スペースデブリの衝突事故
運用中の衛星にスペースデブリが衝突すると、衛星が損傷し、当たりどころによっては使用不能になります。これまでも、実際に運用中の衛星にスペースデブリが衝突する事故が複数起きています。2009年には、米国の通信衛星イリジウムにロシア衛星由来のデブリが衝突し、国を跨いでの衝突事故として話題になりました。観測されている以外にも、微小デブリの衝突が原因と見られている事故が起きています。
表1 主なデブリ衝突事例 (JAXA HPより抜粋)
年 | 事例 |
1996 | フランス軍事観測衛星CERISEにアリアンロケット破片が衝突、ブーム損傷。 |
2009 | 米国の通信衛星イリジウムに使用済みロシア衛星が衝突、大破。 |
2013 | エクアドル小型衛星NEE-01 Pegasoに旧ソ連ロケット破片衝突。高速回転し衛星通信途絶。 |
表2 微小デブリ衝突が疑われる主な事例(JAXA HPより抜粋)
年 | 事例 |
2006 | ロシア通信衛星Express-AM11故障。冷却液が噴出、衛星の 機能不全に。 |
2007 | 欧州気象衛星Meteosat-8不具合。軌道が突然変化し東西方向の位置制御スラスタ破損。 |
2013 | ロシア小型技術実証衛星BLITS故障。突然スピンレート及び高度が変化 |
※スピンレート:機体の回転数のこと。衛星は、姿勢を安定させるため回転している場合があります。
スペースデブリを取り巻く国際会議、ルール
国際連合宇宙平和利用委員会(United Nations Committee on the Peaceful Uses of Outer Space, UNCOPUOS)では、2007年にスペースデブリの発生を防止するための「スペースデブリ低減のためのガイドライン」を承認・提言しました。このガイドラインにをもとにして、国際連合宇宙局(United Nations Office for Outer Space Affairs, UNOOSA)が各国・国際的な法律整備について法務省委員会を作り、議論を進めています。
具体的な内容を以下にまとめています。
表:スペースデブリ低減のためのガイドラインサマリ
1 | 正常な運用中にスペースデブリを放出しない、または最小限にする |
2 | 運用フェーズでの破砕を避けるよう設計するか、不具合が起きてしまった場合には適切に廃棄・無害化の処置を行うことができるよう考慮する |
3 | 軌道設計時に、偶発的に軌道上で他物体と衝突する確率を最小限にするよう考慮する |
4 | 意図的に破壊活動を行ったり、その他の危険な活動を回避する |
5 | 残留燃料によるミッション終了後の破砕の可能性を最小にする |
6 | 低軌道領域を通る宇宙機やロケットはミッション終了後、軌道から除去または軌道に長期的に留まらないよう廃棄すること(25年以内に廃棄) |
7 | 静止軌道領域を通る宇宙機やロケットはミッション終了後、軌道から除去または軌道に長期的に留まらないよう廃棄すること(25年以内に廃棄) |
参考:unoosa.org/pdf/publications/st_space_49E.pdf
「スペースデブリ低減のためのガイドライン」は、国際連合平和利用委員会加盟国に対して最大限可能な範囲で自主的に対策を取ることを求めています。法律的な罰則規定などはまだありません。
ただし、この流れに呼応するように、ミッション終了後に速やかに軌道から廃棄(離脱)するための技術(Post Mission Disposal:PMD)を見据えた衛星開発を行う国、企業が出てきています。