会社員が老後に受け取る厚生年金の金額は標準報酬月額によって変動するため、年収が多い人ほど年金受給額も多くなる。最高額はどのくらいなのか、気になる人もいるだろう。今回は厚生年金の最高額をシミュレーションで算出し、受給できるのはどのような人なのかを解説する。
※シミュレーション結果はあくまで目安であり、将来の年金受給額を保障するものではありません。

厚生年金の最高受給額はどのくらい?

会社員が受給する厚生年金は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の合計だ。

この他に、条件に当てはまると「経過措置」や「加給年金」も受給できるが、今回は含まないものとする。

老齢基礎年金は40年間全て納付した場合で78万900円(2021年)である。老齢厚生年金は、厚生年金の加入月数と標準報酬月額、標準賞与額等によって決まる。

最高額を受給するには下記の条件が必要となる。
・厚生年金に40年間加入すること
・標準報酬月額・標準賞与額ともに最高水準であること

標準報酬月額は最高65万円、標準賞与額は最高150万円(年3回まで加算)で設定されている。

これ以上の給与を得たとしても、年金額は変わらない。よって老齢厚生年金の最高額を受給できるのは、(65万円×12)+(150万円×3)=1,230万円以上稼いでいる人となる。

1,230万円を12で割り、1ヵ月当たりの数値にしたのが平均標準報酬月額で、この場合は102万5,000円だ。

受給額の計算式は下記の通りだ。
・2003年3月以前:平均標準報酬月額×7.5/1,000×2003年3月以前の加入月数
・2003年4月以後:平均標準報酬額×5.769/1,000×2003年4月以後の加入月数

2003年3月以前の加入分が240ヵ月、2003年4月以後が240ヵ月だとすると、受給額は326万4,174円となる。老齢基礎年金との合計で、約404万円が受給できる計算だ。

最高額を受給できる人とは

算出した受給可能な最高額とは、厚生年金に最初に加入したときから、年収1,230万円以上を稼いでいる人が対象となる。新卒の20代の頃から高額な年収を稼ぐことが必要であり、若い頃から役員や経営者などとして活躍し、引退するまで高収入が続いた人が該当するだろう。現実的にこのような人はほとんど存在せず、いたとしてもごくわずかに限られる。大多数の人には、受給できる年金額ではない。

ただし、新卒でも1,000万円以上の給料を支給する企業もいくつか現れ始めている。将来は、400万円以上の年金を受給できる人も多少増えるのかもしれない。

厚生年金以外で資産形成をする方法

厚生年金だけで老後の生活を送ることは非常に困難なため、貯蓄や資産形成で対策をする必要がある。会社員も実践しやすい資産形成は、下記の2つの制度だ。

・つみたてNISA
・iDeCo

つみたてNISAは投資信託などの運用益が非課税になる制度で、毎年40万円ずつ積み立てができる。

iDeCoは個人型確定拠出年金で、こちらも運用益が非課税になるほか、掛金が税金控除の対象となり、掛金を受け取るときも退職所得控除が利用できる。

いずれも税制面で優遇されているため、会社員も積極的に活用していきたい。

年金受給額はあくまで参考程度

紹介したシミュレーションは、あくまで現在の厚生年金の制度を前提として行ったものだ。年金の計算の仕組みや使われる数値は少しずつ変更される。将来大きな制度変更が行われる可能性もゼロではないため、受給額はあくまで目安として捉えよう。

厚生年金だけでは老後の生活を支えるのは難しいため、資産形成などに取り組む、65歳以降も働く、老後の生活レベルを下げるなどの対策が必要となるだろう。

文・MONEY TIMES編集部

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