2018年はソフトバンク<9984 >やメルカリ<4385>が上場するなど、IPOの話題が多い年だった。近年、IPOに興味を持った人もいるだろう。しかし、IPO投資は通常の株取引と勝手が違う部分がある。IPO投資の基本である「初値売り」と、その注意点とメリットについて説明する。

IPO株を初値で売るには「成行(なりゆき)注文」で

IPOとは、未上場の企業が株式を市場に公開し、誰でもその株式を売買できるようにするプロセスのことだ。証券会社に応募して当選した場合、市場で売買される前にその株式を保有することができる。「初値で売る」とは、上場後その株式に初めて値段が付いた時点で売却することだ。

株式を売るための注文方法は2つある。1つは指値(さしね)注文だ。これは注文を出す際に売り値を設定できる注文で、株価がその値段を上回った時に約定される。「この株は3,000円より下では売りたくない」と思った時などに有効な注文方法だ。

2つ目は成行(なりゆき)注文だ。これは注文を出す際に売り値を設定しない注文で、その時のリアルタイムの値段で株式を売ることになる。「値段は気にしないからとにかく早く株を現金化したい」と思った時に使う注文方法だ。指値注文は売る値段を重視した注文、成行注文は約定までのスピードを重視した注文といえる。

IPOで当選した株式を初値で売るには、後者の成行注文を出す必要がある。IPO株には当然ながら初値以前の市場価格が存在しない。初値が付く前に成行の売り注文を出しておけば、初値が付いた瞬間にその値段で約定される。

成行の売り注文の出し方と3つの注意点

成行の売り注文は、各証券会社のウェブサイトや携帯アプリを通じて出すことができる。注文の基本的な流れはどの証券会社も同じで、以下が基本のプロセスとなる。

  • ログイン後の株式の取引画面で「売り」を選択
  • 注文の形式について「指値/成行」から成行を選択
  • 希望の売却株数を入力して発注

ただし、当選が確定した時点ですぐに注文が出せるわけではない。IPOでは、上場日が株式の受け渡し日となる。当選した人は上場日を迎えて初めてその株式の所有者となるのだ。

売り注文の受付時間は証券会社によって微妙な差があるものの、基本的には上場日の早朝からだ。たとえばSBI証券では、IPO株の注文を上場の前営業日翌日の早朝(午前4時頃)から受け付けている。

そのIPOが、単独上場なのか重複上場なのかで受付時間が変わるケースもある。単独上場とは上場する市場が1つのみの場合であり、重複上場とは東証・名証など同時に2つ以上の市場に上場することをいう。当選した株式がどちらの上場方式なのかも要チェックだ。

上場日の寄り付き時間(午前9時)までに注文を出すことも重要だ。午前9時を過ぎると売り注文・買い注文の寄り合わせが始まり、早々に初値が付いてしまうこともある。買い注文数が売り注文数を大きく上回る場合、上場初日に値段が付かない可能性もある。値段が付かなかった場合は未約定の注文がキャンセルされるので、翌日の寄り付き時間までに再度注文を出さなければならない。

IPO株を初値で売れば儲かるのか?

株価は需要と供給のバランスで変動する。IPOの場合、上場日には株式市場での注目度が高まることで買いたい投資家が増えて需要(買い注文)は膨らむ。需要が膨らむと供給(売り注文)とのバランスが取れず、値段が徐々に上がることでバランスが調整される。IPO株を初値で売る場合、こうした「需給逼迫効果」による値上がりが期待できるのだ。

この需給のアンバランスを利用して、ファンド株主が初値を吊り上げるケースもある。IPOを行う企業の既存株主には、ベンチャーキャピタルといった大口ファンド株主がいることも多い。直近ではオンライン旅行予約サイトを運営するベルトラや、インターネットメディア事業を手掛けるポートなどで大口のファンド株主が見られた。

需給のバランスが取れた時に初値が付くので、大量の売り注文を出せる大口株主にはある程度の価格決定力があるといえる。「限界まで買い注文を引き付けてから大量の売り注文を出し、初値を任意のタイミングで意図的に付ける」ことも状況次第で可能なのだ。

しかし、このような値上がりは初値が付くまでの需給逼迫状態でなければ期待できない。初値が付いてからは市場で小口の注文が活発に飛び交い、買い注文が出るとすぐに約定する。結果、初値が付く前に見られた需給逼迫による値上がりは起こり得ない。

IPO株を初値で売っても元本割れする可能性はゼロでない

IPOでは、初値が公開価格(当選者の取得単価)を上回るケースが多いが、中には初値が公開価格を下回る場合もある。株式相場全体が低迷して投資家の買い意欲が減退している状況などでは、こうした公開価格割れも起こり得る。「IPO投資もあくまで株式投資」という認識のもと、元本割れの可能性を忘れないことも重要だ。

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松本雄一
執筆・松本雄一
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。

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