(本記事は、ひろゆき氏の著書『自分は自分、バカはバカ。他人に振り回されない一人勝ちメンタル術』=SB クリエイティブ出版、2019年4月15日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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職場のバカに振り回されない護身術

ムカつく上司、同僚への正面突破は効果ゼロ

「はあ、仕事に行きたくない。転職しようかな……」

仕事をしていて、こういうことをまったく考えたことがないという人は、おそらくいないでしょう。正直、自分の会社を持っている経営者でも、会社に行きたくなくなることは、きっとあると思います。

「今いる会社」にいたくない人はなぜ、こんなに多いのでしょうか。

転職サイトのアンケート結果を見てみると、退職理由の上位に来るのはかなりの確率で「職場の人間関係」です。

上司の指示の出し方にストレスがたまる、トラブルが起こったら全部自分に責任を押しつけられる、同僚はイヤな噂話ばかりしている、プライベートに口を出してくる、などなど。

僕の周りでも、「会社を辞めたい」という人がいますが、話を聞いてみると理由はやっぱり人間関係です。

給料が少ない、残業が多いといったことも会社を辞めたくなる大きな理由ではありますが、「人間関係さえもうちょっとマシなら我慢できる」という人は多いですよね。
 
パワハラまがいの命令で部下を疲弊させるバカな上司。何を考えているのかわからない同僚、役職者でもないのにムダにマウンティングしてくる先輩……。仕事では、こういう他人をムダに攻撃する迷惑な人々と関わりながら仕事をせざるをえないケースが多々あります。

とはいえ、世の中のすべての人とうまくやっていけるわけではありません。人間、どうしても「性格」とか「相性」ってありますからね。

もし、若手社員があなたひとりしかいなくて忙しいという状況であれば、会社や部署としても辞められては困りますから、相性が少々合わなくても、そんなに問題にはなりません。

厄介なのは、体育会系的な風潮が強くて、おまけに同じ部署に若手が何人もいるような場合です。上の立場の人間が、ひとりスケープゴート(集団の中の代表者としていじめられる人)を仕立てて、そいつを説教したり理不尽ないじめを行ったりすることで、組織を統率しようとすることがあります。

日本大学アメフト部・フェニックスとか、体育会系のパワハラがしばしば話題になります。でも、ガス抜きのために少数を犠牲にして大多数を安心させる、というのは、程度の差こそあれ、日本の組織ではよく見かける光景です。

かつての身分制度もそうですけど、集団の中で、ひとりスケープゴートを作るというやり方は、昔から人心掌握のためのテクニックとして利用されてきました。自分のいる会社、部署にこういう文化があるのかどうか、早めに見極めましょう。

スケープゴートにされないために、あえて「前」に出ろ

スケープゴートに仕立て上げられてしまった人は、かなり面倒くさい思いをすることになります。どうでもいいようなミスを指摘され、あれこれ言われる。ことあるごとに人格否定される。同じ部署のほかの人と比較され、劣等感を植えつけられる……。

こうした閉鎖的な組織の文化は、若手の社員の力でどうにかできるものではありません。異動願を出す、転職するなどしてさっさと逃げるのが得策ですが、そうはいかないことも多いでしょう。

それなら、まずは「自分」を守ることが大切です。

スケープゴートにされそうになっている時、対策として一番いいのは「歯向かう」ことです。学校でも会社でも、被害者が反撃しないとその人はずっといじめの対象ですが、反撃すると加害者は別の人間をいじめの対象にするようになるものです。

とはいえ、立場が上の人に説得力のあるロジックで言い返すなんてことはかなり難しい。下手に言い返したりすると、相手の怒りに油を注いで、さらに状況を悪くしかねませんしね。

そこでおすすめしたい安全な歯向かい方は、「前に出る」こと。気持ちの持ちようだけではなくて、物理的に前に出るんです。

とある僕の知り合いは、以前テレビ番組の制作会社に勤めていました。そこはかなり頻繁に先輩が後輩を殴ったり蹴ったりするなんていうひどい職場でした。何回か話を聞くうち、不思議なことに気がついたんですよ。

ほかの若手は何発も殴られているのに、僕の知り合いだけはどんな時でも1発しか殴られないらしいんですよ(それでも十分にひどいですけど)。そして、殴られる時、その知り合いは必ず物理的に「一歩前」に出ていたそうです。

人間って普通、相手に攻撃されると後ろに下がってしまいます。後ろに下がると、攻撃側はさらに殴る蹴るを加えてくる。だけど、攻撃された人が一歩前に出ると、攻撃側は思わずひるんでしまうというわけです。

人間には、自分の周囲数十センチメートルのパーソナルスペースを侵されると、つい後ろに退いてしまう性質があります。こういう時って、身体が下がると同時に、精神的にも後ろに退いてしまうんですよ。

だから、上司や先輩に怒られたり、攻撃されたりしたら、言い返そうとするのではなく、謝りながら相手との距離を詰めていくのが最強です。単純ですけど、かなり即効性があります。

怒っている側が、「何だかこいつはヘンだ」「面倒くさいヤツだ」と無意識に感じるようになったら、あとはこっちのもの。面倒くさい相手にかまうのをやめて、脅えて萎縮する別の相手を責めるようになるでしょう。

面倒くさいヤツからの攻撃がとまる必殺技

人間にかぎらず生物は、予想外の反応をするものに出会うと生理的に恐怖感を覚える習性があります。だから、普通の人があまりしない行動を取ると、目をつけられにくくなるものなのですよ。

ほかには、目をそらさないのも効果的です。どんなに詰め寄られても、相手をじっと見つめ続ける。

動物同士の縄張り争いを見ているとわかりますが、先に目をそらしたほうが格下と見なされて、勝負が決まります。にらみつけなくても、じっと目を見るだけで、「面倒くさいヤツ」と思ってもらえますよ。

バカな人に出会った時は、相手を人間ではなく、ただの動物として見なしましょう。

「この動物に襲われないためにはどうすればいいか」と考えてみる。そうやって考え方を切り替えてみると、冷静に対処ができます。

ここまで紹介してきた方法は、あくまで「自分」さえ守れればいいという話ですから、職場の雰囲気が改善されるわけではありません。でも、自分のストレスレベルは最悪の状態に比べたらずいぶんマシになるでしょう。

まずは、自分の身を守ることを考える。そうしてストレスレベルを下げて、心に余裕を作る。心に余裕ができたら、自然と次の対応も考えられるようになりますよ。

【POINT】

  • 厄介な上司、同僚などに攻撃的な対応をされた時には、あえて物理的に「前に出る」と効果的に撃退できる。
  • 相手をじっと見つめるのも有効。周囲の人があまりしない行動を取ると、目をつけられにくくなる。
  • 「この動物に襲われないためにはどうすればいいか?」と考えると、バカな人にも冷静に対処できる。

相手に悟られず、バカをコントロールするコツ

「発注者」と「メリット」を明確化する

上司に少しくらい嫌われたとしても、この国の会社は社員を簡単にはクビにできません。どうしても上司と反りが合わなくて強くストレスを感じるのであれば、評価が上がらないことを受け入れて、上司に無理にあわせてつき合い続ける必要はない、と僕は思います。

ただ、上司との相性がそれほど悪くない、少なくとも強いストレスを感じないのであれば、気に入られたほうがトクなのは間違いありません。基本的に、上司は自分の言うことを何でも聞いて、きちんとこなす部下を高く評価するので、社内での出世もしやすくなります。

ここで重要なのは、上司の言う通りにすることで、自分がどんなメリットを得られるのかをちゃんと把握しておくということ。ただやみくもに言うことを聞く、ということではないのですよ。

上司に要求されるがまま、サービス残業をしたり休日出勤を繰り返したりしたとして、それが給料や待遇の向上につながっているのかどうか。もしも、給料も上がらないし、やりたい仕事も任せてもらえないというのであれば、あなたは会社からすれば使い放題の「おいしい社員」なので、会社側のメリットしかありません。会社によってはあなたの人のよさをどんどん利用してきますから、そういう場合はうまく断るべきです。

また、先輩や同僚からふられた雑用を「何でもやります!」と張り切ってこなせばいいというものでもありません。

何か仕事を頼まれた時は、

  • 誰が発注者なのか
  • その仕事をこなしたらどういう評価を得られるのか

この2点を冷静に見極めるようにしてください。

たいていの場合、先輩や同僚は評価者ではありませんから、そういう人から言いつけられた雑用はきっぱり断るのが吉です。その先輩があとで出世して、自分の上司になったりすると、ちょっと面倒ではありますけどね。

もう1つ、心がけておくべきは、上司や先輩を賢く使うということ。

たとえば、何かの仕事を初めて手がけることになったとしましょう。そんな時に上司や先輩があれこれ口を挟んできたら、面倒くさいと感じるでしょうが、まずは彼らの言うことをおとなしく聞いたほうがトクなことが多いと僕は思うわけです。

「情報量が多い人」=「使える人」と思え

仕事をうまくこなすためには、「情報量」が不可欠です。いくら頭がいい人であっても、不十分な情報を元に正しい判断をくだすことはできません。

あまりにも「自分の頭で考える」ことにこだわりすぎると、逆に効率が悪くなってしまいます。

何かわからないことがあった時、ググったらあっという間に解決できることはよくありますよね。周囲の人たちも、検索には使えます。

上司や先輩などその業界に長くいる人は、かなり高い確率であなたよりもたくさんの情報を持っています。

「この人は何だかヘンなことを言っている」「そんなわけはない」と思っても、自分の手元にある情報が少ない段階では、それが合っているかどうかを正確に判断することはできません。だから、まずは言われた通りに、上司や先輩の言う通りにしたがってみるのをおすすめします。

新人のうちは言われた通りにして失敗しても、とがめられることはありませんし、僕の経験上、そのほうが結果的に効率的だったことが多かったですね。それにとりあえずおとなしく言うことを聞いておいたほうが上司や先輩ウケがよく、会社での居心地は確実によくなるでしょう。

就職したばかりの20代からすれば、上の言う通りに仕事をしている人はバカみたいに見えてついつい反発したくなるかもしれませんが、ネットや本の情報を活用するのと同じように「上司や先輩をうまく使う」と考えるようにしましょう。

ある程度、仕事の全体像が見えるようになってから、自分なりに考えていろいろ工夫をしてみればいい、と僕は思うわけです。

経験を積むことで、「なるほど、あの人の言っていたことはこういうことだったのか」とわかることもあります。

もちろん、その逆に「やっぱり、アイツはバカだったんだな」とわかることもあるでしょう。それで、もし後者だったら、その人を心の中で見下せばいい。

どちらの場合にしても、とりあえず言う通りにやってみないことには、相手が正しかったのか間違っていたのかはわかりませんよね。

「間違っていたとわかる」ことも重要な情報であり、他人の知識を利用することであなたはその試行錯誤を短縮することができる。どっちにしてもあなたはトクをしたというわけなのですよ。

仕事が終わったあとの飲み会でも、うまく上司を使えばいいでしょう。これは会社の文化にもよりますけど、上司の奢りなら、飲みに行ってもいいんじゃないかなと僕は思います。

上司に誘われてちょっと面倒だなと思っても、「奢りですか?」とか明るく答えて、ひたすら高いモノを飲み食いしていればいいんです。

上司としては部下を誘っておきながら奢らないということもできませんしね。飲み代もけっこうバカになりませんから、さすがに説教するだけのために部下を誘うのは上司のほうとしても面倒くさくなってくるはずです。

もちろん、上司と飲んで意気投合できるのであれば、それがベストですけどね。

【POINT】

  • 職場で仕事をふられた時には、「発注者」と「その仕事をすることで得られるメリット」をはっきりさせる。
  • 上司や先輩は自分よりも情報を多く持っていることが多い。正しい意思決定には情報量が不可欠なので、まずは指示通りやるのが吉。
  • 周囲の人が持つ知識を活用すれば、自分自身の試行錯誤にかける時間を短縮することができる。
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ひろゆき
本名・西村博之。1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカのアーカンソー州に留学。1999年にインターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。東京プラス株式会社代表取締役、有限会社未来検索ブラジル取締役など、多くの企業に携わり、企画立案やサービス運営、プログラマーとしても活躍する。2005年に株式会社ニワンゴ取締役管理人に就任。2006年、「ニコニコ動画」を開始し、大反響を呼ぶ。2009年「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。
 

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