■ 「リアル→ネット」にならざるを得なかったコロナ

 世界的なパンデミックとなった新型コロナウイルスは、企業のSNSに対する考え方にも大きな影響を与えました。

 まず大きかったのが、接触を伴う「リアルイベント」の大半が中止となったこと。筆者もかつてマーケティング担当だったため実感していますが、コロナ以前は、リアルベースで販促活動は組まれてきました。そしてSNSは、「その他大勢」に過ぎませんでした。しかし、「リアル」が遮断されたため、多くの企業はSNSを始めとした「ネット展開」に移行せざるを得なくなりました。

 コロナ禍は既に2年もの時間、人々をリアルから遠ざけ、最早「ネットの世界」が主流になってきています。購買においては、もとから主流の以降が言われてたとはいえECサイトの活用がより加速しました。そうした中で、特に2020年に多く見られたのが、企業公式Twitterアカウントによる度重なる「炎上騒動」でした。

 これは、各々のアカウント担当の不用意な発信も原因ですが、それ以上に、コロナ禍により、これまであまり関わりのなかった層が、ネット関連への「接触時間」が飛躍的に増加したことも遠因といえます。多くの企業が、次々に販促PRの“戦場”を変更したことで、やや「マニアックより」だったTwitter空間も大きく変容したのです。それに既存が気づかなかったことによる「摩擦」だったともいえますね。

 こうした変化もあり企業側から、「以前より運用がやりにくくなった」という声も散見されてきています。しかしながら私は、必ずしもそうは思いません。確かに人の目は、以前より厳しくなりました。一方で、以前のSNS空間は、あまりにも「ザル」過ぎた一面もあります。それについて、目をそらしてはいけないでしょう。一面的なことで、物事は決まるわけではないのです。

 なお、私がTwitterに出会ったのは2018年。実はまださほど「年季」がなかったりします。ただその頃は、「華麗なる公式」ともいわれた「Twitter中の人時代」も、今振り返れば末期に差し掛かっており、現在は「中の人」という言葉自体が、時代遅れにも感じるようになってきています。一部では、「傍の人」なんて表現がされることもあり、それが的確かどうかはさておき、「個人から組織」・「ワンオペからチーム」に運用体制の変化が起きている分かりやすい実例でしょう。

 確かに昨今のSNSは、先鋭的すぎるきらいはあります。しかしながら「チェック機能」が確立しつつあるともいえ、どちらかというと「あるべき姿」に近づいてきています。そう考えると、「昔が良かった」的意見は少々無責任にも感じます。無法地帯で得するのはごく一部です。

 と、Twitterばかりにフォーカスしてしまいましたが、これは他のSNSプラットフォームでも同様にいえることです。Facebookに関しては、さほど用途が変わってない気もしますが、一方で運営母体が同じInstagramに関しては、リール動画やショップ機能など、より「購買」を意識したアップデートが行われたこともあってか、バイイングパワーの観点で注目されてきています。その点では、昨今もっとも活性化しているSNSかもしれません。

 また、YouTubeやTikTokについては、貴重な「動」の発生装置でもあり、後者については、ティーンエイジャーが積極活用しています。また他にも、noteやLinkedinなど、特化性を強めたSNSも活性化しつつあり、クラブハウスやTwitterのスペース機能といった、「声」にもフォーカスされたSNSも登場。有事の方が技術進歩は急激に進むとはよく言われますが、コロナ禍のSNSも同様のことがいえますね。

 2022年も引き続き「コロナ」を意識したものとなるでしょう。今後数年もそうならざるを得ない状況下です。

 しかし、SNSは寧ろ重要性が増していく時代になると思います。そしてそれは、「アフターコロナ」という時代に、適応しないとあっという間に淘汰されるもの。私だって、今では様々なところからお声かけはいただきますが、それは実績が評価されている以上にアップデートを怠っていないから。「過去の遺産」なんて、あっという間に廃れるものなのです。

 情報取得が驚異的に速まった昨今。何かしらのデジタルツールを使いこなせる人材は引っ張りだこである反面、「代わりはいくらでもいる」現実にも向き合わなければなりません。