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不動産投資の経費として認められるもの・認められないもの
【税金シミュレーション】経費の額でこれだけ課税額が違う!
不動産投資の経費として認められるもの・認められないもの
それでは、不動産投資ではどのような支出が経費として認められ、どのような支出が経費として認められないのでしょうか? その実例を見てみましょう。
経費として認められる13の費用
①旅費交通費
不動産を購入する、あるいは物件を管理するために電車やバス、自家用車を使って移動することもあるかと思います。公共交通機関の運賃や、自家用車のガソリン代や駐車場代、ホテルの宿泊費などは経費として計上できます。
もちろん、「不動産の下見に行く」「不動産会社に出かける」「所有している不動産を確認する」といったように、不動産投資に必要な分だけが経費となります。個人で旅行に行くための費用は経費とはなりません。
②自動車関連費用
自動車の維持費、具体的には車両の購入費やメンテナンス費用、自動車税や保険料なども経費として計上することができます。これも当然、不動産投資に必要な範囲に限定されます。買い物や子どもの送迎など、日常生活で自動車を使用する場合は経費に計上できません。
ちなみに、自家用車を不動産投資のために使う場合は「家事按分」をして、不動産投資に必要な分だけ経費として計上します。例えば、自動車の使用頻度が不動産投資で4割、日常生活で6割とするのであれば、4割の部分を経費として計上します。
③情報収集・勉強のための費用
情報収集や不動産投資の勉強のための費用も、経費に計上することができます。具体的には、新聞や書籍代、セミナー代、コンサルティング費用などです。ただし、資格取得費用は不動産関連のものであっても「個人のスキルを高める」という意味合いがあるため、経費としては認められないようです。当然、無関係な雑誌、漫画などの費用も経費として認められません。
④通信費
情報収集あるいは不動産会社や管理会社と連絡をするため、携帯電話やパソコンなどを使います。携帯電話やパソコンの購入代金、携帯電話の使用料、インターネットのプロバイダー費用、ソフトウェアやアプリの購入代金などは経費として計上できます。
携帯電話やパソコンを私用でも使っている場合は、自動車関連費用と同様に家事按分します。経費になるのは、不動産投資のために使った割合分のみです。
⑤減価償却費
不動産には法定耐用年数※が定められています。不動産を購入した場合は、かかった費用を法定耐用年数で割った金額を毎年経費として計上できます。
例えば、木造住宅の法定耐用年数は22年と定められているので、木造住宅(建物部分のみ)の減価償却費を算出するための計算式に当てはめて計算し、その金額を経費として22年間計上することが可能です。
※減価償却資産に法定上定められた使用可能な年数のこと。
⑥ローンの金利
不動産をローンで購入した場合、返済時の金利は経費として認められます。ただし、ローンの元金(不動産の購入費用)は、経費計上ができません。前述のとおり、不動産の購入費用は減価償却するからです。なお、経費計上ができるのは建物取得のための費用に対しての金利のみであり、土地取得に関わる費用に対しての金利は経費として計上できません。
⑦保険料
不動産を購入する際には火災保険や地震保険に加入することになりますが、そのような保険料も、経費となります。
⑧管理会社への委託料
不動産の管理を管理会社に委託するときに発生する委託料も、不動産投資で利益をあげるために必要な経費です。
⑨管理費
共用部分の清掃や各種設備の保守・点検などの「建物管理」にかかる費用のことを、管理費といいます。建物管理は専門知識やノウハウが必要な仕事なので、専門の会社に委託するのが一般的です。分譲タイプのマンション投資の場合、建物管理会社はすでに決まっているので、毎月、管理費から委託料として一定額をその会社に支払います。
⑩修繕費
建物のどこかが痛んだり設備が故障したりすれば、原則、大家さんの負担で修繕します。具体的には部屋のリフォーム費用、設備交換費用などが挙げられます。ただし、建物の性能を向上させるための費用は経費に含まれません。例えば、階段を修理した場合の費用は経費として認められますが、新たに階段を設置した場合は経費として認められません。なお、マンション投資の場合は、「修繕積立金」というお金を毎月拠出して、将来の修繕に備えることになります。
⑪税金
不動産を取得した際の印紙税や登録免許税、不動産取得税、あるいは毎年納める固定資産税や都市計画税も経費として認められます。前述のように、不動産投資に自家用車を使っている場合は自動車税や重量税なども経費として計上可能です。一方、所得税や住民税、法人税などは個人に対して課せられる税金なので、経費として認められません。
⑫司法書士や税理士への報酬
司法書士に登記を依頼したり、確定申告を税理士に依頼したりした際の報酬も、経費として認められます。
⑬交際費
不動産会社や管理会社の担当者と食事をした場合の飲食代も、経費として計上可能です。また、喫茶店で打ち合わせした場合のコーヒー代などは、「会議費」として計上できます。もちろん、個人で、あるいは家族、恋人、友人などと外食したケースは経費として認められません。日常の食費も不動産投資の経費ではないので、計上することは不可能です。
経費として認められない費用
①スーツ代
経費に認められると思われがちですが、不動産会社や管理会社の担当者との打合せ時に着用するものだとしても、スーツはあくまで「ファッションアイテム」です。プライベートでも使えるため、経費にはなりません。ビジネスバッグや腕時計なども同様です。
②ジムなどの会費
家族以外の従業員が会社を経営している場合は、「福利厚生費」という名目でスポーツジムなどの会費を経費に計上できる場合があります。しかし、個人事業主の場合は福利厚生費が認められていないので、経費に計上することはできません。
③反則金・罰金など
自動車関連費用は経費として認められますが、交通違反の反則金や罰金は経費として認められません。なお、レッカー代金などは経費として計上することができます。
経費になるか否かを見極めるポイント
何が経費になって何が経費にならないか、判断が難しいものは税理士や税務署に確認する必要があります。「不動産投資という事業に必要な費用」「利益をあげるために必要な費用」は経費として認められます。逆に「生活費やプライベートでの支出」は経費として認められないことを、念頭に置いておきましょう。
【税金シミュレーション】経費の額でこれだけ課税額が違う!
では、実際に経費によってどれだけ税金が違ってくるのでしょうか? 所得税は原則として「総合課税」の仕組みになっています。利子所得などは他の所得と合算せず、利子の額だけで税金を計算します。不動産投資によって得た所得(不動産所得)は、給与などの他の所得と合算し、それに対して税金を計算します。
所得税の金額は「(総収入-経費)×所得税率-控除額」という計算式で算出できます。家賃収入が諸経費よりも大きかった場合、すなわち利益が出た場合には、所得税が発生します。翌年、住民税も納付することになります。
所得税率と控除額は下表のとおりです。
※所得税率は国税庁のサイトでも、確認できます。
会社からの給料が500万円、不動産投資で400万円の収入を得ている人の総収入は900万円です。仮に経費を全く計上しなかった場合は所得が900万円ということになるので、「900万円×0.23-63万6千円」で、所得税の額は143万4千円となります。
経費を200万円計上した場合は、所得が700万円となるので、「700万円×0.23-63万6千円」で所得税の額は97万4千円となります。さらに経費を50万円計上すると、所得は650万円。「650万円×0.20-42万7500円」で所得税は87万2500円となります。
同じ総収入900万円でも、経費を計上するかしないかだけで、これほどまでに税額が変わるのです。さらに、所得税だけではなく住民税や健康保険料も確定申告で申告した所得に応じて額が変わるので、トータルで見ればさらに税金の額が大きく違ってきます。この後触れる確定申告の際には、必ず経費を抜け漏れなく計上しましょう。