60歳以降も働き、給料と年金のダブルの収入で生活しようと思う人もいるだろう。しかし「在職老齢年金」という制度があり、給料が一定の金額になると、厚生年金の受給が減らされてしまう。この記事では、在職老齢年金によって受給が停止される条件を解説する。なお、2022年からは停止の基準が緩和される予定なので併せて説明しよう。

在職老齢年金制度とは

会社などに勤めながら老齢厚生年金を受け取る仕組みを、在職老齢年金制度と呼ぶ。年金の受給額は月給や賞与によって減額され、場合によっては全額停止となることもある。

在宅老齢年金制度で重要なキーワードは2つ。まず、「総報酬月額相当額」はボーナス込みの年収を12で割った額だ。

次に老齢厚生年金の「基本月額」とは、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額のことで、老齢基礎年金の部分は含まない。

総報酬月額相当額と老齢厚生年金額によって、年金が全部受給できるか減額されるかが決まる。

60~64歳の受給停止の条件

60代前半の人の場合、総報酬月額相当額と老齢厚生年金額の基本月額の合計が28万円になるまでは、年金の全額が支給される。

28万円を超えると、総報酬月額相当額と年金の月額によって、一部または全部の受給が停止 である。

やや複雑だが、具体的な条件と計算式は下記のとおりだ。

条件 年金の月額の計算式
1.総報酬月額相当額は47万円以下、
基本月額が28万円以下の場合
基本月額-(総報酬月額相当額+
基本月額-28万円)÷2
2.総報酬月額相当額は47万円以下、
基本月額が28万円を超える場合
基本月額-総報酬月額相当額÷2
3.総報酬月額相当額が47万円を超え、
基本月額が28万円以下の場合
基本月額-{(47万円+基本月額-28万円)÷
2+(総報酬月額相当額-47万円)}
4.総報酬月額相当額が47万円を超え、
基本月額が28万円を超える場合
基本月額-{47万円÷2+
(総報酬月額相当額-47万円)}

65歳以上の受給停止の条件

65歳以降の在職老齢年金の仕組みは、前述した60代前半の場合と比べるとシンプルだ。

1ヵ月当たりの老齢厚生年金の受給額と総報酬月額相当額の合計額について、47万円を超えるかどうかが基準となる。

47万円以下なら全額支給されるが、47万円を超えると、その一部または全額が支給停止 である。

基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合の年金受給額は、下記の計算式のとおり。

基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

例えば、基本月額が25万円で総報酬月額相当額が30万円の場合、25万-(25万+30万-47万)÷2 = 17万円となる。