フリーランスにとって、契約書といえば生命線ともいうべき最重要書類の一つです。といっても、漢字は多いし、ムダに長い。正直、読むのがしんどすぎる……という方も多いのではないでしょうか。

で、筆者は思ったのです。日々大量の契約書と格闘している弁護士さんなら、「ラクに契約書を読むコツ」を知っているのではないかと。

そこで、今回は契約書の読み方を習うべく、フリーランス・クリエイター法務の分野で活躍されている河野冬樹弁護士にお話を伺ってきました。

ぶっちゃけ契約書って、読むのしんどいよね

ぽな:
先生、あの……のっけからアレなんですけれども。契約書は大事だ。それはみんなわかっているんです。しかし、契約書って漢字だらけだし、専門用語も多いし、しかも長い! そう、読むのがとっても面倒なのです。そのせいでしょうか、「最後まで読むのが面倒になって、結局流し読みしちゃう」「そもそも読まないでサインしている」などという声が周囲のフリーランスさんたちから寄せられております。 河野:
いやあ、そうなんですよね、多くの人がちゃんと読んでないですよね。 以前、利用規約の中に「あなたの子どもを連れていくことができる」みたいな条項を入れる、という実験を見たことがあるんですけど。大半の人はあっさりサインしてくれたという。 ぽな:
えええ!? そんなに危ない条項が入っているのに見落としてしまうなんて……! 河野:
そうなんです。みんな読んでないから気づきもしない(笑)。

そもそも契約書って何が書いてあるの?

ぽな:
ただ、そうは言っても、フリーランスにとって契約書が大事なものであることは確かなわけでして。そもそも契約書って何が書いてあるんでしょうか?

河野:
そうですね。まずは契約書というより、皆さんが結んでいる契約が何かというところから話を始めさせていただければと思います。

実際に仕事をする際、まずは「お金を払うので、この仕事をしてくださいね」という取り決めがあって、それから皆さん仕事を始められるわけじゃないですか。その取り決めた内容を書いたものが契約書になります。

なので「取り決めの内容がきちんと書いてあるかどうか」というのが、まず契約書を読むうえで気にしなければならないポイントです。具体的には、自分はいつまでに何をすればいいのか、一方相手はいつまでにいくら払ってくれるのか、といったところですね。それを確認しないまま仕事を進めちゃうのは、ちょっと怖くありませんか?

ぽな:
うっ、それは確かに……!

河野:
もちろん、取り決めの中に曖昧な部分ができてしまうこと自体は悪いことではなくて、そうならざるを得ない事情というのも確かにあります。作業時間や成果物の内容のように、事前にはわからない要素もありますから。ただ、それでも最低限決めなければいけないラインはあるよね、ということです。

ぽな:
とりあえず「引き受けた案件について、この仕事をいついつまでにしますよ」という仕事上の取り決めは最低限決めて、書面の形にするべきと。

河野:
そうですね。まずはそこを決めなきゃならない。さらに細かく考えていくと、他にも決めなくてはいけないことが出てきます。たとえば、「成果物の権利はどっちに帰属するのか」とか、「納品が遅れた場合の損害賠償金はどのぐらいになるのか」といったことですね。

で、ここで考えなきゃならないのは、実は決めていないことの方なんですよ。

ぽな:
決めていないことの方が、問題になるんですか!?

河野:
「決めていないことがどうなるのか」という知識がないがために、「契約がわからなくなる」という側面がありますね。

たとえばお金の話にしたって、あらかじめ「いくら支払う」と決まっていないと、仕事の評価がしようがないですよね。金額を決めてないってことはまずないでしょうが、そういった大事なことが契約書に書いてないと、のちのちトラブルになります。なので、そういった決めごとを確認するための書類が契約書なんです。