NISAを売却するタイミングはいつがベストなのか?
結論からいうと、基本的にはNISAは好きなタイミングで売却できる。
だが、非課税投資枠や損益通算の可否、非課税期間後のロールオーバー制度といったNISA口座ならではの仕組みがある。一般口座での投資とは異なるため、売却のタイミングや売り方に注意が必要だ。

この記事で分かること
  • 一般NISAは売り時が重要!
  • 非課税期間終了時に利益がでているなら「売却」か「課税口座にうつして運用」
  • 非課税期間終了時に損失が出ている場合は「ロールオーバー」を検討
  • 一般NISAのおすすめ証券会社は楽天証券かSBI証券!
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※1)2023年10月以降にマネックス証券のNISA口座を開設した場合、還元率2.2%(適用期間2023年10月2日~2024年9月30日、2023年9月までにNISA口座を開設した場合は1.5%還元(適用期間2024年1月4日~2024年9月30日)
出典:SBI証券楽天証券マネックス証券auカブコム証券松井証券、2024年1月21日現在

目次

  1. NISAとは 非課税期間は何年?
  2. NISAにおける「売却」の特殊事情
  3. NISAで非課税期間5年を経過した場合の3つの選択肢
  4. NISAでは売却タイミングを含めた「出口戦略」が重要

NISAとは 非課税期間は何年?

NISAを使えば、投資によって得られた利益が一定期間非課税になる。

株式や投資信託で得られる利益には「譲渡所得」や「配当所得」があり、本来ならそれぞれに20%の所得税がかかる。例えば100万円の資金が運用によって150万円になったときに売却すると50万円の差益が発生するが、実際に手にできるのは税引き後の40万円だ。

NISAではその10万円が非課税になるのだから、初心者だけでなく税金の重さを痛感する投資経験者にもメリットが大きい。

一般NISAの非課税投資期間は5年間

NISAの非課税期間は、購入した年を含めて5年間である。例えば2019年に買い付けた金融商品は、2023年の12月末までに売却しなければ自動的に課税口座へ移管される。毎年120万円の非課税投資枠が付与され、5年間運用できるため、非課税投資枠の総額は120万円×5年間で600万円だ。5年後も非課税で保有を続けたい場合は、後に詳しく述べる「ロールオーバー」という方法を選択する必要がある。

NISAにおける「売却」の特殊事情

NISA口座で購入した株式や投資信託は、好きなタイミングで売却できる。売却により得られた利益と元本は、非課税で証券口座に払い戻される。引き出して生活費に充てるのも自由だ。

NISA口座で保有する資産は売却すれば投資枠が消滅する

NISA口座で保有する資産を売却する際、非課税投資枠は消滅する。

例えばNISA口座で120万円分の金融商品を購入し、130万円に値上がりしたためすべて売却したとする。10万円の利益は非課税で受け取れ、元本の120万円は払い戻される。しかし、その資金で再びNISAで投資しようとしても、1年間で使える非課税投資枠(120万円)は使い切ってしまっているため、翌年まで新規で投資することはできない。課税口座であれば、売却によって生じた資金はすぐに他の資産に投資できる。

NISAの5年の非課税投資期間をどう有効活用するか

NISAで付与された120万円の投資枠には5年間の非課税期間が設けられており、どのタイミングで売却するかは自由だ。購入の翌日に売却しても、期限ぎりぎりまで保有しても構わない。

ただし、一度売却してしまうとその資産に対する5年間の非課税期間は終了する。投資で成功するためには時間を味方につけることが大切だが、早々に売却してしまうと残りの非課税期間が無駄になってしまう。かといって5年保有しても、必ず値上がりする保証はない。

NISAでは、与えられた5年の非課税期間をどのように活用するかが問われることを頭に入れておこう。

NISAは「損益通算」できない

通常の証券投資であれば、金融商品の売却によって生じた損失は他の売却益と相殺できる。損益通算することによって支払う税金が少なくなるため、投資家の間で一般的に取られる手法だ。しかも本年分の損失を相殺しきれないときは、3年間の繰越控除が可能である。

しかしNISAでは、税制上売買損失がないものとされているので、売却損が発生しても特定口座や一般口座の売買益・配当金と相殺することはできず、また3年間の繰越控除も認められていない。

NISAで非課税期間5年を経過した場合の3つの選択肢

NISAの非課税期間である5年が経過すると、保有している株式や投資信託はどのように扱われるのだろうか。選択肢は (1)売却する、(2)課税口座に移管して保有する、(3)ロールオーバーの3つだ。

⑴売却する

NISAの非課税期間が終了する前に保有している金融商品を売却すれば、値上がりしていても売却益には課税されない。利益を確定させたいのであれば、売却するのもよいだろう。

注意したいのは、受渡日が「5年後の最終営業日」までになっていることだ。金融商品の受渡日は、株式の場合は約定日から2営業日後、投資信託は銘柄によって2~5営業日後となっており、最終営業日までに約定するよう売り注文を出さなければならない。

NISAの保有資産が値下がりしている場合は、売却することで損失が確定する。売らずに保有を継続したい場合は、課税口座に移管するかロールオーバーのいずれかを選ぶ必要がある。

⑵課税口座に移管する

NISAで購入した株式や投資信託などの金融商品は、課税口座(特定・一般)に移管して保有を継続できる。その際に注意したいのは、5年目の年末の価格が証券口座における取得金額とみなされることだ。

NISA口座で120万円分の商品を購入し、80万円に値下がりしたところで非課税期間が終了して課税口座に移管した場合、80万円が課税口座での損益の基準になる。その後、課税口座で100万円にまで上昇した場合、当初の購入金額よりも値下がりしているにもかかわらず、80万円から20万円値上がりしているため、20万円×20.315%=4万630円の譲渡益税が発生する。売買差損に加え税金まで取られるのだ。

逆に140万円まで値上がりしたときに課税口座に移管し、その後も価格が変わらない場合は、実際は20万円の差益があるにもかかわらず税金はかからない。

⑶ロールオーバーする

ロールオーバーとは、6年目の投資枠を使ってNISA口座での保有を継続することである。ロールオーバー対象の銘柄が120万円から150万円に値上がりしていても、6年目のNISA非課税投資枠の120万円を使った移管が可能だ。その後200万円まで上昇しても、10年目の年末までに売却すれば税金は発生しない。

対象銘柄が損失を抱えている場合、余った投資枠は他の新規購入に充てることができる。例えば120万円で購入した銘柄が80万円にまで値下がりし、5年経過した状態でロールオーバーする際には、6年目の投資枠は80万円分だけ消化される。よって、残りの40万円で新規投資が可能だ。

NISAでは売却タイミングを含めた「出口戦略」が重要

通常の証券口座に行う売買手法が、NISAでは不利に働く場合がある。

NISAではむやみな損切りは不利になる

「売却すると投資枠が消滅」「売却損が出ても損益通算できない」。この2つの要素があるため、NISAではむやみな損切りは不利に働く。

株取引の世界では、ルールに基づいた素早いロスカットが良いとされている。例えば「株価が25日移動平均線を割り込んだら」「買値の5~10%下落したら」といった損切りラインを設定した場合、短期間で条件に合致してしまうことも少なくない。通常であれば利益を出す可能性が低いものを現金化して、次の投資に充てる投資家が多い。

だがNISAでは一度売却してしまうと、売却した資金はNISA以外の一般口座などでしか使えず、5年間の非課税枠を浪費する結果になりかねない。そのため、売却のタイミングはよく考えて決めなければならない。

NISAで利益が出ている場合……課税口座に移して運用する

NISAの資産が利益を出している状態で非課税期間が終了した場合、売却して利益を確定するのが最も手堅いが、課税口座に移してさらなる値上がりを狙ういう選択肢もある。

課税口座に移した時の取得金額から値上がりすれば、そこで得た差益だけに課税される。つまり、5年間で得られた非課税効果を享受した上で、課税口座で次の挑戦をすることができるのだ。課税口座で値上がりすれば、税金は発生するものの値上がり益を得られる。一方取得金額から値下がりすれば、課税口座でも課税されない。

NISAで損失が出ている場合……ロールオーバー

NISAで損失が出ている状態で5年の非課税期間が終了した場合、損失を確定したくないならロールオーバーをすることで非課税期間を10年に延長する方法もある。その後値上がりしてもNISAの非課税期間が続いているので税金はかからない。ロールオーバーをしても120万円の非課税投資枠が残っている場合は、新規投資に充てることもできる。

NISAにおいては、「売り方=出口戦略」を考えることが重要だ。中長期的な視点で、利益を最大化できる方法を選んでほしい。

 

篠田わかな
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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