住宅ローンを払えない人が急増している?払えない場合のリスクと対処法

2020.5.13
運用・家計
(写真=Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com)
(写真=Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com)
住宅ローン金利が過去最低を更新するなか、働き方改革による残業削減、さらに今年に入ってからは新型コロナウイルスの影響により収入が減少する人が増え、住宅ローンを払えない人の増加が懸念されている。もし住宅ローンを払えなくなってしまったら、どうなってしまうのか。払えなくなった場合の対処法について解説する。

目次
1.住宅ローンを払えない人の割合
2.住宅ローンを払えない3つの要因
3.住宅ローンを払えない場合のリスク
4.住宅ローンを払えない場合の対処法
5.払えなくなる前に早めの対応を

1.住宅ローンを払えない人の割合は0.99%

住宅金融支援機構によると、2019年3月末時点で1ヵ月以上住宅ローンを延滞している人の割合は0.99%(※住宅金融支援機構の「住宅金融支援機構債券・商品内容説明書2018年度」より)。一見低い数字だが、比較的厳しい住宅ローンの審査を通過した人に占める割合であることを考えると、安心はできない。2016年から2019年までの延滞率を以下の表にまとめた。
 
  2016年3月末 2017年3月末 2018年3月末 2019年3月末
1ヵ月延滞率 0.61% 0.60% 0.58% 0.59%
2ヵ月延滞率 0.17% 0.15% 0.14% 0.14%
3ヵ月延滞率 0.12% 0.10% 0.10% 0.10%
4ヵ月以上延滞率 0.20% 0.17% 0.16% 0.16%
1.10% 1.02% 0.98% 0.99%
※住宅金融支援機構「住宅金融支援機構債券・商品内容説明書」2018年度版および平成29年度版を基に筆者作成

住宅ローン延滞率は、近年の低金利もあってか、減少傾向にあった。しかし2018年から2019年にかけ、わずかではあるが増加に転じている。この数字には、新型コロナウイルスによる影響は含まれていない。休業や勤務時間の短縮などが長期化すれば、失業や収入の減少によって、住宅ローンを払えない人がさらに増えることが危惧される。

2.住宅ローンを払えない3つの要因

住宅ローンを払えなくなるパターンとしては、資金計画に当初から無理があるケースや、長い返済期間中に状況が変化して住宅ローンを払えなくなるケースなどがある。

リストラ・転職・残業削減による収入減少

終身雇用・年功序列制から成果主義への移行、非正規社員の増加、相次ぐリストラなど、収入は昔に比べて年齢を重ねても増えにくくなっている。転職によって収入が減少するケースや、働き方改革によって残業が削減され、収入が激減するケースもある。昇給や残業代を見込んで住宅ローンを組んでいれば、返済は苦しくなるだろう。

社会保険料の増加による手取り収入の減少

増え続ける社会保険料負担による手取り収入の減少も、要因の一つだろう。勤め先からの収入に占める税・社会保険料負担割合は、1988年から2017年までで20.6%から25.7%まで5.1%上昇している(うち社会保険料の増加分が4.7%)。このうち4.2%は2007年以降10年間の上昇分であり、ここ数年で社会保険料負担が急増していることがわかる。(※大和総研の2018年6月発表「平成の30年間、家計の税・社会保険料はどう変わってきたか」より)

借入金額の返済負担の増大

可処分所得に占める住宅ローン返済額の割合は、1980年の13.1%から2015年には20.2%となり、住宅ローンの負担は増している。(※日本総研の2016年11月「Research Focus」より)

低金利のメリットを活かして多額のローンを組み、住宅を購入する人も増えている。頭金なしのフルローンも一般的になり、20代で住宅を購入する人も珍しくない。背伸びして収入に見合わないローンを組んでしまうと、ちょっとした収入の変化でも住宅ローンを払えなくなることがある。

そのほか、介護離職や離婚、教育費の増加などが原因で住宅ローンが払えなくなるケースもある。

3.住宅ローンを払えない場合の5つのリスク

住宅ローンを払えなくなった場合は、以下のようなリスクがある。

住宅ローンの優遇金利が適用されなくなる

変動金利の住宅ローンでは、ベースとなる店頭金利あるいは基準金利と呼ばれる金利から、優遇金利を差し引いた金利が適用されているケースが多い。住宅ローンの延滞が発生した場合、この優遇金利が適用されなくなる可能性がある。優遇金利がなくなれば、住宅ローンの返済額は大幅に上昇してしまう。このことは住宅ローンの説明書に記載されているが、知らない人が多いだろう。

たとえば三菱UFJ銀行のネット専用住宅ローンの場合、店頭表示金利の年2.475%に対し、実際には優遇金利1.95%を差し引いた年0.525%の金利が適用される(金利は2020年4月時点)。この住宅ローンの約款(商品説明書)には、「延滞が発生した場合、特約利率を取り消し、適用金利を引き上げさせていただくことがあります」と明記されている。

変動金利年0.525%、借入額3,000万円、返済期間20年・元利均等返済・ボーナス返済なしという借入条件の場合、毎月の返済額は13万1,704円だ。優遇金利が適用されなくなると、金利は年2.475%、毎月の返済額は15万8,605円まで増加する(住信SBIネット銀行のシミュレータにより筆者試算)。

すでに返済が滞っているところに返済額の増加が追い打ちをかければ、状況はさらに悪化するだろう。

個人信用情報に傷がつく

住宅ローンは一度でも滞納してしまうと、その情報が個人信用情報機関に登録されてしまう。この記録は、延滞が解消しても住宅ローン契約の継続中、および契約終了(完済)から最長5年間は消えない。

信用情報に延滞の履歴があると、今後住宅ローンの借り換えやマイカーローンなどの新規借り入れ、クレジットカードの申し込みなどを行う際、審査に通りにくくなることがある。

遅延損害金を支払わなければならない

住宅ローンの延滞が発生した場合、遅延損害金を支払わなければならない。遅延損害金は、遅延している返済額の元金部分に対して年14.0~14.6%の金利で日割り計算される。金利は、金融機関によって異なる。

遅延損害金の計算方法は以下のとおりだ。

[遅延している約定返済額の元金]×[遅延損害金年率]/365日×[約定返済日翌日からの経過日数]

15万円(内元金10万円)の返済が本来の返済日(約定返済日)から30日遅れた場合、遅延損害金年率が14%であれば、1日1,150円の遅延損害金が発生する。

遅延損害金=10万円×14%/365日×30日≒1,150円(1円未満切り捨て)

住宅ローンの全額一括返済を求められる

住宅ローン返済の滞納が3ヵ月以上続くと、借入先金融機関から一括返済を求められる可能性が高くなる。住宅ローンの借り換えなどによって資金を準備できればいいが、延滞歴がある状態では難しいだろう。

住宅を手放さなくてはならなくなる

住宅ローンを一括返済できなければ、任意売却あるいは競売によって住宅を手放さざるを得なくなる。特に競売では売値が相場よりもかなり安くなる傾向があり、売却代金ではローンを返しきれずローンだけが残ってしまうケースも少なくない。

4.住宅ローンを払えない場合の4つの対処法

様々な理由で住宅ローンが払えない場合、以下の4つの方法を検討したい。

対処法(1)……借入先の金融機関に相談する

住宅ローンを払えなくなる前に、借入先の金融機関に相談しよう。一時的な返済猶予や借入条件の変更(返済期間の延長、返済額の減額など)に応じてもらえるケースも多い。相談は、滞納して金融機関からの信用がなくなってしまう前にすべきだ。借入条件の変更が認められて返済を継続できるのであれば、住宅を手放さずに済む。

対処法(2)……住宅ローンを借り換える

住宅ローンの借り換えによって、毎月の返済額を下げる方法もある。ただし収入の減少などを理由に借り換える場合は、借り換え先となる住宅ローンの審査に通らない可能性も高い。また借り換えには諸費用がかかり、毎月の返済額は減っても総返済額が増える可能性もある。効果をシミュレーションした上で、借り換えるべきかどうかを判断することが大切だ。

対処法(3)……滞納が続いてしまう場合は任意売却や競売にかける

任意売却は抵当権者である金融機関の同意のもと、住宅を中古住宅市場で売却する方法だ。競売より高く売れることが多く、ローンが残った場合の返済計画や引越し(立ち退き)のスケジュールなどを調整しやすいというメリットがある。なるべく良い条件で売却するためには、仲介を行う不動産業者の選択が重要になる。

競売は金融機関または保証会社が住宅を差し押さえ、強制的に売却する方法だ。競売による売却価格は任意売却よりも低くなることが多く(市場価格の7割程度が相場)、買い手が代金を支払った時点ですぐに立ち退かなくてはならない。

任意売却のほうがメリットは多いといえるが、すぐに売れるとは限らない。売れないまま滞納が6ヵ月以上続けば、金融機関によって競売にかけられる可能性が高い。一定の猶予はあるものの、任意売却を選ぶのであれば早めに行動するほいがいいだろう。

対処法(4)……債務整理(個人再生・自己破産)を行う

住宅ローンをはじめ、借金の返済が困難になった場合は、個人再生や自己破産などによる債務整理という選択肢もある。

5.住宅ローンを払えなくなる前に早めの対応を

住宅ローンを払えなくなってしまってからでは、選択肢は限られる。夫婦で共働きをして収入を増やす、固定費などを節約して支出を減らすなど、日頃から家計の収支を改善する努力も欠かせない。それでも住宅ローンの返済が苦しいと感じたら、なるべく早めに借入先の金融機関に相談してほしい。

低金利のうちにと住宅の購入を急いだり、身の丈に合わない物件を購入したりすれば、住宅ローンを払えなくなるリスクが高まる。これから住宅購入を検討している人は、今払えるかどうかではなく、将来を見据えた返済計画を立て、無理のないローンを組むことが大切だ。

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執筆・

証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP® HP :
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