帳オープンデータを利用した臨床試験と臨床試験の条件に合う患者とをマッチングさせるプラットフォームです。

新しい治療方法や新薬の開発にあたって、臨床試験の必要がある一方で、臨床試験に必要な患者が見つからずに進捗が悪くなるという課題があり、本サービスが生まれました。

患者にとっても自身の抱える病気をいち早く直せるかもしれないというニーズをかなえられる、まさにWin-Winのサービスと言えます。

利用しているデータはシンプルで、患者が臨床試験を見つけやすいように情報を整理したことでサービスに昇華した、というまさにオープンデータの活用事例としては理想形のひとつでしょう。

④Spotify

多くの人がその名前を聞いたことがあるであろう音楽ストリーミングサービス「Spotify」も実はオープンデータが利用されています。

Spotifyの音楽に関するメタデータ(アーティスト名、タイトル、言語、日付、国、バーコード、フォーマットなど)はオープンデータで、MusicBrainz提供のものが使用されています。

MusicBrainzは、音楽作品のウィキペディアのようなもので、有志で音楽作品のメタデータが投稿されて公開されています。

⑤Fooducate(食品の栄養価を評価)

米国労働統計局、食品栄養サービス(MyPyramid Food Raw Data、Food-a-pedia)が提供する食品の総カロリー、食べ物と飲み物のカロリー含有量などのオープンデータを利用したスマートフォンアプリで、食品のバーコードをスキャンするだけで含まれている栄養価を調べることができます。

また、栄養価を調べた上で、その商品よりも栄養価が高い代替品がある場合それをレコメンドしたり、また、目標を設定して摂取カロリーと体重をウォッチする機能もついているようです。

⑥カーリル

各自治体の持つ図書館蔵書データベースを束ねることで、全国6,000以上の図書館の蔵書情報と貸出状況を簡単に検索が可能になったサービスです。

利用者は本のタイトルを入力すれば、現在地から近い図書館の蔵書・貸出状況を確認することができ、Amazon等の書誌データベースと連携しているため、すぐに欲しい場合は購入もしやすく導線が設計されています。

この事例も地方に点在していたオープンデータを一か所に集めて検索ができるように整理することでひとつのサービスが出来上がったというオープンデータ活用事例の理想形と言えます。

⑦Young Europeans

ヨーロッパの家族、仕事、自由時間、勉強、インターネットに関する統計データを用いて、16 歳から 29 歳の若者が、さまざまな指標で自分自身を EU の平均的な若者と比較できるサービスです。

日本でも他人と比較するというのは人気サービスでよく見られますが、ヨーロッパでも平均との比較というサービスが生まれているのは興味深いですね。

⑧全球変化検出サービス「GRASP EARTH」

全球変化検出サービス「GRASP EARTH」は、衛星データを用いて任意の場所の地理空間情報を「地球上のあらゆる地点で」「同品質のデータを」「時系列に」比較できるサービスです。GRASP EARTHを用いれば、2020年のコロナ下で世の中がどのように変化したのかを全球規模で確認することができます。

GRASP EARTHを開発したのは株式会社Ridge-iで、Ridge-i社は駐車場のシェアリングサービスを行っているakippa社、衛星データプラットフォーム「Tellus」の事業を行うさくらインターネットの3社で「駐車場スペースを衛星データで自動検出する共同研究開発」にも取り組んでいます。