FX取引におけるファンダメンタルズ分析(ファンダメンタル分析)の必要性は議論が分かれるところだ。ここでは、具体的な分析手法やテクニカル分析手法との違いを見ていきながら、その必要性を検討していく。また、分析の際に参考となる指標や情報源についても紹介していこう。
1,FX取引におけるファンダメンタルズ分析の重要性
FXをする際、投資初心者の中には「勘」で取引をする方もいるかもしれないが、多くの方は何らかの分析手法を用いているだろう。一般的な手法の一つに「ファンダメンタルズ分析」があるが、それはどのような分析手法なのだろうか。同じく利用されることが多い「テクニカル分析」との相違点などとともに解説する。
ファンダメンタルズ分析とは?
ファンダメンタルズ分析(fundamental analysis)とは、広義では、特定の事柄に影響を与えるさまざまな要因を分析することだ。FXでのファンダメンタルズ分析とは、為替相場に影響を及ぼす要因、例えば対象となる国の経済成長率や失業率、中央銀行の金融政策などを分析し、FX取引に活用することを指す。
テクニカル分析と何が違う?
FXに用いられる分析手法の中では、ファンダメンタルズ分析と並び、テクニカル分析がよく知られている。テクニカル分析とは、「為替の動き」に注目する分析手法で、現在の相場が上昇傾向にあるのかまたは下降傾向にあるのかを見極め、買われすぎ・売られすぎの過熱感などを判断する。
ファンダメンタルズ分析では為替が動く「理由」に注目するが、テクニカル分析では理由については考慮せず、あくまでもチャートの動きに着目する点が、両者の違いだ。
なぜファンダメンタルズ分析が必要なのか?
ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析は相反する分析手法であるが、決して相容れないわけではない。
テクニカル分析では、為替の動向を判断してエントリーポイントやエグジットポイントを見つけることができる。また、必要に応じて出口戦略を検討することが可能だが、トレンド方向を見極めるのには不向きだ。
逆に、ファンダメンタルズ分析の手法を使えば、金融政策や経済の動向などを総合的に分析してFX取引の指針を決めるため、トレンド方向を見極めて、エントリーの際にどのような戦略で投資するのかの判断が可能となる。為替相場の大まかなトレンドを知り、未来を予測するためにも、ファンダメンタルズ分析の手法は価値があるといえるだろう。
2,FXで注目すべき4つのファンダメンタルズは?
具体的にはどのファンダメンタルズ(基礎的条件)に注目すればよいのだろうか。4つの注目ポイントについて紹介する。
1,経済指標
最初の注目ポイントは各種経済指標だ。下記に国内外の代表的な指標10個をまとめた。初心者は特に注目度が高い指標に着目し、ファンダメンタルズ分析の参考にしてほしい。
・米雇用統計[注目度:高、発表日:毎月第一金曜日]
米国の雇用状態を示す統計データ。非農業部門雇用者数が前月より大幅に増加している場合は米国の景気回復の目安になる。反対に失業率が上がっている場合は景気不安の目安となる。
・米生産者物価指数(PPI)[注目度:高、発表日:毎月中旬]
米国のインフレ状態を示す指標。季節的要因を除いたコア指数が上昇しているときはインフレ傾向。
・米消費者物価指数(CPI)[注目度:高、発表日:毎月中旬]
米国のインフレ状態を示す指標。都市部に住む消費者の購入品の価格。上昇しているときはインフレ傾向。
・米貿易収支[注目度:中、発表日:毎月20日前後]
政府と民間による輸出入に関する統計。貿易赤字が拡大している場合は、米ドル売却の要因となる。
・米小売売上高[注目度:中、発表日:毎月中旬]
サンプル調査で小売業の売上高を予測。自動車販売の動向が反映されやすい。売上高上昇時は米ドル高になる傾向がある。
・ユーロ消費者物価[注目度:高、発表日:毎月中旬に速報値、月末に推計値]
ユーロ加盟国の消費者物価をまとめたもの。物価指数によって金利が調整される可能性が高い。
・ZEW景況感指数[注目度:中、発表日:毎月中旬]
景気を楽観視・悲観視しているアナリストの数を分析するドイツの指標。鉱工業生産に対して先行性があるとされており、ユーロの強さやドイツの景気を予測する際に用いる。
・Ifo景況感指数[注目度:中、発表日:毎月下旬]
ドイツの約7,000社を対象とした景況感指数。好景気感が続くと利上げにつながることがある。
・日銀短観[注目度:高、発表日:年4回]
日銀による企業動向調査。業況判断DIは、日本の景気を判断する上で重要な指標。
・機械受注[注目度:中、発表日:毎月中旬]
船舶と電力を除いた機械受注数。日本の設備投資の動向を知る上で重要な指標。
2,金融政策
各国の金融政策を知ることは、ファンダメンタルズ分析を使ったFX取引の参考になる。中央銀行は景気に過熱感があると金利を引き上げて消費拡大を制限する傾向にある。金利が引き上げられると、為替相場は通貨高になることが一般的だ。参考までに、各国の政策金利を下表にまとめた。
<各国の政策金利>
国 | 政策金利(2020年12月時点) |
日本 | -0.10% |
米国 | 0.25% |
ユーロ | 0.00% |
英国 | 0.10% |
オーストラリア | 0.10% |
トルコ | 17.00% |
ロシア | 4.25% |
3,要人発言
要人の発言で為替相場が動くこともある。特に、以下の役職にある要人の発言には注意したい。
・中央銀行の総裁など(日銀総裁、FRB議長、ECB総裁など)
・経済担当大臣(財務大臣、財務長官など)
例えば、2019年8月20日(日本時間)に、ジョンソン英首相が要求したEU離脱協定案のバックストップ条項撤回をEUが拒否したところ、ポンドドルは一時急落した。後に、ドイツのメルケル首相がバックストップ条項について解決を検討すると発言すると、ポンドドルは大幅に上昇して反発を見せた。
このように、要人が国の経済に対して不安を促進するような発言をすることにより、同国通貨の売り注文が増大し、反対に、安心感が強まる発言をすると買い注文が増えるケースがある。
4,地政学的リスク
紛争危機の高まりやテロの増大により、経済に影響が及ぶことを地政学的リスクという。北朝鮮や中東等の紛争・テロが絶えない地域の情勢により、為替相場が動くこともある。例えば、2020年1月8日(日本時間)、米軍が駐留中であったイラクの基地にイランが攻撃を開始したとのニュースが流れた。これを受けてドル円相場において一気にドル安が進行したことがある。
3,ファンダメンタルズ情報を手に入れる方法
ファンダメンタルズ分析に用いる情報は、さまざまな場所で入手が可能だ。場所や状況を問わず利用でき、なおかつ鮮度の高い情報を手に入れるための方法を紹介する。
テレビ、新聞、インターネット
テレビならその日のニュースがその日のうちに入手でき、また、新聞を見れば遅くとも翌日までに最新情報を入手できる。特に、経済指標については日本経済新聞等の経済紙が詳しく、専門家の分析も掲載されている。最新の情報をリアルタイムで入手したい方は、経済専門紙のインターネット版や、NHKなどのワールドニュースを確認すれば、最新情報を手軽に入手できる。
FX会社
FX会社ではファンダメンタルズ分析に利用できる情報を適時紹介していることがある。例えば為替情報に関してはフィスコ社が詳しいが、楽天証券や外為どっとコムではフィスコのニュースも閲覧することができる。また、金融情報に詳しいロイター社のニュースは、ヒロセ通商や外為オンラインで閲覧可能だ。
4,ファンダメンタルズ分析に強いFX会社3選
いくつかのFX会社では、顧客サービスの一環としてFXに活用できる情報を提供している。その中でも特にファンダメンタルズ分析に応用できる最新情報が豊富な3社を紹介する。
1,楽天証券
楽天証券では、金利や為替、経済指標カレンダー、フィスコ社の為替ニュースなど、FX投資に役立つ情報が豊富だ。各国のニュースヘッドラインもチェックでき、要人の発言などを、リアルタイムに投資に活かせるだろう。なお、フィスコ社の為替ニュースに関しては、ホームページではなく口座開設者が利用する取引ツールからの閲覧となる。
2,マネックス証券
マネックス証券では、経済指標において多くの人が注目する米国雇用統計の発表時に、ライブで分析セミナーを実施している。為替のプロフェッショナルたちのコラムも豊富で、為替を含む投資全般の知識も増やせる。なお、専門的なアナリストレポートなどの豊富な情報は、口座開設者以外も閲覧できる点に注目したい。
3,外為オンライン
外為オンラインでは、ロイター社のニュースや重要指標を知らせるマーケットカレンダーなどのファンダメンタルズ分析に不可欠といえる情報を提供している。また、分析時の指針として参考にできる為替アナリストやトレーダーによるコンテンツも豊富だ。外為オンラインでは口座開設者以外もアナリストレポートが自由に閲覧できるので、ぜひ活用したい。
5,経済・金融情報に注目してファンダメンタルズ分析に役立てる
常に経済と金融の情報を積極的に入手していれば、FX取引を行う際、ファンダメンタルズ分析が容易になる。FX会社ではファンダメンタルズ分析に役立つ情報を豊富に公開しているので、ぜひチェックして投資に活かそう。
2013年より、総合証券とネット証券を使い分けながら、資産運用を開始。2017年から各種WEBサイトのフリーライターとして活動、現在は経済金融系記事を中心に執筆している。
■保有資格
証券外務員一種、二種
投資診断士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
AFP認定者
2013年より、総合証券とネット証券を使い分けながら、資産運用を開始。2017年から各種WEBサイトのフリーライターとして活動、現在は経済金融系記事を中心に執筆している。
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投資診断士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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