目次
農地のまま売る(3条許可)の場合の条件は?
農地を転用する(5条許可)の場合の許可基準は?

農地のまま売る(3条許可)の場合の条件は?

農地を農地のまま売る場合、地目変更は必要ないのでハードルは低いと思われるかもしれませんが、実際はそうではありません。

農地として維持されることが条件になるので、買い手は基本的に農家に限られます。

大規模経営を手掛ける農家の知り合いがいれば買ってもらえるかもしれませんが、小規模農家はどこも後継者不足などで経営は縮小していく方向にあるので、買ってくれる相手が見つかりにくいのが難点です。

購入相手がいれば、後は行政の許可を取れれば売ることができます。

農地のまま売る際の許可基準をまとめると以下のようになります。

①全部耕作要件

購入者は、今回の取引で購入する農地だけでなく、現状で所有する農地や借りている農地についてもすべて有効に利用できなければいけません。

例えば現状で耕作を放棄している農地が他にある場合はこの条件を満たすことはできません。

②農作業常時従事要件

購入者またはその世帯員が農業に従事できることという条件で、概ね年間150日以上の稼働が求められます。

③下限面積要件

購入する農地を含めて農業を行う農地が下限面積以上になることが必要です。

下限面積は自治体によって異なります。

④地域との調和要件

売買対象となる農地の周辺地域における農地利用に悪影響がないことが求められます。

この取引によって周辺農地の効率的な利用が妨げられるなどの事情を認める場合は許可が出ません。

近年は経営の効率化を目指して集団経営を促進する動きがありますが、今回の取引でこれが分断されるような場合は許可がでません。

他にも、他の農地の水利確保に影響が出る場合や、無農薬栽培を行う農地に影響が出そうな時なども許可を取ることは難しくなるでしょう。

農地を転用する(5条許可)の場合の許可基準は?

農地を他の目的に転用して売る場合、購入層は農家に限られないことになるので、宅地を欲しがっている人などに向けても訴求が可能になります。

買い手が多く現れてくれることが期待できますが、農地を潰すわけですから許可を得るためのハードルは高くなります。

5条許可の場合、大きく立地基準と一般基準の二つの基準が用意されています。

順番としては、まずは立地基準をクリアしたうえで、さらに一般基準もクリアしなければいけません。

立地基準とは農地が存するエリア的な規制で、基本的に市街地に近い農地ほど転用はしやすくなり、逆に市街地から離れて山間部に近くなるほど転用が難しくなります。

人口が多いエリアに近いほど土地としての利便性を考慮され、山間部に近い場合は農地としての保護を優先する姿勢が見て取れます。

立地基準は以下のように農地の種類ごとに規制の強度が変わるようになっています。

①農用地区域内農地(農業振興地域内の農用地)

「青地」と呼ばれることもありますが、この地域の農地は最も規制が厳しく、原則として許可を得ることはできません。

②甲種農地

市街化調整区域(開発が制限される区域で郊外地に多い)に存する農地で、特に営農に適した農地です。

このタイプも原則として転用は不許可となりますが、農業用の施設を建設するための土地に転用するなどの場合は例外的に許可が出ることもあります。

③第1種農地

すでに集団的に存在している農地や、土地改良事業などの公共投資の対象となった農地です。

このタイプも原則不許可ですが、市街地に設置することが難しい施設を建てるなどで一定の合理性を認める場合には許可をもらえることもあります。

④第2種農地

市街化が見込まれる区域(人口が増えそうな地域)に存している農地や、市街地に近接した小規模の農地などが該当します。

このタイプの場合、農地の代替性が問題になります。

もし取引を考えている農地でなく、他の土地で売買の目的を達成できる場合は許可をとることができません。

他の土地ではなく、取引を考えている農地を潰して利用しなければならない理由を十分に説明できれば許可を取ることが可能です。

⑤第3種農地

市街地の区域内にある農地や、市街地化の傾向が著しい区域内にある農地です。

この場合は原則として許可が出ます。

上記の立地基準をクリアできれば、次に一般基準をクリアできるかです。

一般基準では以下のような点が考慮されます。

①確実に利用目的が達成されるか

例えば転用に必要な資金は十分に確保されているか、利害関係者の反対がないか、他の許認可が必要な事情があれば、当該許認可を取れる確実性はあるか、などが考慮されます。

②周辺の農業に影響がないか

土砂の流出や農業用の排水施設の機能に影響を与える可能性はないかなど、取引対象の周辺の営農に悪影響がないかどうかが考慮されます。

③一時的な転用の場合、事業終了後に農地に戻されることが確実かどうか

以上のような点を考慮し、一般基準もクリアできれば許可を得ることができます。