IPOの初値騰落率ランキング一覧 過去5年半で最も儲かった投資先は?

2019.8.2
INVESTMENT
(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)
(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)
IPOで最も重視されるのは公募価格と初値の差だろう。IPOは近年大きな盛り上がりを見せているが、過去5年半で投資家が最も儲かったのはどの企業であろうか。2014年1月から2019年6月までのIPOの中で初値の騰落率が高かった上位10銘柄を一覧にした。人気となった理由と共に紹介しよう。

IPO初値騰落率トップ10一覧(2014年~2019年上半期)

2014年1月から2019年6月までに、東証一部、東証二部、マザーズ、ジャスダックへ新規上場した457銘柄のうち、初値騰落率が高かった上位10銘柄は次の通りである。
 

第10位 グルーバルウェイ<3936>……騰落率372.97%

グローバルウェイは転職支援サイト「キャリコネ」の運営を始め、法人向けのクラウド型業務アプリの導入サービスも手掛ける。

同社の初値が大きく上昇した要因としては、次の4点が考えられる。

(1)クラウド型ソフトウェア事業という注目業種であった
(2)市場からの吸収金額が4億円程度の小型案件であった
(3)人気化する傾向にあるマザーズ銘柄であった
(4)上場日の前後に注目案件が無く、資金需要の受け皿になった

特にクラウド型ソフトウェアの開発という市場のテーマを満たした銘柄であった点が大きいだろう。「キャリコネ」の運営実績というよりも、ソフトウェア開発という点に市場が反応した可能性が高い。

第9位 ウォンテッドリー<3991>……騰落率401.00%

ウォンテッドリーはビジネスSNS「Wantedly」の運営を手掛ける。CEOである仲暁子氏はゴールドマン・サックス証券を経て、Facebook Japanの立ち上げに関わった後、同社を立ち上げたという経歴を持つ。

ウォンテッドリーの初値が大きく上昇した要因としては、次の3点が考えられる。

(1)SNS銘柄、マザーズ上場という人気化の条件を満たしていた
(2)市場からの吸収金額が1.3億円と超小型案件であった
(3)社長の経歴に話題性があった

特に注目すべきは、市場からの吸収金額(企業が調達する資金額)が1.3億円と非常に少ない超小型案件であったということだ。需給面から初値が押し上げられた可能性が高い。

第8位 ネオジャパン<3921>……騰落率401.72%

ネオジャパンは独立系のソフトウェア開発会社である。主力ソフトの「desknet's NEO(デスクネッツ ネオ)」は一般企業から官公庁まで多くの採用実績があり、クラウドサービスにも力を入れている。設立は1992年とマザーズ上場銘柄の中では歴史がある点も特徴だ。

同社の初値が大きく上昇した要因としては、次の4点が考えられる。

(1)クラウドサービス関連、マザーズ上場という人気化のポイントを満たしていた
(2)市場からの吸収金額が6.4億円程度と小型案件であった
(3)市場のテーマを満たしつつ、安定した業績実績もあった
(4)上場日の前後に注目案件が無く、資金需要の受け皿になった

1992年設立の安定した経営基盤を持ちつつも、クラウドサービスという時流に乗ったテーマで成長を果たしているのが特徴だ。新技術にいち早く対応することを開発コンセプトの一つとしており、その点も共感を呼んだ可能性がある。

第7位 アジャイルメディア・ネットワーク<6573>……騰落率415.67%

アジャイルメディア・ネットワークはSNSなどのクチコミを活用し、企業のマーケティング活動の支援を行う。特定のブランドや商品に積極的に関わり、SNSなどでの発言や推奨を行う熱量の高いファンを「アンバサダー」と定義し、企業とアンバサダーを結びつける「アンバサダープログラム」が事業の中核だ。

同社の初値が大きく上昇した要因としては、次の3点が考えられる。

(1)ニッチな分野で独自性の高い事業を行っている
(2)市場からの吸収金額が4億円弱と小型案件であった
(3)人気化する傾向にあるマザーズ銘柄であった

アジャイルメディア・ネットワークは、上場の前年にあたる2017年にはインテージ、電通グループ、マイナビの3社と資本業務提携を行っている。独自性の高い事業に注目が集まっていたと言えるだろう。

第6位 ビーロット<3452>……騰落率422.39%

ビーロットは不動産投資開発事業を主力に、富裕層向けに不動産経営サービスをワンストップで展開している。専門性の高い人材を配置し、不動産の投資・開発からコンサルティング、マネジメントまで幅広くカバーできる点に強みがある。

同社の初値が大きく上昇した要因としては、次の4点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が2億円程度の超小型案件であった
(2)人気化する傾向にあるマザーズ銘柄であった
(3)不動産市況の回復や東京オリンピックへの期待など、業界の追い風を受けた
(4)直前に上場したマザーズ銘柄の初値が高騰しており、市場が盛り上がっていた

ビーロットの上場直前に同じマザーズへ上場していたSHIFT<3697>、CRI・ミドルウェア<3698>の初値騰落率が、それぞれ361.54%、462.50%と高騰していた点に注目したい。市場の期待感が高まっていたことも初値を大きく引き上げる要因になったと見られる。

第5位 アイリッジ<3917>……騰落率429.17%

アイリッジはスマートフォンをプラットフォームとしたO2Oソリューションを提供している。O2Oとは、「Online to Offline」の略であり、Webサイトやアプリ(オンライン)を通じて、実店舗(オフライン)への集客や販売促進を支援している。主力サービスである「popinfo(ポップインフォ)」はスマートフォンの位置情報を活用した販売促進支援を提供する。

同社の初値が大きく上昇した要因としては、次の4点が考えられる。

(1)ニッチな分野で独自性の高い事業を行っている
(2)市場からの吸収金額が4億円程度の小型案件であった
(3)人気化する傾向にあるマザーズ銘柄であった
(4)上場日の前後に注目案件が無く、資金需要の受け皿になった

独自性の高い事業でありながら、上場前年の2014年時点の売上高は前年度比86%増と大きく成長を果たしている点に注目したい。特色のある事業に実績が伴っていることが評価に繋がったのだろう。

第4位 ロゼッタ<6182>……騰落率433.09%

ロゼッタは産業分野に特化した翻訳サービスを提供している。人の手による翻訳だけでなく、AIを活用した機械翻訳のソフトウェアを開発・販売している点に特徴がある。

同社の初値が大きく上昇した要因としては、次の3点が考えられよう。

(1)ニッチな分野で独自性の高い事業を行っている
(2)市場からの吸収金額が2.5億円程度の小型案件であった
(3)人気化する傾向にあるマザーズ銘柄であった

AIを活用した機械翻訳サービスの開発という点で独自性が高いのがポイントだろう。AIという市場テーマにも沿ったかたちでの上場となった事も含め、関心が高まった可能性がある。

第3位 CRI・ミドルウェア<3698>……騰落率462.50%

CRI・ミドルウェアはコンピュータのOSとアプリケーションを結ぶミドルウェアの開発を行っている。「CRIWARE(シーアールアイウェア)」のブランドでミドルウェアを展開しており、音声や映像データの圧縮や、低負荷で早い再生を行う技術に特徴がある。家庭用ゲーム機の他、スマホ向けアプリ、パチンコ台など、幅広く採用されている。

同社の初値が大きく上昇した要因としては、次の4点が考えられる。

(1)スマホ向けアプリへの採用が増加しており、市場テーマと合致していた
(2)市場からの吸収金額が7億円弱の小型案件であった
(3)人気化する傾向にあるマザーズ銘柄であった
(4)直前に上場したSHIFT<3697>の値動きが良く、市場の期待が高まっていた

同社上場の2週間程前に上場したSHIFTは、初値の高騰率(361.54%)もさることながら、その後3営業日連続でストップ高となった。同じマザーズ上場であり、業種も近いCRI・ミドルウェアへの期待感が市場で高まっていたことも大きな要因と見られる。

第2位 トレードワークス<3997>……騰落率518.18%

第2位はトレードワークスで、騰落率は500%超えとなっている。トップ10の中で唯一のジャスダック上場銘柄だ。同社は証券会社向けのシステム開発から保守・運用までを手掛ける。また、それに付随してFXのシステム開発なども行っている。

同社の初値が大きく上昇した要因としては、次の3点が考えられる。

(1)市場からの吸収金額が5億円弱の小型案件であった
(2)フィンテック関連銘柄として、市場のテーマを満たしていた
(3)仮想通貨市場が高騰しているタイミングでの上場となり、仮想通貨関連銘柄として期待された

トレードワークスが上場した2017年末は仮想通貨の市場が大きな盛り上がりを見せていたタイミングと重なる。同社は仮想通貨市場のシステム開発にも意欲を見せていたこともあり、仮想通貨関連銘柄として多くの需要を集め、500%超えの高騰となったと見られる。

第1位 HEROZ<4382>……騰落率988.89%

第1位はHEROZだ。騰落率はダントツの988.89%となった。これはIPOがブックビルディング方式となった1997年以降での最高記録だ。同社はAIを活用したサービスの開発を行っている。BtoCの分野では将棋ゲームなどのアプリ、BtoBの分野では機械学習のAIサービスの提供を手掛けている。

HEROZの技術者が開発した「Ponanza(ポナンザ)」と呼ばれるAIが、2017年にプロ棋士に勝利したことでも知られている。

同社の初値が大きく上昇した要因としては、次の5点が考えられよう。

(1)AI銘柄として、市場のテーマを満たしていた
(2)市場からの吸収金額が8億円弱の小型案件であった
(3)プロ棋士に勝利したAIを開発した企業という話題性があった
(4)上場日の前後に注目案件が無く、資金需要の受け皿になった
(5)海外情勢によって大型株が軟調に推移する中、個人投資家の需要の受け皿になった

注目したいポイントは(4)と(5)だ。話題性も十分であった点はもちろん、外部要因による影響も非常に大きかったと見られる。米国の長期金利の上昇や米中貿易摩擦などの影響で、大型株が軟調に推移する中、好調なIPO銘柄に資金が集まりやすい環境にあった。

AI関連という市場のテーマのど真ん中の銘柄であり、上場前後に他の案件が無かったことも併せて、需要が大きく集まった可能性が高い。

IPO初値騰落率における上位10銘柄に見られる3つの共通点

では、過去5年半のIPO初値騰落率上位10銘柄を比べ、高騰するIPOの共通点を探っていこう。大きくは次の3点が挙げられる。

事業内容が市場テーマに沿っており、独自性が高い

企業の事業内容は注目すべきポイントである。その銘柄の事業内容が市場のテーマに沿っているか、また、独自性のある事業内容であるかが重要だ。前述の上位10銘柄を見ると、AI、仮想通貨、クラウドサービスなどの市場テーマにマッチした銘柄や、独自性の高い事業内容の銘柄が軒並みランクインしていることが分かる。

市場からの吸収金額の少ない小規模案件

上位10銘柄に共通する特徴として、市場からの吸収金額が少ない小規模案件であることが挙げられる。一般的に吸収金額が10億円未満の案件が小規模案件として分類されるが、上位10銘柄は全てこれに当てはまる。吸収金額の少ない案件は、需給面で大きなプラス材料となる。

人気化しやすいマザーズ銘柄である

上位10銘柄の内、9銘柄がマザーズ上場銘柄である。対象を上位50銘柄に広げても、マザーズ銘柄は44銘柄、ジャスダック銘柄が6銘柄となる。これは、近年マザーズ上場銘柄に個人投資家の買いが殺到するため、マザーズ銘柄という事実自体が判断材料となっている側面もある。

このように、高騰するIPOにはいくつかの特徴がある。もちろん、投資の世界に絶対という言葉は無いため、この条件を満たしている銘柄が必ず上昇するわけではない。ただ、現状のIPO市場は大きな盛り上がりを見せており、こうした銘柄に高騰の期待が大きく掛かるのも事実である。この条件を満たすような銘柄があれば、申し込みを検討してみてはいかがだろうか。

文・樋口壮一(金融ライター)
 

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