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農地の売買が制限されるのはなぜ?
売却する方法は二通りある

不動産のうち建物は経年劣化がありますが、土地は基本的に劣化という概念が無く、安定した資産価値を持つ財産として考えられています。

ただし同じ土地であっても宅地と農地では全く事情が異なり、農地は様々な制限がかけられ売買取引も自由に行うことは許されません。

自分の土地であるのに自由な取引が制限される農地の所有者は、売買取引にあたって苦労する可能性が高いです。

本章では農地売買に係る制限や売却するための方法、手続きの流れなどを全体的に確認していきますので、ぜひ参考になさってください。

農地の売買が制限されるのはなぜ?

宅地であれば、不要になった時に売却することは基本的に自由にできます。

農地で自由な取引ができないのは、国策として農地が保護されているからです。

国土が狭い日本は国民の食糧を確保することが難しいというハンデがあり、日本国単独で国民の食糧を安定的に供給することは難しいのが実情です。

他国との取引が問題なくできている間は輸入により食料の調達ができますが、これは他国頼みということですので、国際情勢など様々な事情で輸入ができない状況になれば国民の食糧はひっ迫します。

農林水産省によれば、令和元年度の食糧自給率(カロリーベース総合食料自給率)は約38%と、半分を大きく下回る結果となっています。

直近では新型コロナの影響で建設資材の納入に大幅な遅れが出ているなどのニュースも聞きますから、どんな事情で輸入がストップするか分かりません。

国民の食糧確保は国が責任を負うべき問題であり、国の施策として農地を確保する必要があるのです。

通常の土地であれば、買い手が購入した後は法令に違反しない限りにおいて基本的に自由に利活用が可能です。

農地で同じルールとしてしまうと、売買取引後に農地を潰して他の目的に使用することも制限されません。

そうすると農地の確保が難しくなることが考えられますから、簡単には農地売買ができないように規制をかけているのです。

売却する方法は二通りある

ただ、農地の売買が一切許されないわけではありません。

最低限の農地は残しつつも、それ以外の農地については売買できるように整備されています。

売買可能な農地についても完全に市場取引に任せるのではなく、行政による許可制が敷かれているので、許可を取ったうえでなければ取引ができないようにしています。

農地の売買について許可を出す主体は取引対象農地によって変わります。

基本的には市区町村に設置されている農業委員会ですが、規模が大きくなると都道府県知事や農林水産大臣の許可が必要になることもあります。

許可を取らずに当事者間で行った売買取引は法律上無効となるため、農地売買の取引は通常の土地取引とは手順も異なります。

取り引きの手順については後の項に任せるとして、ここでは農地を売却するための2つの方法について確認します。

一つは、農地を農地のまま売買する方法です。

この場合は農地を潰すわけではないので問題なさそうに思えますが、購入された後に農地として利用されることが確保されるかが問題です。

そのため定められた基準をクリアしなければ許可を受けることができないようになっています。

農地を農地のまま売る方法については、農地法3条にルールが定められていることから、「3条許可」などと呼ばれることもあります。

二つ目は農地以外の目的に転用して売却する方法です。

例えば農地を宅地に変更(転用)して売買することができますが、この場合農地を潰すことになるので、より高いハードルをクリアしなければならず、許可を受ける難度が高まります。

農地を他の目的に転用して売る方法については農地法5条にルールが定められていることから、「5条許可」などと呼ばれることもあります。

それでは上記2つの売買方法について、それぞれの条件を確認していきましょう。