感染拡大を続ける新型コロナウイルスは、東京の不動産市況にどのような影響を与えるのでしょうか?

この記事では、2020年6月22日に開催されたセミナー「明治大学名誉教授 市川宏雄氏 が登壇!コロナ禍が東京不動産市況に与える影響」の内容をご紹介します。

都市政策の第一人者である市川宏雄氏に「2020年以降の東京・大都市圏の人口動向と計画」や「新型コロナウイルスによる都心開発への影響」についてプロの目線から解説していただいておりますので、是非最後までご覧ください。

目次
ウィズ/ポスト・コロナの東京
ウィズ/ポスト・コロナの経済等への影響

ウィズ/ポスト・コロナの東京

ウィズ/ポスト・コロナで東京はどうなるかは、新型コロナウイルスが今後どうなっていくのかを考える必要があります。

今回は、来年の夏には落ち着いているということを前提として、これからについてお話しします。

具体的には、冬が明けて春になる頃にはワクチンや治療薬が開発され、来年の夏までには以前に近いレベルまで活動が復活するのではないかという想定です。

ただし、テレワークといった勤務形態の多様化やオフィス空間のレイアウト変更など、変化する部分も多くあります。

また、人の移動が相対的に減少しているため、海外からの訪問客の復活までには数年を要するでしょう。

そういった点を踏まえたうえで、これから1年間はウィズコロナの状態が続くといった前提で考えていきます。

ウィズ/ポスト・コロナの経済等への影響

コロナ禍が東京の不動産市況に与える影響
(画像=『レイビー』より引用)

まずは、新型コロナウイルスの影響について見てみましょう。

世界銀行が公表した世界経済の見通し(GEP)では、2020年の世界成長率は-5.2%が見込まれています。
日本とアメリカは-6.1%のマイナス成長と予想されています。

しかし、来年の世界経済については+4.2%の成長となっており、来年には経済が戻ると予想されています。

それでは、国連はどう見ているのでしょうか。

UNIDO(国際連合工業開発機関)が主に参照しているIMFのWEO(世界経済見通し)では、新型コロナウイルス以前の+2.7%から-4.2%と予測されています。

日本が過去どうだったかに関しては、企業にアンケートを取った日銀短観が参考になるでしょう。
ここ15年間の推移を見ると、大きく下落したのは2008年のリーマンショックです。

特に製造業系は-60%まで落ち込んでいます。
この落ち込みは1年ほどで復活しますが、2011年に起こった東日本大震災の影響で低迷が続きました。

その後、2013年にオリンピック誘致が決まって復活します。
急激に上がってプラスに転じ、2018年から2019年の2年間は非常に好調でした。

不動産についても価格が上がり、企業が利益を貯め込んだ時期です。

今回の新型コロナウイルスの影響でかなり落ち込むと見られますが、貯め込んだ利益のおかげで、1年は持つでしょう。

2020年7月1日公表の日銀短観を見ると、日本企業の業況判断は6四半期連続で悪化していることが分かります。

過去のGDP成長率の推移を見ると、世界平均と先進国、新興国・途上国があるなかで、日本をはじめとする先進国が一番落ち込んでいます。

リーマンショックの際にリカバリーが早かったのは、新興国である中国が経済を引っ張った結果です。
今回、中国はすでにプラスに転化していますが、前回ほどは引っ張れないでしょう。

注意したいのは、株価では経済への影響が分からないことです。
世界主要国の中央銀行が株を買い支えているため、株価は下がっていません。

経済の成長は、この1年で大きく落ちるでしょう。その影響はリーマンショックよりも激しいと言われています。

不動産価格については、東京都区部の公示価格がどのように変動したかを見てみましょう。

リーマンショックで急落、東日本大震災の影響でその後2~3年はマイナスが続き、オリンピック誘致で復活の流れとなっています。

商業地は浮き沈みが激しく住宅地は変動率の幅が狭い傾向にありますが、流れはほぼ同じとなり景気動向によって下がります。

そして、不動産価格は経済状況とのタイムラグがあり、2~3年は続くことが分かっています。