インディテックスの後継者にならないもう一人の娘

今年4月にZARAを含むグループの親会社インディテックス社の創業者であるアマンシオ・オルテガ氏(85)にはもう一人娘がいることはスペイン以外の国では殆ど知られていない。彼女の名前はサンドラ・オルテガ氏(52)(以後、サンドラ)で、スペインの富豪者番付ではアマンシオ・オルテガ氏に次いで2位に位置している女性だ。

彼女の資産は63億ユーロ(7560億円)。この資産の大半は亡くなった彼女の母親ロサリア・メラ氏から受け継いだものだ。サンドラ氏は父親のオルテガ氏と同様にメディアに姿を現すことなく、富豪でありながら富裕者の世界には一切拘わりをもとうとしない控えめな女性だ。

余談ながら、父親がメディアで姿を見せるようになったのはインディテックスが上場してからであった。それまでは急成長しているZARAの創業者はアマンシオ・オルテガ氏だと言われてはいたが、メディアに彼が登場しないものだから、彼は架空の人物ではないかと噂されたほどであった。

サンドラ氏も父親のDNAを受け継いでいるようで、マスコミとの接触を極力控えている。メディアに頻繁に姿を見せる異母妹でインディテックスの後継者マルタ・オルテガ氏とはまったく正反対である。

サンドラ氏の母親ロサリア・メラ氏(以後、ロサリア)はアマンシオ・オルテガ氏の最初の妻で、夫のオルテガ氏と一緒に20年余り町工房の段階から彼女が縫製を担当して苦楽を共にし、ZARAが世界企業に成長するのを内助の功として夫を支えて来た夫人であった。

オルテガ氏に愛人がいた

ところが、夫のオルテガ氏の前に一人の女性が現れた。ZARAの縫製部門にいた女性フロラ・ペレス氏(以後、フロラ)であった。ロサリア氏は夫に愛人がいたというのは殆ど知らなかったようだ。しかし、夫と愛人との間で1984年に女子が誕生したということに及んでロサリア氏は夫婦の破局を迎えたと判断。オルテガ氏は彼女と離婚することを決め、愛人フロラ氏と一緒になることを決めた。

双方の離婚は可なり難局があったようだ。何しろ、ロサリア氏にとってインディテックスを世界企業にまで成長させた背景にはその礎を築き、その後もオルテガ氏を支えて来た彼女の貢献が大きいと判断していたからだ。最終的にインディテックスの5%の株の譲渡が柱になって双方で離婚が成立した。

それはサンドラ氏が16歳の時だった。彼女はその時に父親ではなく母親と生活を共にすることを決めた。そして、母親が2013年に69歳で突如亡くなると、サンドラ氏は母親の財産を脳症麻痺の兄と一緒に受け継いだのである。