「サンタクロースっていないよね?」

昨年のクリスマスイブの日、私はこんな質問を小学校低学年くらいの女の子に突然投げかけられました。その日は、運動不足解消のため毎週通っているバレエクラスの日。聞いてきたのは、同じ教室に通うキッズクラスの子ども達でした。

数人の子に囲まれクスクスされながら聞かれました。どうやら存在を疑う年頃になった様子です。その背後には、困った顔のお母さん方。

顔見知りだったので、彼女たちも気軽に声をかけてきたのでしょう。また、親以外の大人ならどうこたえるか……?試してみたかったのかもしれません。

しかし、聞いた相手が悪かった。なぜなら私は、「生きていく上では知って無くても困らない知識」、いわゆる「無駄知識」を得意とするライターだったからです。ウソはつかないけど、ギリウソじゃないことで「真実の答え」を回避できるかも?

そう考えた私は、すぐにスマホを操作し検索結果を差し出しつつ

「サンタクロースのいる場所ならわかるよ。ほら、見てご覧、いまココにいるって」

見せてあげたのは、サンタクロースが12月24日~25日にかけ世界のどこにいるかを知らせるWEBサービス。Googleが提供している「Google サンタを追いかけよう – Google Santa Tracker」の画面でした。サンタクロースの存在を信じる子ども達のために、世界の大人達が本気を出して提供している夢のあるサービスなのです。

画面を見た子ども達の顔が一気にパーっと明るくなり、食い入るようにみつめたあと

「日本にはいつくるの???」

このときサンタクロースはたしかオーストラリアあたり(当時の記憶が曖昧なので、もしかしたら違うかも)。その時点での日本・東京への到着時刻は22時すぎ頃だったと記憶しています。

「夜の10時すぎだって。11時時近くになるかもしれないけど、大丈夫?サンタクロースって子どもが寝てないと来ないんじゃないんだっけ?そいういうお話あったよね?」

キッズたち「キャーーーー!!ママママ!早くかえらないと。今日は9時に寝る!!」

こうしてうまく真実を回避することができたのです。子どもって純粋だなぁ。ちなみに彼女たちの去り際、お母さんたちに尋ねられた私は「Google サンタを追いかけよう」の存在も引き継いでおきました。はたしてお役に立てたかなぁ……。

■ 子どもの夢を壊さないため世界中の大人が本気を出して頑張ってる

「サンタクロースって本当はいないんでしょ?」という質問。子を持つ親あるあるな出来事である一方、いつ明かせばいいものか悩みの種になることでもあります。

この悩みは日本に限ったことではないようで、特にクリスマスの本場である海外では半世紀以上も前から本気で取り組んでいます。

■ 最初に本気を出したのは、まさかのNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)

サンタクロースの存在を信じる子どもたちのため、最初に本気で取り組んだのは、実は「軍」でした。

はじまりは1955年まで遡ります。北アメリカの防空を担う現・NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)、当時のCONAD(大陸防空コマンド)の司令官のもとに入った1本の間違い電話からでした。

しかもこの番号、国防総省から司令官へのホットラインだったのです。電話が鳴った瞬間、当時の司令官であるハリー・シャウプ大佐はかなりの緊張感を抱いたことでしょう。

ところが出てみると、向こう側から聞こえてきたのは幼い子どもの声でした。

「もしもし、サンタさん?」

シャウプ大佐は後に当時の心境を「なんてこった、と思った」と語っています。そりゃそうですよね、ホットラインにかかってきた間違い電話で、しかもサンタクロースあてなんですもの。

実はこの番号、機密情報にもかかわらず、クリスマス商戦を狙った百貨店の新聞広告に誤って「サンタクロースと話せる電話サービス」として掲載されてしまっていたのです。本来の正しい番号とは、数字1つが違っていたんだとか。おかげでこれ以降、続々と子ども達から電話がかかってきたといいます。

しかしここで凄いのが、シャウプ大佐のとっさの機転。子ども達に「私はサンタさんじゃないけれど、サンタさんが無事プレゼントを配れるよう、追跡する仕事をしているんだよ」といった内容を語りました。

さらに凄いのがこの話がここで終わらなかったこと。普通ならば誤掲載したお店にクレームを入れて終わり……というところですが、当時のCONADは「面白いハプニング」とらえたのです。

おかげで翌1956年には「サンタクロース追跡作戦」を正式に始動。アメリカとカナダの防空セクションが総力をあげた、サンタクロースの現在地お知らせサービスを始めることとなりました。

子どもからの質問「サンタっていないよね?」にどう答える?私がとった回避策
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

以降、半世紀以上にわたりこの伝統は引き継がれることとなり、現・NORADになってからも「NORAD Tracks Santa(ノーラッド・トラックス・サンタ)」として、毎年の恒例行事となっています。

子どもからの質問「サンタっていないよね?」にどう答える?私がとった回避策
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

ちなみにNORADはサンタクロースの安全な移動のため、特別な身分証明書を発行。現在は、サンタクロース追跡サイトの元祖「NORAD Tracks Santa」の公式サイトを通じて、24日~25日にサンタクロースの移動の様子を24時間リアルタイム配信しています。

■ 現在では各国の軍もノリノリで参加

日本ではなかなか実現するのは難しいのですが、各国の軍ではクリスマスを広報の機会としてとらえ、サンタクロースにまつわる活動を実施しています。

アメリカとともにNORADを構成しているカナダ空軍では、毎年東海岸と西海岸を担当する「サンタをエスコートする戦闘機パイロット」を任命し、一般に公表しています。子どもからすると、自分の親がサンタを護衛していると誇らしいでしょうね。

子どもからの質問「サンタっていないよね?」にどう答える?私がとった回避策
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

カナダ軍はこのほかにも、毎年小児病院にサンタクロースが訪問するイベントを実施。軍のヘリコプターに乗ってサンタが到着すると、入院患者は笑顔で歓迎するそうです。2020年と2021年は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、高齢者であるサンタもマスクをして訪問しています。

子どもからの質問「サンタっていないよね?」にどう答える?私がとった回避策
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)
子どもからの質問「サンタっていないよね?」にどう答える?私がとった回避策
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

サンタの動向を知らせているのはNORADだけではありません。イギリス軍やフランス軍も、Twitterを通じてサンタの情報を発信。

イギリス海軍のヘリコプター部隊は、クリスマスイブの本番に向け、トナカイたちを休ませるためにサンタさんがヘリコプターで練習飛行をしたというツイートをしています。普段の任務とは違う、ちょっと柔らかめのツイートが微笑ましいですね。

子どもからの質問「サンタっていないよね?」にどう答える?私がとった回避策
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

■ 大人の本気に子どもは驚くかも?

早い子だと小学校低学年ころからサンタの存在を疑い始めると聞きます。でもパパやママにとってはもうちょっと、あと少しだけ信じて欲しいもの。ウソをつくのはよくありませんが、あるものを利用して「ほんのちょっと真実を伝えるのを先延ばし」することは決して悪いことではないと考えます。人によっては「それでもダメ」って場合はあるでしょうが。

子どもたちが少し大きくなって「サンタクロースはパパでしょ?」「ママでしょ?」というピンチに陥ったら、いったんの回避策にこれらのサービスを利用するのは手です。ただし、ちょっとだけ注意点も。

GoogleやNORADの追跡サービスは当日にしか効果を発揮しません。このため、もし事前に下ごしらえとして何か見せたいときには、上記に記したように各軍の状況をみせてあげると、これも真実への先延ばしの役にたつかもしれません。

なお、筆者はGoogleやNORADのどちらも使ったことがありますが、追跡サービスはNORAD Tracks Santaが元祖だけど、見やすさとスマホからのアクセスのしやすさはGoogleです。とはいえ好みの方で使ってみてください。

<参考>
NORAD プレスリリース「NORAD is Ready to Track Santa’s Flight for the 66th Year」
カナダ空軍 2021年12月7日プレスリリース/2020年12月17日プレスリリース
RNAS Yeovilton(@RNASYeovilton)

画像:NORAD/RCAF/DoD Crown Copyright

(文:宮崎美和子/編集:咲村珠樹)

提供元・おたくま経済新聞

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