原因物質は「ピペリン」
その原因物質はピペリンと呼ばれる成分です。
これはアルカロイド(窒素を含む有機化合物)で黒コショウの主成分であり、スパイシーと表現される刺激の秘密でもあります。
コショウが含有するピペリンの濃度は、種類によって2%から7.4%の間で変動します。当然ですが、ピペリン含有量の多いコショウほど激しいくしゃみを誘発します。
ピペリンは鼻の特定の受容体に関与して神経の末端を刺激します。
この受容体への刺激が、生物学的反射反応を引き起こして侵入者を外へ追い出そうとするのです。
つまりくしゃみは体に入った異物を追い出すための防御反応で、鼻の受容体はピペリンを不快な侵入者とみなしています。
また、ほこりが敏感に人の鼻を刺激するのと同じように、コショウが人の鼻を刺激するのは細かく砕かれた粉末の場合です。
ピペリンが他の実の部分と結合している状態なら、鼻の受容体と結びつくことができないのでくしゃみが起きません。粉末になった場合は、多数の受容体を同時に刺激するため、激しいくしゃみを誘発するのです。
ちなみに同じ香辛料の仲間で赤唐辛子の主成分、カプサイシンも同じようにくしゃみを引き起こします。しかし、カプサイシンはコショウとは異なる受容体のセットを刺激し、顔の痛みを脳に伝える三叉神経に直接接続されます。
よって、これはくしゃみだけでなく痛みの感覚も引き起こします。このため唐辛子を多量に摂取するのは辛いのです。