ネット銀行が存在感を増している。2000年から誕生した店舗を持たないインターネット専業銀行はネットショッピングやネット証券、SNSの普及に合わせて成長を続け、最近ではスマートフォンでも気軽に使える。インターネットバンキングとの違いやメリット・デメリットを整理しよう。

ネット銀行とはインターネットで取引をするインターネット専業銀行

ネット銀行の特徴とよく誤解されるインターネットバンキングとの違いについておさえておこう。

ネット銀行の定義とは

ネット銀行とは自前の店舗やATMを持たずインターネットで取引をするインターネット専業銀行のことである。振り込みや振り替えといった取引はパソコンやスマートフォンでおこない、現金が必要な取引はコンビニなど提携ATMを使う。

ネット銀行では通帳を原則発行せず、取引明細書(ステートメント)はWeb上で確認できる。ネット銀行の大きな強みは設備費や人件費を抑えられるため、金利や手数料で利用者にメリットを還元できることだ。

ネット銀行とインターネットバンキングは似ているようで全く違う

ネット銀行とインターネットバンキングは混同されやすいが全く別物である。ネット銀行は無店舗型のネット専業銀行だが、インターネットバンキングは従来の大手銀行や地方銀行が提供するインターネット取引サービスの総称のことだ。

たとえば「三菱UFJダイレクト」や「ゆうちょ銀行ダイレクト」はインターネットバンキングのことを指す。インターネットで取引をするからといって、ネット銀行のように預金金利が高めの水準になったり手数料が安くなったりするわけではない。インターネットバンキングの金利や手数料は提供している銀行の基準に準じている。

ネット銀行はサブバンクとして利用されることが多い

ネット銀行をメインバンクとする人の割合や口座を保有する人の割合について調べた。

メインバンクはネット銀行をおさえ依然として都市銀行

ネット銀行は着々と普及が進んでいるイメージがあるが、メインバンクとして使われることはまだ珍しいほうだ。NTTデータ経営研究所の調べによると、最もよく利用する銀行シェアでは、第二地銀が36.1%、ゆうちょ銀行が、30.1%、三菱UFJ・三井住友・みずほ・りそなといったメガバンクが17.5%を占める。ネット銀行のメインバンクシェアは7.5%にとどまる(2019年10月「金融サービスの利用動向調査」より)。

都市部ではメガバンク、地方では地方銀行や第二地銀をメインバンクとする人が多い。ネット銀行の中でシェアが高いのは楽天銀行、ジャパンネット銀行、住信SBI銀行、セブン銀行、イオン銀行だ(2019年12月 帝国データバンク「全国メインバンク動向調査」より)。 

約42%の人がネット銀行の口座を持っている

ネット銀行の口座を持っている人の割合はどのくらいだろうか。ネット銀行の利用者は41.9%に及ぶ(※株式会社NTTデータ経営研究所が2019年10月に発表した「金融サービスの利用動向調査」より)。5人に2人はネット口座保有者だ。

1人が複数の口座を持つことが一般的になりつつある現在、ネット銀行はサブバンクとして利用されることが多いようだ。

ネット銀行の口座保有率はゆうちょ銀行、地方銀行に次いで3番めに位置している(同上資料)。メインバンクとしてはあまり利用されていないが、ネット銀行の口座を保有することは当たり前の時代になってきたようだ。

ネット銀行は「投資」「ゲーム」「SNS」に興味がある人が利用する傾向

ネット銀行を利用する人の趣味には一定の共通点がある。「投資」「ゲーム」「SNS」など、インターネット上の決済を必要とするものが多い(※株式会社NTTデータ経営研究所が2019年10月に発表した「金融サービスの利用動向調査」より)。

投資については、同じ系列のネット証券とネット銀行を連携させることにより、入出金がしやすくポイントが貯まりやすい特典が得られることが大きいと考えられる。ゲームやSNSで有料サービスを利用するときの支払いでも、リアルタイム決済ができるネット銀行との親和性は高そうだ。

ネット銀行の3つのメリット

ネット銀行は預金金利の高さやATM振込手数料などの安さで注目されている。ネット銀行のメリットは以下の4つだ。

⑴普通預金の金利が高め

大手銀行の普通預金の金利は0.001%が平均的だが、ネット銀行はおしなべてそれよりも高い。たとえば楽天銀行は0.02%と大手銀行の20倍だ。さらに楽天カードの引き落とし口座に指定することで0.04%に、楽天証券との提携サービス「マネーブリッジ」を利用することで0.10%にまで引き上げられる。

イオン銀行の場合は利用状況により「イオンMyステージ」という利用者のランキング付けをしており、最も高いステージだと普通預金の金利0.1%が適用される。

ただしネット銀行でも金利が0.001%と大手銀行と変わらない場合もある。

⑵振込手数料やATM利用手数料が安め

銀行を利用するときにかかる主な手数料は振込手数料とATM利用手数料だ。振込手数料は同行か他行宛てか、現金かキャッシュカードかによって金額が異なる。

たとえば三井住友銀行の場合、振込手数料は110円から660円かかる。ATM利用手数料が無料になるのは同行店舗ATMを営業時間中に利用した場合のみだ。それ以外の時間帯やコンビニATMを利用した場合の手数料は1回につき110円から220円かかる。

一方のネット銀行は振込手数料とATM利用手数料は利用状況により一定回数内で無料となる場合が多い。

楽天銀行の場合、残高300万円以上または取引30件以上ならATMは月7回まで、振込手数料は月3回まで無料となる。東京スター銀行のように無条件で月8回までATM利用無料、月3回まで振込手数料無料というところもある。

⑶24時間のリアルタイム取引が可能

従来型の銀行は平日しか営業していないことや15時に閉店することから、忙しいビジネスパーソンはなかなか気軽に利用できない。インターネットバンキングを使えば良さそうだが、24時間操作はできても口座に反映されるのは翌営業日になることが多い。

ネット銀行ならインターネット上で24時間取引できるうえ、リアルタイム送金は即時反映される。口座間のやり取りだけでなく、ネット決済、電子マネーへのチャージもスピーディだ。

ネット銀行の3つのデメリット

ネット銀行は先に述べたようにコストと利便性に優れているが、デメリットもある。

⑴通帳がない

ネット銀行では原則紙の通帳を発行しておらず、取引明細はデジタルデータで管理される。いつでもパソコンやスマートフォンで確認でき、必要であればダウンロードして印刷も可能であるため、わざわざ記帳のためにATMまで出向く必要がない。しかしデジタル明細は取得期間が1~2年程度に限られており、期限を過ぎると閲覧できない。期限を超えた明細の発行には手数料がかかることもある。

従来型の銀行もデジタル通帳化の方針に傾きつつある。三菱UFJ銀行は「Eco通帳」、三井住友銀行は「Web通帳」と呼ばれ、閲覧可能期間はそれぞれ10年・30年と長い。

⑵口座振替対象外の場合もある

一般に浸透してきたネット銀行ではあるが、公共料金や税金、学校や習い事関係の引き落とし口座に指定できないケースはまだまだ多いようだ。たとえばe-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用したダイレクト納付にインターネット専用銀行は利用できない。地方公共団体や公共料金には、ジャパンネット銀行と楽天銀行であれば使えることもあるが、他のネット銀行の名前は見当たらない。口座引き落としが使えないとコンビニやクレジットカード支払いで対応するしかなくなる。

⑶セキュリティ上のリスクがある

ネット銀行はホームページにログインするだけでお金のやり取りができるため、ID・パスワードの管理には厳重な注意が必要である。パソコンのウイルス感染やフィッシング詐欺により不正引き出しも社会問題となっている。

ネット銀行を使うなら、オンラインで重要なデータをやり取りすることに慣れていたほうがいいだろう。

ネット銀行と従来型の銀行の併用が現実的

ネット銀行は手数料が安く金利は高めであり、インターネット上でリアルタイムに取引ができる。しかしメイン銀行として1つだけ選ぶには足りない機能もありそうだ。

ライフスタイルにもよるが、日本に居住して一般的な家庭を営むのであれば、従来型の銀行とネット銀行の併用が現実的な選択肢だろう。ID・パスワードの管理をはじめとするセキュリティ上のリスクへの対策、デジタル通帳の定期的な保存といったネット銀行特有の作業も忘れないようにしたい。

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文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)
 

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